コロナ鎖国に苦しむ北朝鮮で「戦時物資」までが盗難
昨年1月からのコロナ鎖国で、極度の経済難に陥っている北朝鮮。国営工場では、備品、原材料などの盗難事件が相次いでいる。
今年4月には、平安南道(ピョンアンナムド)の安州(アンジュ)で、コロナ防疫用の消毒車のタイヤ、バッテリー、エンジンの主要部品が盗まれ、運転ができなくなってしまった。8月には、同じ平安南道の平城(ピョンソン)にある内閣の採取鉱業省傘下の大同江蓄電池工場の分工場で、自動車用再生バッテリー30個が盗まれた。
自動車部品の盗難より深刻なのは、厳重に管理すべきものの盗難だ。平安南道鉱業管理局の物資管理所からは、猛毒のシアン化ナトリウム80キロの入ったドラム缶が盗まれる事件が起きた。今度は、絶対に触れてはならないはずの戦時物資が盗まれる事件が起きた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安南道の成川(ソンチョン)の情報筋によると、先月中旬、郡の医薬品管理所の管理下にある、戦時物資を備蓄する4号倉庫が窃盗の被害に遭い、様々な薬品が盗まれる事件が起きた。
4号倉庫は、医薬品管理所の建物の中にあるため、この倉庫専任の警備員はおらず、医薬品管理所の所長と倉庫長が管理し、夜には倉庫に南京錠をかけ、鍵穴を封印、外には管理所全体を警備する警備員がいた。
ところが、建物に忍び込んだ犯人は、南京錠をペンチで切って、倉庫の中にあったペニシリン数百本、抗生剤などを盗み出した。郡の司法当局は捜査に乗り出したが、犯人の目星すらつけられていない。
別の情報筋によると、成川に隣接する殷山(ウンサン)郡の安全部(警察署)も捜査を行い、ペニシリンを販売している市場の商人や個人がいれば、通報を受けて捜査対象にしている。
各種医薬品は中国から輸入されていたが、昨年1月からのコロナ鎖国で輸入がストップ、国内市場で極めて品薄になっている状況で、安全員(警察官)は、商人らが抗生剤やペニシリンを販売しているだけでも怪しがり、出所を聞き出そうとするという。
これに対して商人は、数ヶ月前に他の地域から市場にやってきた商人から買ったと答えたが、安全部は家宅捜索を実施、商人の自宅にあったペニシリンの生産日を確認されたが、今回盗難の被害に遭ったものは見つからなかったとのことだ。
北朝鮮の各道、市、郡には戦時用食糧を備蓄する2号倉庫、医薬品を備蓄する4号倉庫がある。ほとんどは地下や洞窟にあり、武装警備が行われているため、中にあるものを盗み出すのはおろか、接近することすら困難な場所だ。
つまり、内部の事情をよく知る者の犯行である可能性が考えられるが、捜査の進捗状況を見ると犯人逮捕に至るかは不透明だ。しかし、誰かに責任を取らせて処分しなければコトが終了しないのが北朝鮮。倉庫の管理を任されていた所長は厳しい処分を避けられないだろう。
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