北朝鮮軍「兵士の不倫」を取り締まり…窃盗など犯罪も続発
「軍人を見たら泥棒と思え」
北朝鮮では、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士による窃盗が後を絶たない。それは軍事境界線を挟んで韓国と対峙する最前線の部隊とて同じだ。
黄海北道(ファンヘブクト)平山(ピョンサン)周辺では、地元に駐屯する朝鮮人民軍第2軍団の兵士による空き巣、詐欺が相次ぎ、住民から苦情が殺到している。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
毎年秋の収穫の時期になると、兵士による収穫物の窃盗が相次いでいたが、今年は特にひどいという。農場で収穫物を盗むのは基本で、民家に押し入って食べ物や家財道具を盗んだり、市場で品物を盗んだりしている。また、商人から借金をしたり、ツケで商品を買ったりして踏み倒す行為にも及んでいる。
さらには、部隊の近辺に住む女性と不倫関係となり、女性相手に詐欺を働いたりと、国民を守るどころか、逆に脅かしている。あまりのひどさに住民からは「無敵必勝の強軍ではなく、無敵の泥棒強軍」だと非難の声が上がっている。
朝鮮労働党の各市、郡の委員会には、信訴(告発)と対策を訴える声が殺到した。これを深刻に受け止めた第2軍団の司令部は、隷下の師団、旅団の兵士に対する取り締まりに乗り出した。
軍団の保衛局(秘密警察)は、警務、保衛小隊を立ち上げ、「私服で市内や住宅地をパトロールし、犯罪行為、不良行為に及ぶ者がいれば無条件で取り締まれ」と指示した。具体的にはツケ払い、借金、農場での窃盗、軍需物資の横流し、部隊近辺に住む女性との不倫、軍事機密の漏洩などを違反行為として挙げた。
また、外出する兵士が持参する外出証や出張証明書に、指揮部の署名や印鑑があるか、偽造されたものではないかなどを徹底的に確認せよとの指示も下した。違反者は軍法で厳罰に処すとの警告も付け加えた。当面の間、兵士の外出や休暇は制限される可能性があると情報筋は見ている。
軍当局が深刻に受け止めているのは、北朝鮮が重要視する「軍民関係」を毀損する行為だからだ。しかし、それを招いている背景には深刻な食糧不足がある。
以前から軍の食糧供給には問題があった。協同農場からの輸送過程で横流しが頻発。末端の兵士はもちろん、軍官(将校)ですらまともな食事にありつけず、部隊周辺の農場や民家を襲撃して、民間人からは「馬賊」呼ばわりされて恐れられる存在となっていた。
本来、国が責任を持って食糧供給をすべきところだが、金正恩総書記はその責任を地方の党委員会に押し付けた。
兵力が120万人と世界4位の巨大な軍を擁する北朝鮮だが、その多くはまともな食事にありつけず、米軍や韓国軍と戦う前に、飢えとの戦いを強いられているのだ。
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