金正恩氏をイラ立たせる新手の「ドロボー軍団」犯罪手口
1980年代以前の北朝鮮は、非常に犯罪の少ない国だったと言われている。勤め先でもらえる月給が少ない代わりに、衣食住すべてを国から配給してもらえ、現金がさほど必要なかったこともあり、犯罪を起こす要因が少なかったのだ。ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」で一変した。
国の配給システムが崩壊したことで、今までもらえていた配給が途絶えたことで、生き抜くすべを持たない人々が次々に餓死していった。市場で商売ができる人はそれで生き延びることができたが、それすらできない人は犯罪に手を染めるしかなかった。治安の悪化に、金正日総書記は即決で処刑する荒っぽい手法で対処したが、さほど効果はなかった模様だ。
それから20年あまり。大量に餓死者を出すような状況ではないが、国際社会の制裁による生活苦で犯罪に手を出す人が後を立たず、治安の悪化が金正恩体制をいら立たせている。最近では、平壌郊外の平城(ピョンソン)で窃盗団に対する公開裁判が行われたと現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。
平城の市場の前で行われた裁判では、窃盗団4人に対して教化刑(懲役刑)14年が言い渡された。これは量刑の相場を超えるもので、情報筋は「見せしめで重い刑となった」と伝えているが、裁判官へのワイロが払えなかった可能性もあるだろう。今後は同種の犯罪でも、死刑が宣告される例が出てくるかもしれない。
4人の手口は次のようなものだった。
自家用車に乗って郊外の道路を走り、ターゲットを定めた上で追跡、深夜になるまで待ち、ドアをこじ開けて車を移動させてから部品を取り外す。犯行は合計で7回に及んだ。
部品の中でもエンジン、変速機などの主要部品を狙うため、車体はそのままでも単なる鉄の塊と化してしまう。
4人の犯行はそれだけにとどまらない。ドライバーに麻酔薬をかがせ失神させた後に、部品を奪う手法も使った。不意をつかれたドライバーは、抵抗できないままやられ放題で、気を取り戻しても犯人の顔を思い出せない。麻酔薬を使った犯行は非常に危険なもので、ついに死者が出てしまった。4人は裁判で、人が死んだことは知らなかったと答えている。
平城の窃盗団は逮捕されたが、中朝貿易の中心地の新義州(シニジュ)、東海岸の交通の要衝の咸興(ハムン)などでも同様の窃盗事件が相次いでおり、当局は盗難品の写真の写真入りの布告文を出すなど、対応にあたっているが、今のところ犯人は捕まっていない。
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