王者トヨタ、開幕戦ではポイント獲得すら困難?「どう見てもポルシェは速い」と小林可夢偉
WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスにエントリーするトヨタGAZOO Racingのドライバー兼チーム代表を務める小林可夢偉は、公式テスト“プロローグ”でのパフォーマンスを踏まえると、3月2日に決勝が行われる開幕戦『カタール1812km』ではポイントを獲得することに苦戦する可能性がある、と考えている。
2月26〜27日、開幕戦の舞台でもあるルサイル・インターナショナル・サーキットで行われた2日間のテストで2台のトヨタGR010ハイブリッドは苦戦を喫し、7号車に新加入したニック・デ・フリースがマークした1分41秒717というタイムが、トヨタのベストタイムとなった。
これはポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車ポルシェ963でフレデリック・マコウィッキがマークした全体ベストタイムから1.385秒遅れており、順位で見ても19台がエントリーしたハイパーカークラスのなかで、トヨタは13番手と15番手に終わっている。
■「昨年はなかった」グレイニングに苦戦
火曜夕方、プロローグの最終セッション後、可夢偉はトヨタの苦戦にショックを表明すると同時に、現在のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)に基づき、このカテゴリーで最大となる基本重量『1089kg』で走行していることが、その要因となっている可能性を示唆した。
「正直に言って、我々は本当に苦労しています」と可夢偉はSportscar365に対し語っている。
「信じられないことかもしれませんが、現在のパフォーマンスでは、ポイントを獲得することすら困難になるかもしれません」
「このサーキットでは重量が大きく影響しますし、ミディアムとハード、どちらのタイヤを使用してもグレイニング(ささくれ摩耗)が発生します。タイヤがまったく機能しておらず、この2日間きちんと走れませんでした。いろいろ試しましたが、解決できていません」
「重量のせいなのかは分かりませんが、軽いクルマと比べるとスピードには大きな違いがあります」
「僕らは昨年もここでテストをしましたが、みんなと一緒に走るのは初めてで、我々は一歩後退したような気がします。その(テストの)時も大変そうに見えましたが、いまはさらにタフになっているようです」
「それはロングランだけではなく、ニュータイヤでの1周のパフォーマンスという点でもそうです。我々のクルマはタイヤに比較的優しいですが、それはグレイニングの影響を受けないという意味ではありません。僕らは単に、タイヤを適切に使用できていないのです」
「僕(個人)は昨年のテストには参加していませんでしたが、我々はハードタイヤでのグレイニングはありませんでした。今回はハードでもそれが起きています。正確な理由は分かりません」
■「BoPについて議論する時期ではない」とテクニカル・ディレクター
トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパのテクニカル・ディレクター、デビッド・フルーリーも、現在のBoPのもとでポルシェより41kg重く、ハイパーカーの中で最も軽いプジョー9X8と比べると59kg重いトヨタの車重について、可夢偉の意見に同調している。
「一般的に、我々が目にしているのは、このコースでは重量が及ぼす影響が過小評価されているということだと思う」とフルーリー。
「それは、対処があまり簡単ではない、タイヤの作動ポイントに作用している。明らかに、傾向としては、重量がかなり大きな影響を与えているようだ」
「明らかに、前回(のテストで)はなかった現象が起きている。これは(昨年最終戦比でトヨタに追加された)9kgのことではなく、すべてのクルマで大きなばらつきがあるということことを、我々は言っているのだ」
「どういうわけか、おそらく(重量に対する反応が)リニアではない場合があると思う。我々はそれに対処しなければならない。それがレースの週末に向けた作業のポイントだ」
しかしながらフルーリーは、現時点からカタール1812kmのスタートまでの間にBoPが変更される可能性については否定し、「BoPについて議論する時期ではない。それぞれが持っているもので、最善を尽くそうとすることだ」と述べている。
「(イベント途中でBoPを変更するのは)良いことだとは思わない。 一般的に言えば、BoPを持ってここに入ったのなら、そこに固執する必要がある。いま変更することは、プロセスに沿ったものではない。我々はそのプロセスに固執する必要がある」
可夢偉はまた、決勝日にペースが不足していたとしても、信頼性と戦略というトヨタの伝統的な強みを活かして、なんとか順位を取り戻したいと考えているが、ポルシェはWECでの勝利に向け強力な立場にあると信じていると付け加えた。
「どう見ても、ポルシェは速いです」と可夢偉は言う。
「彼らはたくさんのクルマをエントリーしているので、間違いなく優勝候補の本命です! 彼らに挑戦するのは非常に困難でしょう」
「これまでの経験を活かして10時間をノーミスで完走できれば、ポイントを獲得してチームの強さを見せられると、僕は思います」
「まだ(レースウイークの)フリー走行が残っているので、諦めずにレースまでに何かを見つけていきたいと思います」
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