新じゃがいも入荷で当面の飢えから脱した北朝鮮の人々
気候の関係で稲作が難しい北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)では、ジャガイモが日常食となっている。収穫されたばかりのジャガイモが市場に出回るようになり、食糧不足に苦しめられていた人々の表情に笑顔が戻った。
現地のデイリーNK内部情報筋は、収穫がほぼ終わり、恵山(ヘサン)の市場に採れたてのジャガイモが並ぶようになったと伝えた。値段は1キロで700北朝鮮ウォン(約12円)から1000北朝鮮ウォン(約17円)で、3000北朝鮮ウォン(約51円)台で売られているトウモロコシに比べて大幅に安い。
人々を飢えから救う救荒植物であるトウモロコシは、非常に安価で販売されてきたが、最近は高値が続いている。さらにコメはその倍以上の価格で販売されており、1日の収入が2000北朝鮮ウォン(約34円)ほどしかない大多数の市民にとっては大きな負担となっていたが、安価なジャガイモの入荷で、少し余裕ができたようだ。
「(2000北朝鮮ウォンの)収入で、トウモロコシは1キロも買えないが、ジャガイモなら2〜3キロ買えるので、いかに生活が苦しくても飢えるほどではなくなった」(情報筋)
一方で、職場に所属している人々には、ジャガイモの配給があった。
朝鮮労働党両江道委員会(道党)は先月中旬、市や郡の機関長会議で、労働者へのジャガイモ配給問題を議論し、イルクン(幹部)はなんとしてでも今年の食糧問題の解決に総力を傾けるべきと強調した。
道党のトップである責任書記は、会議で次のように指示した。
「昨年、機関長が運搬(費用)が高いという理由で、ジャガイモ配給を諦めるケースが多かったが、労働者のことを一つも考えていない行動だ。費用がかかっても、市場価格よりは高くならないだろうから、能力を最大限発揮して、今年は労働者のジャガイモ配給を保証せよ」
この指示に基づき、工場や企業所の機関長は、協同農場に出向き、収穫量の多い畑を割り当ててもらえるように、幹部と交渉を行っている。
ただ、別の情報筋は、労働者が農場に行ってジャガイモ掘りをする必要はなくなったが、トラックを借りて運ばされる状況となり、工場や企業所はこの方法を敬遠していると伝えている。
また、責任書記は、職場に所属している家族のいない世帯も、配給を受け取れるようにせよと指示を下した。前述の内部情報筋は、これで昨年のように配給を受け取れない世帯はないだろうと楽観的な見方と示しているが、一方で別の情報筋は、ジャガイモを輸送する経済的余裕のない高齢者や栄誉軍人(傷痍軍人)は、これでは何ももらえないと不満の声を上げていると伝えている。
なお、秋の収穫の状況を巡っても、豊作と凶作という相反する情報が北朝鮮国内で流れているようだ。
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