平壌・外国人商店でも肉類は品薄…深刻化する北朝鮮の食糧難
深刻化する一方の北朝鮮の食糧難。米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平壌の情報筋が伝えたこの情報に、その深刻さが如実に現れている。
「最近、食糧をはじめとする物資の不足事態がひどくなり、(平壌市内の)大同江(テドンガン)区域の外国人商店でも豚肉などの肉類を買うのが難しくなっているようだ」
外国人商店とは、この地域に集中する各国の大使館の職員が利用するスーパーで、国内の食糧事情とは関係なく、様々な物資が豊富に供給されていたところだ。そこですら品薄になりつつあるのなら、一般国民の利用する商店、市場の惨状は想像するに余りある。
そんな中で当局は、市内の女盟(朝鮮社会主義女性同盟)のメンバーに対して、豚肉を供出せよとの指示を下し、怒りを買っている。
これは今年6月の女盟第7回大会で、金正恩総書記が参加者に送った書簡「女性同盟は朝鮮式社会主義の前進・発展を促進する強力な部隊になろう」を実践する一環として、モノ不足に対する支援事業を女盟が先頭に立って行おうというものだ。
女盟に加入させられているのは、国が定めた職場に配属されていない街頭女性(専業主婦)。ただ、言葉は専業主婦でも家事労働だけを行っているわけではなく、市場で商売をして現金収入を得て、一家の生計を支えている。つまり、カネを持っているということだ。
しかし、コロナ鎖国による経済難で市場の景気は最悪。北朝鮮で最も豊かな平壌の市民も、配給の欠配などにより経済的に追い込まれている。そんな中での、豚肉供出の指示。さらに、支援すると言っても、具体的な支援先が示されておらず、女性たちの怒りに油を注いでいる。
「支援対象を明らかにしたとしても、家族に食べさせる肉もないというのに、国に捧げる豚肉がどこにあるのか」(情報筋)
平壌よりも遥かに貧しい咸鏡北道(ハムギョンブクト)に住む情報筋も、同様に豚肉供出指示が下されたと伝えた。先週から各洞事務所(末端の行政機関)の女盟組織に対し、市場で1キロ50元(約850円)という売られている豚肉を、何の補償も代償もなしに差し出せとの指示が下され、怒りを買っている。
コメ10キロ分に相当する額だが、そもそもモノ不足で豚肉の入手が困難な状況で、指示そのものに無理があると情報筋は指摘している。
女盟の会議では金正恩氏の書簡が読み上げられ、「女性たちは(女盟)組織を通じてのみ、党と血脈をつなぐことができ、政治的生命を光らせることができる、組織の決定と指示を重く受け止め誠実に執行せよ」との指示が下された。
会議に参加した女性たちは呆れ返った様子で、「家族に今日食べさせるものにも事欠くのに、社会的支援のために、あんなに高い豚肉を捧げよなんて、当局は正気で言っているのか」などを怒りを超えて、真剣に取り合わない様子だったとのことだ。
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