浦和の3カ年計画完遂へ活躍は不可欠 J1制覇、さらにW杯へ…江坂任、勝負の1年
サッカーキング2022年2月14日(月)19時54分
スーパー杯で2点目を決めた後、指揮官と喜ぶ江坂 [写真]=金田慎平
2019年末に「3年後のJ1優勝」を掲げ、チーム強化を図ってきた浦和レッズ。18日に開幕を迎える2022年シーズンはいよいよ勝負の年となる。
ご存じの通り、リカルド・ロドリゲス監督を招聘した昨季は天皇杯制覇を果たすところまでこぎつけた。が、J1は6位。2年連続でJ1王者に輝いた川崎フロンターレとの勝ち点差は29、総得点に至っては36もの差があった。いかにしてゴール数を増やし、勝てるチームへとレベルアップしていくのか。それが今季の最重要命題と言っていいだろう。
その動向を占ううえで、12日のFUJI FILM SUPER CUP 2022は大きな試金石と位置づけられた。徳島ヴォルティス時代のリカルド監督から指導を受けた秘蔵っ子である岩尾憲、馬渡和彰の新戦力2名がスタメンに入る中、注目の一戦がキックオフされた。
浦和はいきなり先手を取る。開始7分、右サイドでこぼれ球を拾い、深い位置まで持ち込んだ酒井宏樹のマイナスクロスに鋭く反応したのが、最前線に陣取っていた江坂任だった。脇坂泰斗と谷口彰悟の間のスペースに侵入すると、右足を巧みに合わせ、電光石火の先制弾を叩き込んだ。
「アキ(明本孝浩)が相手を釣ってくれて、任のスペースが空いた。合わせるのは難しかったと思うけど、うまく決めてくれた」と、お膳立てした酒井も絶賛したが、江坂らしい技術と得点感覚が凝縮された一撃と言っていい。
1点をリードした後、浦和は押し込まれる時間帯が長く続いたが、前線からのプレッシングと強固なブロックで応戦。江坂も献身的な守備で貢献し続ける。後半になってからリカルド監督の指示で4-5-1へシフトすると、背番号33は完全に左サイドへ移動。山根視来と家長昭博をケアすることになったが、粘り強い守りを披露。手強い2人に仕事らしい仕事をさせなかった。
そしてラスト9分というところで今一度、大仕事をやってのける。伊藤敦樹の縦パスに明本が反応。ペナルティエリア手前でタメを作った瞬間、迷うことなく前線へ飛び出した江坂はラストパスを受け、谷口をあざ笑うかのようにかわして左足を一閃。ダメ押し点をゲットしたのだ。
「明本がしっかり収めて時間を作ってくれたので、いいサポートをしてシュートフェイントを入れて相手の態勢を崩せました。そこからはイメージ通りにニアに打てました」と本人も満足そうに振り返ったが、まさに取るべき人が取って勝利を収めることに成功した。
もちろん酒井が「ここで勝って緩んでしまってはいけない」と言うように、あくまで前哨戦の白星ではあるものの、2021年に4回戦って3分1敗と煮え湯を飲まされ続けた王者の壁を破ったのは大きな意味がある。
さらに言うと、キャスパー・ユンカーや小泉佳穂といったアタッカー陣不在の中、江坂がキッチリ役割を果たして勝利へと導いたのも特筆すべき点。昨季はシーズン途中加入ということもあり、浦和では16試合出場5ゴールという数字に終わったが、江坂はもっともっと得点を奪える選手。リカルド監督にそう位置づけられているからこそ、最前線で起用されているのだ。
前述の通り、今季の浦和にとって総得点数の引き上げは頂点に立つためにクリアしなければいけない課題。江坂は絶対的キーマンの1人と言っても過言ではないだろう。これまでJ1では2018年と2020年の柏レイソルでの9ゴールがキャリアハイだったが、今季は2ケタが最低ノルマ。それを超えることで、日本代表定着、11月のカタールワールドカップへの滑り込みも見えてくるのではないか。
1月の日本代表国内組合宿では4-3-3のインサイドハーフでプレーし、いいアクセントになっていたが、仮にこのポジションで起用されるにしても、得点力のある選手は重宝される。
今の代表を見ると、守田英正と田中碧がファーストチョイスになっているが、彼らはボランチを本職とする選手。3月シリーズで最終予選突破を決め、本大会へ向かっていく中で、アタッカータイプの人材も求められてくるに違いない。
そこで久保建英や堂安律、旗手怜央といった海外組のライバルたちと伍していこうと思うなら、やはり圧倒的な数字が不可欠。2021年J1で前田大然が23ゴールを奪って森保一監督を振り向かせたように、江坂も同じようなアプローチが必要になってくるのだ。
「W杯に関しては、課題を一つひとつ越えることがそこにつながっていく。自分の持っているものを100%出せるように練習からしっかりやりたい」と、本人は地に足をつけて一歩一歩取り組んでいく構えだが、ここまで努力を重ねて来た遅咲きの男には、必ずチャンスがあるはずだ。
まずは19日の京都サンガF.C.戦で幕を開ける今季のJ1の戦いである。開幕からゴールを重ね、勝利請負人として躍動してくれれば、チーム全体が活気づく。アジアチャンピオンズリーグが4月に入ってくるため、序盤から過密日程を強いられるが、今の江坂なら十分に乗り切れるだろう。
