【AFF三菱電機カップ】ベテラン勢が存在感を見せ王座を死守したタイ代表
サッカーキング2023年1月18日(水)16時52分
[写真]=Getty Images
大会最多を更新する7度目の優勝
東南アジアの王座を争うAFF三菱電機カップ2022は、タイが大会最多を更新する7度目の優勝を手にして幕を閉じた。これで2014年以降の同大会(前回までの大会名はAFFスズキカップ)は、タイが5大会中4度の制覇。近年はベトナムを筆頭に東南アジア各国が成長を遂げているが、同地域の盟主として君臨してきたタイが今回もその存在感を示す結果となった。
今大会のタイ代表は、決して万全の状態で開幕を迎えたわけではなかった。MFチャナティップ・ソングラシン(川崎フロンターレ)、MFスパチョーク・サラチャート(北海道コンサドーレ札幌)という2人のJリーガーをはじめ、複数の主力選手が不参加。2014年大会以降の3度の優勝時はいずれもチャナティップが大会MVPの活躍を見せており、その不在は特に大きな痛手だった。
実際、直近の5大会で唯一優勝を逃した2018年大会は、当時Jリーグでプレーしていたチャナティップ、ティーラトン・ブンマータン、ティーラシン・デーンダーといった海外組を招集することができず。その結果、韓国人のパク・ハンソ監督のもとで躍進を遂げようとしていたベトナムに王座を譲った。今回はそれ以来となる「チャナティップ不在」で臨む大会とあって、タイは絶対的な本命とは見られていなかった。
しかし蓋を開けてみれば、タイはグループリーグを3勝1分けの戦績で危なげなく首位通過。準決勝では近年、相性の悪かったマレーシアを相手にアウェイでの1stレグを0ー1で落としたものの、ホームでの2ndレグで3ー0と快勝して2大会連続となるファイナルに駒を進めた。
決勝戦は前評判どおりに東南アジアの「2強」が激突するベトナムとの決戦となり、1stレグはアウェイのハノイで2ー2のドロー。タイはアウェイゴール2つを奪って優位な状況で自国での2ndレグを迎えると、1ー0と手堅く勝利を収めて3大会ぶりにホームのファンの前で優勝カップを掲げた。
ティーラトンがMVP、ティーラシンが得点王に
今大会のタイ代表はチャナティップとスパチョークのJリーグ勢だけでなく、大会期間中にレスターに練習参加していたブリーラム・ユナイテッド所属の選手たちも招集されていなかった。今季のタイリーグで10ゴールをマークし得点ランクのトップに立つ24歳のFWスパチャイ・ジャイデッド、スパチョークの弟であるFWスパナット・ムアンター、右サイドバックのナルバディン・ウィーラワットノドムといった選手たちは、本来であれば主力として期待されていた戦力だ。
ベストメンバーをそろえられない苦しい状況下で連覇を成し遂げる原動力となったのは、この10年のタイ代表を支えてきた経験豊富な選手たちだった。とりわけ大会MVPに選出されたティーラトン、6ゴールで得点王に輝いたティーラシンという2人の元Jリーガーが存在感を見せてチームをけん引した。
ボランチとして攻守の要を担ったティーラトンは、チャナティップ不在の中盤でゲームメイクしながら、機を見て左サイドに流れて精度の高い左足のキックでゴールを演出。ベトナムとの決勝戦では1stレグで2アシスト、2ndレグでは珍しい右足でのミドルシュートをたたき込んでチームを優勝に導いた。大会を通して示された抜群の存在感は、文句なしにMVPに値するものだった。
ティーラシンは大会中に負ったケガでベトナムとの決勝戦2試合は欠場したものの、準決勝までの6試合で6ゴールをマーク。ベトナムのグエン・ティエン・リンと並んで大会得点王に輝き、34歳となった今も東南アジア最高のストライカーの一人であることを証明した。
その他にもMFサーラット・ユーイェン、FWアディサック・クライソーンら30代の選手たちの安定したプレーが光った今大会のタイ。多くの主力を欠きながら王座を死守したのは見事だったが、一方で若い世代の活躍は目立たなかった。アジア枠の大幅増により、今後はワールドカップ出場がタイにとってもより現実味のある目標となる。東南アジア王者がその悲願を果たすためには、次代を担う新しい才能たちとの融合が不可欠だ。
