【ホンダ密着】F1バルセロナテスト2日目:トップと1秒差も、「今は走行距離を稼ぐ段階」。信頼性はまだ万全とは言えず
F1バルセロナテスト2日目。ホンダ製パワーユニットは2台合わせて224周を走り、この日もトラブルフリーだった。もはや不具合を出さずに走ることが当然になり、パドックの話題にも上がらなくなっている。まともにエンジンもかからなかったホンダ初年度2015年のことを思い返せば、そんな状態が普通になったことがある意味感慨深い。
とはいえ田辺豊治テクニカルディレクターにしてみれば、もはや信頼性は心配ないレベルだとはとても言えない。1年前も、テストはきわめて順調だった。しかし開幕戦のオーストラリアで、いきなりトラブルに遭遇した。
「走行距離だけでいえば、出るはずのないトラブルでした。ベンチテストでもオフテストでも、問題なかった。それがメルボルンでは出てしまった」
その苦い経験も含め、「壊れたり不具合が出たりという長年の失敗の積み重ねの中で、何が開発の際に抜けていたのか、徐々に理解できてきた」と、田辺テクニカルディレクターは言う。しかしそれでもなお、テストベンチで予測されるトラブルを再現することは、「今の我々の技術レベルでは、まだ不可能」だという。
「ギヤボックスやタイヤを装着して、実際の加減速の連続や縁石に乗ったりという条件を、完全に再現することはまだできませんから。それを何とか置き換えようとしてますが、どうしても漏れる部分がある。胸を張って、イエスとはいえない」
だとすると、『年間3基、1基辺り7戦』という厳しい使用制限をクリアするのは、依然としてかなり高いハードルなのだろうか。田辺テクニカルディレクターは「それがメーカーに課された目標ですから。達成したいと思ってます」と言う。しかしその一方で、レッドブル側にはそこまでのこだわりはないようだ。
クリスチャン・ホーナー代表は初日の囲み取材の際、信頼性は重要と言いつつ、「状況によってはペナルティのダメージを最小限に抑えることも可能だ」と、信頼性よりもパフォーマンス重視と取れる発言をしていた。実際、去年のレッドブルは、ルノー製パワーユニットのトラブルで後方スタートを余儀なくされた際も、上位入賞を果たしている。
しかし田辺テクニカルディレクターは、「そこは今後の見極めです」と、あくまで慎重だ。
「レッドブルにしてみれば去年までの経験から、いけると踏んでるのかもしれない。今年もそうだと確認できれば、そういう選択も出てくるでしょう」
「ただ別の見方をすれば、はたしてホンダは絞ればパワーが出るのか。どんなに頑張ってもパワーが出ないで壊れてしまえば、前提が崩れてしまいます。それだったらやっても意味がないし、低い出力でも走り続けた方がいい結果を出せる。そこは今後の見極めですね」
■トップとは1秒差も、ホンダは「現時点でタイム差に意味はない」と主張
テストは2日目を終えて、フェラーリがトップタイムを出し続けている。一方レッドブル・ホンダは、両日ともにマクラーレンやハースに先行されている。しかしその結果にしても、「今はまったく意味がない」と、田辺さんは言う。
「去年のPP(ポールポジション)が1分16秒173。それに比べれば、今は全然遅いでしょう。距離稼ぎの段階で、1分19秒、20秒で走ってますから。いわば鼻歌交じりの状態ですよ」
「そこから2秒、3秒縮めていった世界での、コンマ1秒あるいはコンマ01秒の違いは、とてつもなく大きい。今の時点での1秒差は、それから言えばほとんど意味がありません」
そこまで行った段階で、初めて本当の実力差が見えてくるということだ。来週のテスト2週目には、ホンダもレースを含めた本格的なグランプリ週末のシミュレーションを行う。はたしてその時点で、ホンダのパートナーであるレッドブルとトロロッソは、どんな光景を見せてくれているだろうか。
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