アフリカ最大のスラム街で草サッカーを観ていたら、結果的に「怖いけど防犯に役立つ話」を聞くことになった【カンバ通信】第350回
ロケットニュース242024年1月13日(土)19時0分
ジャンボ! あけましておめでとう。今年もケニアの「カンバ族」であるオレ・チャオスがお送りする『カンバ通信』をよろしくおねがいします。
ということで年が明けた2024年。ヒマだったオレは、アフリカ最大のスラム街こと「キベラスラム」に行って草野球ならぬ草サッカーを観戦していた。
スラム街のサッカー試合といえど、ちゃんとユニフォームも着ているし、すぐそこに警察署もある広場なので非常に安全なのだ。
そんな時、ひとりの男が近寄ってきた。
男「サッカーが好きなんかい」
俺「うん。サッカー好きだけど」
聞けば彼はキベラスラム出身であり、今現在もキベラの住人だった。
そこからオレたちは、ケニアのサッカー話はもちろん、欧州サッカーの話題で盛り上がった。サッカー好き同士、すぐに打ち解けられる。
あまりにも夢中になって話しすぎて、気づけば夕方になっていた。そしてオレは彼に聞いてみた。
「キベラスラムの夜はどんな感じなんだい?」と。
ここは警察署も近くて安全だし、なにより彼はイイ奴だし、もしも安全ならメシでもどうかなと思ったのだ。
ところが。
「そりゃキベラの夜は危険さ。住んでいるオレですら危険と思うくらいに危険さ。夜は立ち去ったほうがいい」
「どう危険なんだい?」
「いろいろあるけど……。そうだね、もっとも危険なのは午後22時から23時までの1時間。スラム街の泥棒・強盗が活動を始めるのはこの時間帯だ」
「なぜ午後22時から23時までの間なんだい?」
「なぜならその時間、ほとんどの人は家にいて、外を出歩いている人はごくまれ。もしもその時間帯にスラム街を歩いていて、誰かに会ったら、そいつは泥棒か強盗だ」
「もしもスラム街で泥棒や強盗に会ってしまったら、どうなるんだい?」
「彼らが求めてくるのは、当然お金だ。あとは電話(スマホ)だね。この2つをよこせ、とくる。そしてそれに対峙した人は、断ることはできない」
「なぜだい?」
「彼らは100パーセントの確率で武器を持っているから。たとえば銃。次にナイフ。あと意外と多いのがハンマーだね。断ったら、これらの武器が火を吹くことになる」
「怖いね。夜は外に出られないね」
「うん。出られないし、出なくても同じかも。泥棒の中には善良な人間のふりをする人もいる。日中、仲良くなる。そして彼らは、夜に君の家のドアをノックする」
「ふむふむ、それで?」
「知っている人だから君はドアを開けるだろう。そしたらハンマーで頭や顔面をブン殴り、気を失ったり死んだあと、彼らは落ち着いて家の中のすべてのものを持っていく」
「死ぬ時もあるのかい」
「あるよ。ある。あたりまえだろ。もしも、いきなり殴ってこなくても、家に来られたら彼らの言うことには従ったほうがいい。抵抗は絶対にしちゃだめだ」
「抵抗したらどうなるんだい?」
「さっきも言っただろ。必ず殺される。だからもしも家に来られたら絶対に抵抗しちゃだめだ。もしも道で強盗にあっても絶対に抵抗しちゃだめだ。命が欲しければ従うことだ」
「そうなんだね。もう暗くなったから、オレは帰ることにするよ。もしもまた会うことになったら、また話そう」
「ああ、それがいい。ここは危険だから。では気をつけて。また会おう」
「クワヘリ」
執筆:チャオス(カンバ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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ということで年が明けた2024年。ヒマだったオレは、アフリカ最大のスラム街こと「キベラスラム」に行って草野球ならぬ草サッカーを観戦していた。
スラム街のサッカー試合といえど、ちゃんとユニフォームも着ているし、すぐそこに警察署もある広場なので非常に安全なのだ。
そんな時、ひとりの男が近寄ってきた。
男「サッカーが好きなんかい」
俺「うん。サッカー好きだけど」
聞けば彼はキベラスラム出身であり、今現在もキベラの住人だった。
そこからオレたちは、ケニアのサッカー話はもちろん、欧州サッカーの話題で盛り上がった。サッカー好き同士、すぐに打ち解けられる。
あまりにも夢中になって話しすぎて、気づけば夕方になっていた。そしてオレは彼に聞いてみた。
「キベラスラムの夜はどんな感じなんだい?」と。
ここは警察署も近くて安全だし、なにより彼はイイ奴だし、もしも安全ならメシでもどうかなと思ったのだ。
ところが。
「そりゃキベラの夜は危険さ。住んでいるオレですら危険と思うくらいに危険さ。夜は立ち去ったほうがいい」
「どう危険なんだい?」
「いろいろあるけど……。そうだね、もっとも危険なのは午後22時から23時までの1時間。スラム街の泥棒・強盗が活動を始めるのはこの時間帯だ」
「なぜ午後22時から23時までの間なんだい?」
「なぜならその時間、ほとんどの人は家にいて、外を出歩いている人はごくまれ。もしもその時間帯にスラム街を歩いていて、誰かに会ったら、そいつは泥棒か強盗だ」
「もしもスラム街で泥棒や強盗に会ってしまったら、どうなるんだい?」
「彼らが求めてくるのは、当然お金だ。あとは電話(スマホ)だね。この2つをよこせ、とくる。そしてそれに対峙した人は、断ることはできない」
「なぜだい?」
「彼らは100パーセントの確率で武器を持っているから。たとえば銃。次にナイフ。あと意外と多いのがハンマーだね。断ったら、これらの武器が火を吹くことになる」
「怖いね。夜は外に出られないね」
「うん。出られないし、出なくても同じかも。泥棒の中には善良な人間のふりをする人もいる。日中、仲良くなる。そして彼らは、夜に君の家のドアをノックする」
「ふむふむ、それで?」
「知っている人だから君はドアを開けるだろう。そしたらハンマーで頭や顔面をブン殴り、気を失ったり死んだあと、彼らは落ち着いて家の中のすべてのものを持っていく」
「死ぬ時もあるのかい」
「あるよ。ある。あたりまえだろ。もしも、いきなり殴ってこなくても、家に来られたら彼らの言うことには従ったほうがいい。抵抗は絶対にしちゃだめだ」
「抵抗したらどうなるんだい?」
「さっきも言っただろ。必ず殺される。だからもしも家に来られたら絶対に抵抗しちゃだめだ。もしも道で強盗にあっても絶対に抵抗しちゃだめだ。命が欲しければ従うことだ」
「そうなんだね。もう暗くなったから、オレは帰ることにするよ。もしもまた会うことになったら、また話そう」
「ああ、それがいい。ここは危険だから。では気をつけて。また会おう」
「クワヘリ」
執筆:チャオス(カンバ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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