30歳目前にして日に日に凄みを増すマルチアタッカーの一挙手一投足に注目しつつ、浦和のタイトル獲得の行方を興味深く見守りたい。
取材・文=元川悦子
ご存じの通り、リカルド・ロドリゲス監督を招聘した昨季は天皇杯制覇を果たすところまでこぎつけた。が、J1は6位。2年連続でJ1王者に輝いた川崎フロンターレとの勝ち点差は29、総得点に至っては36もの差があった。いかにしてゴール数を増やし、勝てるチームへとレベルアップしていくのか。それが今季の最重要命題と言っていいだろう。
その動向を占ううえで、12日のFUJI FILM SUPER CUP 2022は大きな試金石と位置づけられた。徳島ヴォルティス時代のリカルド監督から指導を受けた秘蔵っ子である岩尾憲、馬渡和彰の新戦力2名がスタメンに入る中、注目の一戦がキックオフされた。
浦和はいきなり先手を取る。開始7分、右サイドでこぼれ球を拾い、深い位置まで持ち込んだ酒井宏樹のマイナスクロスに鋭く反応したのが、最前線に陣取っていた江坂任だった。脇坂泰斗と谷口彰悟の間のスペースに侵入すると、右足を巧みに合わせ、電光石火の先制弾を叩き込んだ。
「アキ(明本孝浩)が相手を釣ってくれて、任のスペースが空いた。合わせるのは難しかったと思うけど、うまく決めてくれた」と、お膳立てした酒井も絶賛したが、江坂らしい技術と得点感覚が凝縮された一撃と言っていい。
1点をリードした後、浦和は押し込まれる時間帯が長く続いたが、前線からのプレッシングと強固なブロックで応戦。江坂も献身的な守備で貢献し続ける。後半になってからリカルド監督の指示で4-5-1へシフトすると、背番号33は完全に左サイドへ移動。山根視来と家長昭博をケアすることになったが、粘り強い守りを披露。手強い2人に仕事らしい仕事をさせなかった。
そしてラスト9分というところで今一度、大仕事をやってのける。伊藤敦樹の縦パスに明本が反応。ペナルティエリア手前でタメを作った瞬間、迷うことなく前線へ飛び出した江坂はラストパスを受け、谷口をあざ笑うかのようにかわして左足を一閃。ダメ押し点をゲットしたのだ。
「明本がしっかり収めて時間を作ってくれたので、いいサポートをしてシュートフェイントを入れて相手の態勢を崩せました。そこからはイメージ通りにニアに打てました」と本人も満足そうに振り返ったが、まさに取るべき人が取って勝利を収めることに成功した。
もちろん酒井が「ここで勝って緩んでしまってはいけない」と言うように、あくまで前哨戦の白星ではあるものの、2021年に4回戦って3分1敗と煮え湯を飲まされ続けた王者の壁を破ったのは大きな意味がある。
さらに言うと、キャスパー・ユンカーや小泉佳穂といったアタッカー陣不在の中、江坂がキッチリ役割を果たして勝利へと導いたのも特筆すべき点。昨季はシーズン途中加入ということもあり、浦和では16試合出場5ゴールという数字に終わったが、江坂はもっともっと得点を奪える選手。リカルド監督にそう位置づけられているからこそ、最前線で起用されているのだ。
前述の通り、今季の浦和にとって総得点数の引き上げは頂点に立つためにクリアしなければいけない課題。江坂は絶対的キーマンの1人と言っても過言ではないだろう。これまでJ1では2018年と2020年の柏レイソルでの9ゴールがキャリアハイだったが、今季は2ケタが最低ノルマ。それを超えることで、日本代表定着、11月のカタールワールドカップへの滑り込みも見えてくるのではないか。
1月の日本代表国内組合宿では4-3-3のインサイドハーフでプレーし、いいアクセントになっていたが、仮にこのポジションで起用されるにしても、得点力のある選手は重宝される。
今の代表を見ると、守田英正と田中碧がファーストチョイスになっているが、彼らはボランチを本職とする選手。3月シリーズで最終予選突破を決め、本大会へ向かっていく中で、アタッカータイプの人材も求められてくるに違いない。
そこで久保建英や堂安律、旗手怜央といった海外組のライバルたちと伍していこうと思うなら、やはり圧倒的な数字が不可欠。2021年J1で前田大然が23ゴールを奪って森保一監督を振り向かせたように、江坂も同じようなアプローチが必要になってくるのだ。
「W杯に関しては、課題を一つひとつ越えることがそこにつながっていく。自分の持っているものを100%出せるように練習からしっかりやりたい」と、本人は地に足をつけて一歩一歩取り組んでいく構えだが、ここまで努力を重ねて来た遅咲きの男には、必ずチャンスがあるはずだ。
まずは19日の京都サンガF.C.戦で幕を開ける今季のJ1の戦いである。開幕からゴールを重ね、勝利請負人として躍動してくれれば、チーム全体が活気づく。アジアチャンピオンズリーグが4月に入ってくるため、序盤から過密日程を強いられるが、今の江坂なら十分に乗り切れるだろう。
30歳目前にして日に日に凄みを増すマルチアタッカーの一挙手一投足に注目しつつ、浦和のタイトル獲得の行方を興味深く見守りたい。
取材・文=元川悦子
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