バイエルンで前人未到の500勝達成! トーマス・ミュラーの歩みを振り返る
サッカーキング2024年2月7日(水)7時0分
バイエルンで通算500勝を達成したミュラー [写真]=Getty Images
バイエルンに所属しているドイツ代表FWトーマス・ミュラーが新たな偉業を成し遂げた。
ここまでバイエルン一筋のキャリアを積み上げているミュラーは、3日に行われたボルシアMG戦にスタメン出場すると、U-20ドイツ代表MFアレクサンダル・パブロビッチのゴールをお膳立てするなど3-1での勝利に貢献。首位を走るレヴァークーゼンを「2」ポイント差で追う王者バイエルンに、貴重な勝ち点「3」をもたらすとともに、自身にとってはクラブキャリア通算「500」回目となる白星を達成した。これは123年間の歴史を誇るバイエルンにおいて前人未到の快挙となっている。
バイエルン一筋のミュラーは、同クラブで公式戦690試合に出場して歴代最多となる「500勝」を達成した。勝率は驚異の「72%」。クラブ記録の勝利数を更新し続けるミュラーだが、これがいかに凄い数字であるかは、歴代の名プレーヤーと比較すれば一目瞭然だ。クラブ歴代2位の勝利数を誇るのは、2002年の日韓ワールドカップで大会最優秀選手に輝いた元ドイツ代表GKオリバー・カーン氏なのだが、彼の通算勝利数は「383」。ミュラーは2位のカーン氏に「117勝」も差をつけているのだ。ちなみにクラブ歴代3位には現役のチームメイト、ドイツ代表GKマヌエル・ノイアー(382勝)が控えている。
バイエルンの出場試合数ランキングを見ると、ミュラーが記録した「690」はクラブ歴代2位である。1位はバイエルン一筋で活躍した元西ドイツ代表GKゼップ・マイヤー氏で、その数字は「706」。1962年から18年間に渡ってプレーしたマイヤー氏は、チャンピオンズカップ(現:チャンピオンズリーグ)3連覇に貢献するなど数々の栄光を手にしてきたが、それでも勝利数は歴代5位の「345勝」。勝率は「49%」に留まっており、いかにミュラーの「500勝」が凄いことかが伝わるはずだ。
今シーズン中にマイヤー氏の最多出場記録も塗り替える可能性があるミュラーは、これまで690試合で「237ゴール・214アシスト」をマークしており、1.5試合に1回はゴールに絡んでいる計算になる。
■デビュー戦は勝利ならず
そんなミュラーであろうとも、最初から勝てたわけではない。ミュンヘン出身のミュラーは10歳にしてバイエルンアカデミーの門を叩くと、すぐに頭角を現して2008-09シーズンにトップチームデビューを果たした。そのシーズンから監督に就任したユルゲン・クリンスマン(現:韓国代表)の下、ブンデスリーガ開幕節ハンブルガーSV戦の79分に投入されてデビューを飾ったが、ミロスラフ・クローゼに代わってピッチに立った18歳は見せ場を作れず。チームも2点差を追いつかれてドロー発進となった。
デビュー戦の翌日、ミュラーはバイエルンのセカンドチームで3.リーガ(ドイツ3部)の試合にフル出場。そのシーズンは大半をセカンドチームで過ごすこととなり、トップチームでの出場は5試合のみ。それでもデビュー戦以外の4試合は見事に勝利を収め、チャンピオンズリーグ(CL)のスポルティング戦で記念すべき初ゴールもマークした。当時のバイエルンは過渡期にあり、シーズン途中にクリンスマン監督を解任すると、リーグ優勝を逃して無冠に終わった。
前途多難なスタートを切ったわけだが、そもそもミュラーはデビューできない可能性もあったそうだ。クリンスマンは「いつかNetflixのドラマになるかもね」と、偉大な選手に成長したミュラーについて冗談を飛ばしたことがあるが、彼がミュラーにデビューのチャンスを与えたのは“もう一人のミュラー”のおかげだという。数々のゴール記録を持つクラブレジェンド、“爆撃機”こと元西ドイツ代表FWのゲルト・ミュラー氏(2021年に他界)である。
クリンスマンは小さい頃からゲルト・ミュラーに憧れていたそうで、当時バイエルンのセカンドチームでコーチを務めていた彼のもとを頻繁に訪れたという。そこで特別な得点感覚を持つトーマス・ミュラーという若手を推薦されたのだ。クリンスマンは18歳のアタッカーをトップチームに呼ぶために電話をかけたが、その場で応答はなく、後で留守電を聞いたミュラーは慌てて電話をかけ直したそうだ。
■オールウェイズ・ミュラー
翌2009-2010シーズンからレギュラーに定着したミュラーは、とにかく試合に出続けている。同シーズンに公式戦52試合に出場すると、昨季まで14シーズン連続で40試合以上もプレーしているのだ。そんな鉄人ぶりで記録を更新し続けるミュラーは、歴代の指揮官をも驚かせてきた。彼をレギュラーに抜擢した名将ルイ・ファン・ハールも、バイエルンを率いていた2010年にミュラーを大絶賛している。
「このチームのボスは、もう私ではない。トーマス・ミュラーさ」
同年に開催された南アフリカワールドカップで得点王に輝く活躍を見せた若武者は、シーズン開幕後も試合に出ずっぱりだった。だが、2010年9月のローマ戦でゴールを決めると、82分に交代。試合後、指揮官はミュラーが疲労の影響で自ら交代を申し出たことを明かし、前述の「ボス」発言をしたのだ。
そして、のちに語り継がれることになる名フレーズを発するのだった。「ミュラーはいつだってゴールを期待できる。常にチャンスに顔を出す」と前置きしたファン・ハールは、だから「Müller spielt immer」と明言。日本語に訳すと「ミュラーは常にプレーする」という言葉は、現代のバイエルンを象徴する名言の1つとなっている。
■同じパンツを420回着用!?
