「自分で決めて広島から来た」前橋育英MF釣崎、3年間が実を結ぶ“愛されキャラ”のゴール
サッカーキング2018年1月7日(日)0時33分
チーム6点目を決めた釣崎椋介 [写真]=小林浩一
高校サッカー選手権準決勝、前橋育英と上田西の試合は、5-1のスコアで後半のアディショナルタイムを迎えていた。その直後に5-1だったスコアを6-1にするMF釣崎椋介のゴールが生まれる。試合の流れや勝敗に影響を与えたわけではない得点だし、競って粘って泥臭く決めた形で、スーパーゴールというわけでもない。だが、このゴールをスタンドもベンチもピッチ上の選手たちも目一杯に祝福。大盛り上がりの様子を見せたのは、何とも印象的だった。
ゴールしたシチュエーションではなく、ゴールした男がポイントだったのだ。背番号27という重い数字を背負う3年生の釣崎は、ここまで出場どころかベンチ入りも3回戦の1試合のみ。30人の登録メンバー入り自体が危ぶまれた時期もあったような選手だ。今季Aチームの公式戦で先発したは「負傷者の出ていたプリンスリーグ関東の1試合だけ」(釣崎)。主に県リーグを戦うBチームを主戦場にしてきた。そしてだからこそ、喜びも大きかった。
FW飯島陸は「あれはツリ(釣崎)のキャラのおかげですね」として、こう続けた。
「ツリはみんなから愛されていて、みんなから『出てほしい』と思われていた。そこで点を決めてくれたのはチームとしても良かった。下のチームの選手はツリと一緒にやっている時間が長くて、そこの代表みたいなところある。そういう選手が取ってくれたのはみんなもうれしかったと思うし、自分もめっちゃうれしかった」
もっとも、本人にとっては初めての選手権舞台である。「それで点を取っちゃうなんてすごい」(DF渡邉泰基)ことではあるのだが、緊張していたのだろう。ハプニングもありながらの投入だった。アップ場所から名前を呼ばれて着替えると、終了間際のために急かれていたこともあって、うっかりそのまま何の指示も受けずに第四審の下へ。山田耕介監督から「お前は誰と交代するつもりなんだ! どのポジションに入るかも分かってないだろ!」と出場前に大目玉を喰らうという“珍事”を起こしてしまった。とはいえ、テンションが上がりまくっていたのも無理はない。
「試合に出るか分からないのに、ずっと(スタンドの応援団から)コールをしてもらっていた。今もめっちゃLINEとか来ていて、うれしい。2年のときとかつらい時期もあって、でも、いまスタンドにいる仲間たちと一緒にやってきてこられて、そいつらのおかげで今ここに来られた」(釣崎)
サンフレッチェ広島ジュニアユースで思ったような活躍ができず、高校でのブレイクを期して「強いチームでプレーしたい」と遠く前橋育英に加入してきた釣崎だったが、ここまでなかなか部内の競争に打ち勝てず、苦しい時期も長かった。
「親に広島からここ(前橋育英)まで通わせてもらっているのに、結果が出なくてずっとモヤモヤしていた。でも自分で決めて広島から来ている。途中で投げ出したら、親に会わせる顔がない。絶対やり切ろうと思っていた」(釣崎)
中学時代は「守備とか全然できていなくて、球際も弱かった」と言うが、強豪校で「球際の強さやヘディング」を求められる中で、「自分なりにできるようになってきていた」と成長への手ごたえもある中で掴んだ選手権での出場機会だった。そこで「点を取るような、そういうタイプの選手じゃない」と言う釣崎だが、この日はスライディングタックルでボールに触ったところから相手のクリアをブロックし、最後は競り合いつつルーズボールに突っ込んでマイボールにしてのゴールを記録。3年間で培ってきた成果を表現するような、最高のゴールを準決勝という大舞台で記録してみせた。
腐らず頑張ってきた選手のことをチームメイトは必ず観ているもので、そうした選手の活躍はチームに勢いをもたらすもの。普通に考えれば、5-1を6-1にしただけのゴールかもしれないが、もっと大きな意味を持つことになるかもしれない。
取材・文=川端暁彦
ゴールしたシチュエーションではなく、ゴールした男がポイントだったのだ。背番号27という重い数字を背負う3年生の釣崎は、ここまで出場どころかベンチ入りも3回戦の1試合のみ。30人の登録メンバー入り自体が危ぶまれた時期もあったような選手だ。今季Aチームの公式戦で先発したは「負傷者の出ていたプリンスリーグ関東の1試合だけ」(釣崎)。主に県リーグを戦うBチームを主戦場にしてきた。そしてだからこそ、喜びも大きかった。
FW飯島陸は「あれはツリ(釣崎)のキャラのおかげですね」として、こう続けた。
「ツリはみんなから愛されていて、みんなから『出てほしい』と思われていた。そこで点を決めてくれたのはチームとしても良かった。下のチームの選手はツリと一緒にやっている時間が長くて、そこの代表みたいなところある。そういう選手が取ってくれたのはみんなもうれしかったと思うし、自分もめっちゃうれしかった」
もっとも、本人にとっては初めての選手権舞台である。「それで点を取っちゃうなんてすごい」(DF渡邉泰基)ことではあるのだが、緊張していたのだろう。ハプニングもありながらの投入だった。アップ場所から名前を呼ばれて着替えると、終了間際のために急かれていたこともあって、うっかりそのまま何の指示も受けずに第四審の下へ。山田耕介監督から「お前は誰と交代するつもりなんだ! どのポジションに入るかも分かってないだろ!」と出場前に大目玉を喰らうという“珍事”を起こしてしまった。とはいえ、テンションが上がりまくっていたのも無理はない。
「試合に出るか分からないのに、ずっと(スタンドの応援団から)コールをしてもらっていた。今もめっちゃLINEとか来ていて、うれしい。2年のときとかつらい時期もあって、でも、いまスタンドにいる仲間たちと一緒にやってきてこられて、そいつらのおかげで今ここに来られた」(釣崎)
サンフレッチェ広島ジュニアユースで思ったような活躍ができず、高校でのブレイクを期して「強いチームでプレーしたい」と遠く前橋育英に加入してきた釣崎だったが、ここまでなかなか部内の競争に打ち勝てず、苦しい時期も長かった。
「親に広島からここ(前橋育英)まで通わせてもらっているのに、結果が出なくてずっとモヤモヤしていた。でも自分で決めて広島から来ている。途中で投げ出したら、親に会わせる顔がない。絶対やり切ろうと思っていた」(釣崎)
中学時代は「守備とか全然できていなくて、球際も弱かった」と言うが、強豪校で「球際の強さやヘディング」を求められる中で、「自分なりにできるようになってきていた」と成長への手ごたえもある中で掴んだ選手権での出場機会だった。そこで「点を取るような、そういうタイプの選手じゃない」と言う釣崎だが、この日はスライディングタックルでボールに触ったところから相手のクリアをブロックし、最後は競り合いつつルーズボールに突っ込んでマイボールにしてのゴールを記録。3年間で培ってきた成果を表現するような、最高のゴールを準決勝という大舞台で記録してみせた。
腐らず頑張ってきた選手のことをチームメイトは必ず観ているもので、そうした選手の活躍はチームに勢いをもたらすもの。普通に考えれば、5-1を6-1にしただけのゴールかもしれないが、もっと大きな意味を持つことになるかもしれない。
取材・文=川端暁彦
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