銃撃された北朝鮮の亡命兵士、驚異的な回復…現場は平和地帯に
昨年11月13日、北朝鮮軍兵士1人が、南北や国連軍(在韓米軍)がにらみあう板門店(パンムンジョム)の非武装地帯(JSA)内で軍事境界線を駆け抜け、韓国に亡命する事件があった。北側の追撃兵らは、拳銃と自動小銃で銃撃。被弾した亡命兵士は瀕死の重傷を負った。
その一部始終を捉えた監視カメラ映像は全世界に公開され、衝撃を呼んだ。
2015年8月には、韓国軍兵士2人が北朝鮮側の仕掛けた対人地雷に接触。身体の一部を吹き飛ばされた際の動画が公開されたが、「銃撃亡命動画」はこれとともに、南北が一触即発の状態にあったことを示す歴史的資料と言える。
しかし、銃撃亡命事件から1年を経ずして、JSAは「平和地帯」に衣替えしようとしている。
北朝鮮と韓国、在韓国連軍司令部は16日、南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で3者協議体の初会合を開催。板門店の共同警備区域(JSA)の非武装化のため必要な措置について話し合った。
9月の南北首脳会談に際して調印された軍事分野合意書では、JSAからの地雷撤去や見張り所の撤収、相互による非武装化検証までの期間を約1カ月としており、早ければ今月中にもこうした措置が完了する見込みだという。
また、3者協議体はこの日の会合で、JSAの非武装化が完了した後は、同地を訪問する南北の観光客や外国人がJSA内の南北双方のエリアを自由に往来することができるように合意した。実現すれば、まさに画期的な措置だ。
韓国の情報筋によれば、件の亡命兵士は銃撃で受けた傷もほとんど回復し、現在は社会生活を送っている。20代半ばと若いとは言え、受けたダメージの大きさを考えれば、驚異的な回復力だと思わざるを得ない。
彼をはじめ、韓国に逃れた脱北者たちには新たな身分が与えられており、韓国旅券も発給されている。つまりは非武装化後のJSAを訪問し、北側エリアに入ってみることも可能なわけだ。
もっとも、北朝鮮国民は国内・国外を問わず、旅行が厳しく制限されている。というより、ほとんど許されていないから、JSAに行きたくても行けない。海外に逃れた脱北者と、北朝鮮に残る家族が連絡を取り合い、JSAで再会を果たす余地はゼロではないが、北朝鮮当局に露呈するリスクの大きさもあり、まだまだ現実的ではないだろう。
JSAが非武装化されても、本当の平和はまだ先なのだ。
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