今回の「500勝」は数あるコレクションの1つに過ぎない。ブンデスリーガの「歴代最多優勝」、「最多勝利数」、「1シーズンのアシスト記録」など、ミュラーは並べだしたらキリがないほどの記録を打ち立ててきた。先日のボルシアMG戦の後には、500勝の記念ユニフォームを贈られたが、数字はそこまで気にしていないのかもしれない。
というのも、本人は記念のゴールや節目の試合について「長いことプレーしていると、自然と“記念”が増えるのさ。もちろん、嬉しいものだよ」と発言。これは昨年ブンデスリーガで300回目のゴール関与(141ゴール・159アシスト)を達成した際の言葉だが。その際には冗談も忘れていなかった。「次に他の記録に到達したら、その時は僕が同じ下着を420回も着用しているというデータも収集してね!」
常に試合に出続けるトーマス・ミュラー。同じパンツを履き続けながら、バイエルンで前人未到の「500勝」を達成した偉大なプレーヤーの、次の記録に注目したい。
(記事/Footmedia)
【ハイライト動画】ミュラーが通算500勝を達成したボルシアMG戦
ここまでバイエルン一筋のキャリアを積み上げているミュラーは、3日に行われたボルシアMG戦にスタメン出場すると、U-20ドイツ代表MFアレクサンダル・パブロビッチのゴールをお膳立てするなど3-1での勝利に貢献。首位を走るレヴァークーゼンを「2」ポイント差で追う王者バイエルンに、貴重な勝ち点「3」をもたらすとともに、自身にとってはクラブキャリア通算「500」回目となる白星を達成した。これは123年間の歴史を誇るバイエルンにおいて前人未到の快挙となっている。
バイエルン一筋のミュラーは、同クラブで公式戦690試合に出場して歴代最多となる「500勝」を達成した。勝率は驚異の「72%」。クラブ記録の勝利数を更新し続けるミュラーだが、これがいかに凄い数字であるかは、歴代の名プレーヤーと比較すれば一目瞭然だ。クラブ歴代2位の勝利数を誇るのは、2002年の日韓ワールドカップで大会最優秀選手に輝いた元ドイツ代表GKオリバー・カーン氏なのだが、彼の通算勝利数は「383」。ミュラーは2位のカーン氏に「117勝」も差をつけているのだ。ちなみにクラブ歴代3位には現役のチームメイト、ドイツ代表GKマヌエル・ノイアー(382勝)が控えている。
バイエルンの出場試合数ランキングを見ると、ミュラーが記録した「690」はクラブ歴代2位である。1位はバイエルン一筋で活躍した元西ドイツ代表GKゼップ・マイヤー氏で、その数字は「706」。1962年から18年間に渡ってプレーしたマイヤー氏は、チャンピオンズカップ(現:チャンピオンズリーグ)3連覇に貢献するなど数々の栄光を手にしてきたが、それでも勝利数は歴代5位の「345勝」。勝率は「49%」に留まっており、いかにミュラーの「500勝」が凄いことかが伝わるはずだ。
今シーズン中にマイヤー氏の最多出場記録も塗り替える可能性があるミュラーは、これまで690試合で「237ゴール・214アシスト」をマークしており、1.5試合に1回はゴールに絡んでいる計算になる。
■デビュー戦は勝利ならず
そんなミュラーであろうとも、最初から勝てたわけではない。ミュンヘン出身のミュラーは10歳にしてバイエルンアカデミーの門を叩くと、すぐに頭角を現して2008-09シーズンにトップチームデビューを果たした。そのシーズンから監督に就任したユルゲン・クリンスマン(現:韓国代表)の下、ブンデスリーガ開幕節ハンブルガーSV戦の79分に投入されてデビューを飾ったが、ミロスラフ・クローゼに代わってピッチに立った18歳は見せ場を作れず。チームも2点差を追いつかれてドロー発進となった。
