「恐怖教育」で脱北を未然に防ごうと必死になる北朝鮮
「北朝鮮で飢えていた」
「食べて生きていくためにやってきた」
10月24日、木造船に乗って韓国の領海にたどり着いた家族と思われる北朝鮮国民4人は、このように亡命の意志を明らかにしたと韓国メディアが報じている。
北朝鮮では、秋の収穫が進むにつれ、食糧事情が改善しつつあると伝えられているが、多くの人が食べるには困らなかったコロナ前の状況を回復するには至っていないようだ。
そんな中で起きた今回の脱北だが、韓国では、海軍が木造船を発見できず、民間の漁船の通報を受けてようやく出動したのではないか、との疑問の声が上がっている。当然のことながら、北朝鮮でも今回の件は大問題になっている。
江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋によると、木造船に乗って南朝鮮(韓国)に行った越南逃走者(脱北者)を未然に防げなかった問題を巡り、朝鮮労働党江原道委員会(道党)と軍事委員会の会議が25日午前に、朝鮮労働党中央委員会(中央党)組織指導部と、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)保衛局が参加して開かれた。
会議では、脱北を防げなかった海軍と海岸警備隊の警備失敗問題が重点的に取り上げられ、責任者、現場担当者、その他関連のある者に対して厳しく責任を問うとの言及があった。
同時に、脱北した住民の居住地管轄の党、行政、安全(警察)、保衛(秘密警察)の各機関の責任者、担当者に対しても責任を問い、検閲(監査)を実施する件についても討議された。
さらに、今回の事件が他の地域にまで知られ、動揺が起こらないように安全、保衛機関が責任を持って噂の拡散をブロックし、船舶を使った脱北事例の再発を防ぐために、統制と戦闘動員準備を徹底することが強調された。
ただ、北朝鮮の口コミネットワークを通じた情報伝達は非常に速く、瞬く間に全国に広がってしまうことがしばしばある。また、噂を取り締まるべき立場の人間が、家族に「ここだけの話」と話したことで、広まってしまうこともよくある。
道内の水産事業所、海上副業企業(行政機関などが財政確保のあめ営む漁業会社)の船舶の出航を全面的に禁止し、既に出航した船舶に対してもすぐに呼び戻して、48時間以内にすべての船舶と船員に対する点検を行うこと、指示があるまで、高城(コソン)、文川(ムンチョン)など道内の沿岸海上に対する警戒勤務を強化することが指示された。
中央党組織指導部は、「江原道は他の地域と異なり、敵ども(韓国)と陸海空のすべてで対峙している地域であるため、党、行政、軍、司法、安全、保衛、検察のすべての機関が、軍人、民間人の政治思想の動向について点検すべき」だと指摘した。
また、一時的な困難(食糧難)により、「敵に同調した者どもや変節者どもの末路がいかなるものか、軍保衛局の提供した映像で恐怖教養(教育)を実施せよ」とも指示した。
現在、軍保衛局は、事件当日に海上警戒勤務に当たっていた軍官(将校)、一般兵士の勤務中の居眠り、上部への報告の状況、異常兆候の記録などについて詳しく調査していると伝えられている。また、軍官と部下が口裏合わせできないように別々にして、取り調べを行っている。
同様の調査は、江原道の北にある咸鏡南道(ハムギョンナムド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)でも行われていると、別の内部情報筋が伝えている。
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