【連載解説】2021年F1新技術レギュレーション(3)風洞テストにハンディキャップ制度を導入
次世代F1マシン導入を前にし、2021年には昨年型のシャシーが持ち越され、開発が厳しく制限される。そのための規定を含め、技術レギュレーションにはいくつか重要な変更がなされた。その主な変更点を全4回にわたって紹介していく。第3回では、風洞テストにおけるハンディキャップ制についてまとめた。
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FIAはファクトリーでの空力テストにも、今季から制限を加える。わずかな変更に見えるかもしれないが、開発者たちは戦々恐々である。
最大の変更点は、チームごとに前年の成績に応じたハンディキャップを施すことだ。トップチームは下位チームよりも風洞の使用時間を減らされる(下図参照)。
風洞テストは、1週間あたりの実行回数自体が、去年の65回から今年は40回に減らされた。昨年のコンストラクターズ選手権5位のルノー(現アルピーヌ)が100%に当たる40回の使用を許され、それより上の順位のチームはより少なく、下の順位のチームはより多く風洞を使用できる。
チャンピオンチームのメルセデスは90%、つまり毎週36回しか使用できない。2020年にはその倍近い回数の風洞テストを行っていたことを思えば、その影響の大きさがわかるだろう。対照的に去年最下位だったウイリアムズは112.5%、つまり毎週45回のテストが可能だ。去年6位に終わったフェラーリは102.5%、毎週39回のテストで、今季と来季の空力開発を行える。
ただしこのハンディキャップは、シーズン中盤の6月に見直されることになっている。6月30日時点での選手権順位で、各チームに新たなハンデが加えられる。
そしてこの制度は、2022年にはさらに厳しくなる。チャンピオンチームのテスト回数は、70%まで減らされるのだ。FIAはこの措置によって、チーム間の性能差がさらに拮抗することを期待している。しかし今季から導入されるバジェットキャップ同様、その効果が出てくるには数シーズンを待つ必要があるだろう。
今季はマシンデザインのコピーにも、厳しい目が注がれる。具体的にはチームは今後、3Dキャプチャーやスキャナーの使用が禁止される。ライバルのマシンを撮る場合、許されるのはビデオや静止画撮影だけだ。
一方でチームは必要に応じて、デザインが自社開発されたことを証明しなければならない。ボディワークや前後ウイング、モノコックなどは「リスティングパーツ」と呼ばれ、チームが独自開発することが義務付けられている。もしそれらのパーツのデザインが他チームのものと酷似していた場合、初期デザインからの全ての開発データをFIAに提出することになる。
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