金正恩のミサイル連射に「国民の反感は爆発寸前」…米メディア報道
北朝鮮がミサイル実験、核実験、軍事パレードなど軍事力を見せつける行為を行い、人民が喜びの声を上げ大会を開き、国営メディアがそれを伝える。今まで何度も繰り返されてきた流れだ。
2016年2月の長距離弾道ミサイル「光明星4号」の発射実験の後、首都・平壌では数十万人の市民が動員され、関係者を歓迎するパレードが行われ、2017年9月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験では、全国各地で軍民慶祝大会が開かれた、といった具合だ。
これらを歓迎する声が全くのウソというわけではなく、実際に喜んでいる人も存在するが、日々の生活に追われている多くの人々は冷ややかな目で見つめている。先日行われたミサイル発射実験についての北朝鮮国内の反応を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。
両江道(リャンガンド)の情報筋によれば、先月28日に行われたミサイル発射実験について、中央は「帝国主義勢力に抗い国防分野でまた一つの大きな成果をあげた」と宣伝しているが、現地の雰囲気は冷淡だという。
北朝鮮では現在、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の再現すら懸念されている状況だ。
そのような中、住民の間では「経済難で日々暮らすのが大変な状況で、ミサイルを撃ち続ければ国際社会の反発による経済制裁によって、経済状況が最悪の状況になりうる」という懸念の声が上がっていると伝えた。
また中央が「ミサイル発射実験は国防科学発展及び武器体系開発5カ年計画の一環で、国防力強化に寄与した」と強調していることに対し、住民は「食べ物がなく飢える人が増え、生活必需品が不足しているのに、ミサイルを撃ちまくれば食べ物が出てくるのか。外国の援助が出てくるのか」と批判しているという。
この手の国防力強化に関する宣伝は数十年に渡って続けられているが、「もはや国民に受け入れられない」と伝えた情報筋は、今回のミサイル発射についてこのような見方を示した。
「もはや、ある程度の住民は当局のミサイル開発と国防力強化が、外部侵略勢力から国を守るためではなく、経済難に苦しむ住民の反発を押さえるため、情勢の緊張を作り出す目的で行われていることを知っている」
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、現地でもミサイル発射実験と関連して思想教養事業(思想教育)が行われていると伝えた。
朝鮮労働党の地元の委員会の宣伝扇動部の幹部は、住民を集めた上で、相次ぐミサイル発射実験の成功は金正恩総書記の偉大な業績であると熱く語ったが、その場にいた住民の反応は冷淡なものだったという。
当局者は、もっと良い反応があるだろうと見込んでいたようだが、この手の兵器実験には以前から批判的な声が多い。いかに庶民の声に耳を傾けていないか、ということだ。
情報筋は、「ミサイル発射実験に莫大な予算がかかっていることは多くの人が知っている」と指摘。それが経済制裁を招き、コロナ鎖国で生活苦に拍車がかかっている状況でミサイル発射実験を行ったことについて、「反感は爆発寸前」だとしながらも、当局の監視の厳しさのために大っぴらに表現できないため、冷淡な反応を示すことで、不満を表出しているのだと解説した。
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