文=本多辰成
東南アジアの王座を争うAFF三菱電機カップ2022は、タイが大会最多を更新する7度目の優勝を手にして幕を閉じた。これで2014年以降の同大会(前回までの大会名はAFFスズキカップ)は、タイが5大会中4度の制覇。近年はベトナムを筆頭に東南アジア各国が成長を遂げているが、同地域の盟主として君臨してきたタイが今回もその存在感を示す結果となった。
今大会のタイ代表は、決して万全の状態で開幕を迎えたわけではなかった。MFチャナティップ・ソングラシン(川崎フロンターレ)、MFスパチョーク・サラチャート(北海道コンサドーレ札幌)という2人のJリーガーをはじめ、複数の主力選手が不参加。2014年大会以降の3度の優勝時はいずれもチャナティップが大会MVPの活躍を見せており、その不在は特に大きな痛手だった。
実際、直近の5大会で唯一優勝を逃した2018年大会は、当時Jリーグでプレーしていたチャナティップ、ティーラトン・ブンマータン、ティーラシン・デーンダーといった海外組を招集することができず。その結果、韓国人のパク・ハンソ監督のもとで躍進を遂げようとしていたベトナムに王座を譲った。今回はそれ以来となる「チャナティップ不在」で臨む大会とあって、タイは絶対的な本命とは見られていなかった。
しかし蓋を開けてみれば、タイはグループリーグを3勝1分けの戦績で危なげなく首位通過。準決勝では近年、相性の悪かったマレーシアを相手にアウェイでの1stレグを0ー1で落としたものの、ホームでの2ndレグで3ー0と快勝して2大会連続となるファイナルに駒を進めた。
決勝戦は前評判どおりに東南アジアの「2強」が激突するベトナムとの決戦となり、1stレグはアウェイのハノイで2ー2のドロー。タイはアウェイゴール2つを奪って優位な状況で自国での2ndレグを迎えると、1ー0と手堅く勝利を収めて3大会ぶりにホームのファンの前で優勝カップを掲げた。
ティーラトンがMVP、ティーラシンが得点王に
今大会のタイ代表はチャナティップとスパチョークのJリーグ勢だけでなく、大会期間中にレスターに練習参加していたブリーラム・ユナイテッド所属の選手たちも招集されていなかった。今季のタイリーグで10ゴールをマークし得点ランクのトップに立つ24歳のFWスパチャイ・ジャイデッド、スパチョークの弟であるFWスパナット・ムアンター、右サイドバックのナルバディン・ウィーラワットノドムといった選手たちは、本来であれば主力として期待されていた戦力だ。
ベストメンバーをそろえられない苦しい状況下で連覇を成し遂げる原動力となったのは、この10年のタイ代表を支えてきた経験豊富な選手たちだった。とりわけ大会MVPに選出されたティーラトン、6ゴールで得点王に輝いたティーラシンという2人の元Jリーガーが存在感を見せてチームをけん引した。
ボランチとして攻守の要を担ったティーラトンは、チャナティップ不在の中盤でゲームメイクしながら、機を見て左サイドに流れて精度の高い左足のキックでゴールを演出。ベトナムとの決勝戦では1stレグで2アシスト、2ndレグでは珍しい右足でのミドルシュートをたたき込んでチームを優勝に導いた。大会を通して示された抜群の存在感は、文句なしにMVPに値するものだった。
ティーラシンは大会中に負ったケガでベトナムとの決勝戦2試合は欠場したものの、準決勝までの6試合で6ゴールをマーク。ベトナムのグエン・ティエン・リンと並んで大会得点王に輝き、34歳となった今も東南アジア最高のストライカーの一人であることを証明した。
その他にもMFサーラット・ユーイェン、FWアディサック・クライソーンら30代の選手たちの安定したプレーが光った今大会のタイ。多くの主力を欠きながら王座を死守したのは見事だったが、一方で若い世代の活躍は目立たなかった。アジア枠の大幅増により、今後はワールドカップ出場がタイにとってもより現実味のある目標となる。東南アジア王者がその悲願を果たすためには、次代を担う新しい才能たちとの融合が不可欠だ。
文=本多辰成
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