デビュー戦の翌日、ミュラーはバイエルンのセカンドチームで3.リーガ(ドイツ3部)の試合にフル出場。そのシーズンは大半をセカンドチームで過ごすこととなり、トップチームでの出場は5試合のみ。それでもデビュー戦以外の4試合は見事に勝利を収め、チャンピオンズリーグ(CL)のスポルティング戦で記念すべき初ゴールもマークした。当時のバイエルンは過渡期にあり、シーズン途中にクリンスマン監督を解任すると、リーグ優勝を逃して無冠に終わった。
前途多難なスタートを切ったわけだが、そもそもミュラーはデビューできない可能性もあったそうだ。クリンスマンは「いつかNetflixのドラマになるかもね」と、偉大な選手に成長したミュラーについて冗談を飛ばしたことがあるが、彼がミュラーにデビューのチャンスを与えたのは“もう一人のミュラー”のおかげだという。数々のゴール記録を持つクラブレジェンド、“爆撃機”こと元西ドイツ代表FWのゲルト・ミュラー氏(2021年に他界)である。
クリンスマンは小さい頃からゲルト・ミュラーに憧れていたそうで、当時バイエルンのセカンドチームでコーチを務めていた彼のもとを頻繁に訪れたという。そこで特別な得点感覚を持つトーマス・ミュラーという若手を推薦されたのだ。クリンスマンは18歳のアタッカーをトップチームに呼ぶために電話をかけたが、その場で応答はなく、後で留守電を聞いたミュラーは慌てて電話をかけ直したそうだ。
■オールウェイズ・ミュラー
翌2009-2010シーズンからレギュラーに定着したミュラーは、とにかく試合に出続けている。同シーズンに公式戦52試合に出場すると、昨季まで14シーズン連続で40試合以上もプレーしているのだ。そんな鉄人ぶりで記録を更新し続けるミュラーは、歴代の指揮官をも驚かせてきた。彼をレギュラーに抜擢した名将ルイ・ファン・ハールも、バイエルンを率いていた2010年にミュラーを大絶賛している。
「このチームのボスは、もう私ではない。トーマス・ミュラーさ」
同年に開催された南アフリカワールドカップで得点王に輝く活躍を見せた若武者は、シーズン開幕後も試合に出ずっぱりだった。だが、2010年9月のローマ戦でゴールを決めると、82分に交代。試合後、指揮官はミュラーが疲労の影響で自ら交代を申し出たことを明かし、前述の「ボス」発言をしたのだ。
そして、のちに語り継がれることになる名フレーズを発するのだった。「ミュラーはいつだってゴールを期待できる。常にチャンスに顔を出す」と前置きしたファン・ハールは、だから「Müller spielt immer」と明言。日本語に訳すと「ミュラーは常にプレーする」という言葉は、現代のバイエルンを象徴する名言の1つとなっている。
■同じパンツを420回着用!?
今回の「500勝」は数あるコレクションの1つに過ぎない。ブンデスリーガの「歴代最多優勝」、「最多勝利数」、「1シーズンのアシスト記録」など、ミュラーは並べだしたらキリがないほどの記録を打ち立ててきた。先日のボルシアMG戦の後には、500勝の記念ユニフォームを贈られたが、数字はそこまで気にしていないのかもしれない。
というのも、本人は記念のゴールや節目の試合について「長いことプレーしていると、自然と“記念”が増えるのさ。もちろん、嬉しいものだよ」と発言。これは昨年ブンデスリーガで300回目のゴール関与(141ゴール・159アシスト)を達成した際の言葉だが。その際には冗談も忘れていなかった。「次に他の記録に到達したら、その時は僕が同じ下着を420回も着用しているというデータも収集してね!」
常に試合に出続けるトーマス・ミュラー。同じパンツを履き続けながら、バイエルンで前人未到の「500勝」を達成した偉大なプレーヤーの、次の記録に注目したい。
(記事/Footmedia)
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