早速グランツーリスモ7を体感! 進化した映像とクラッシュのリアル感。レースに加え、うれしい原点回帰機能も
2022年3月4日、ついにプレイステーション5/4用ドライビングゲームソフトであるグランツーリスモシリーズの新作、『グランツーリスモ7』(以下GT7)が発売された。GT7についてはソフト内のごく一部に関わるテキストコンテンツに協力したこともあって、発売が楽しみで楽しみで仕方がなかった。
そんな縁もあって発売前にレビューをするためプレイステーション5(以下PS5)を含む機材を借用することができ、丸1週間GT7漬けになっていたのだが、結論から先に言えば、期待していただけの進化を遂げていて驚くとともに満足して、さらにこの先が楽しみになった。
前作『グランツーリスモSPORT(以下GTS)』は、FIA公認のデジタルモータースポーツ世界選手権、FIAグランツーリスモ選手権のプラットフォームとなり、2018年に初代シリーズチャンピオンとなったイゴール・フラガ(ブラジル)以降、ミカエル・ヒザル(ドイツ)、宮園拓真(日本)、昨年のヴァレリオ・ガロ(イタリア)と、4人の世界チャンピオンが生まれているのはご存じのとおり。
このGTSの後継がGT7だが、アプリケーションの内容はGTSとはいささか異なっている。GTSは、ドライビングシミュレーター機能をオンラインでつなぎ、仮想空間のなかで複数のプレイヤーがレースをする『スポーツモード』を中心に構成されたソフトだった。
これに対しGT7は、もちろんGTS同様オンラインでレースをするスポーツモードも備えながら、主軸はソフト内で与えられる課題=メニューブックに従って、資金を集めながら様々なクルマを入手しコレクションを増やしていく流れに置かれている。
その過程で闘うレースで敵車を操るのは一般的なアーケードゲーム同様、AIである。ある意味、レースゲームとしての原点回帰といえるのだろう。
元々『リアルドライビングシミュレーター』と名乗っていたグランツーリスモだが、GT7は『カーライフシミュレーター』と位置づけられており、ドライビングのみでなく、自動車の美しさを味わい、自動車の歴史を知り、自動車に関わる音楽を楽しんで、自動車が単なる移動の手段ではなく人間の生活を広げて豊かにするためのツールであることを気づかせてくれる内容になっている。
日頃レーシングカーにどっぷり浸かって暮らしている僕自身、GT7を通していまさらだけれども「ああ、自動車っていいなあ」と感じ入ったものだった。
だが感服したのはそれだけではない。モータースポーツファンにとって重要なシミュレーター機能も大幅に進化していたのだ。
まず最初に驚いたのは、PS5のグラフィック性能向上もあるのだろうが、GTSに比較してコースのアップダウンの表現が進歩したことだった。スパ・フランコルシャンのオー・ルージュからラディオンに向けての高速上り坂を駆け抜けると縦方向にGがかかっているかのように錯覚するほどだ。
ウエットコンディションの水煙や水しぶきもリアルだ。水煙の中スリップストリームに入って前方がよく見えない状態で追い抜きをかけるときのあの緊張感をそのまま味わえる。ダートで砂煙に包まれたときなど、砂を吸い込みたくないあまりに思わず息を止めたりもした。
さらに驚いたのはステアリングフィールの進化である。ターマック、グラベルの違いは当然、ドライ、ウエット、ハーフウエットはもちろん、縁石を含む路面コンディションの微妙な違いがステアリングから伝わってくる。アンダーステアが出てステアリングがフッと軽くなる、あのイヤな感じの表現も見事だ。リアリティを増した視野に合わせてステアリングからリアルな感触が返ってきて、仮想空間への没入感はハンパないレベルになる。
GTSでは、限界当たりでときどき不自然な動きをするのが気になっていたが、GT7ではそれを感じなかった。思いどおりのラインをトレースできるし、ミスをすればきちんとミスに応じた動きをしたので、自動車の動きを司る物理エンジンもさらに進化しているものと思われる。
またGT7では、レース中に天候が変化して路面コンディションも変わる。ただ単にランダムな変動ではなく、驚くべきことにそのコースがある地方の気象データを基にしているのだとか。どうりで前回のレースではドライだったスパのレースで、途中から雨が降ってスリックタイヤのまま走ってえらく怖い思いをしたわけだ。
そういえば長いル・マンのサルト・サーキットでは、ユノディエールあたりで雨が降り始め、ホームストレート側ではドライコンディションだしタイヤをどうしようかと迷っている間にレインタイヤに交換した敵車にあっけなくやっつけられたっけか。
GTSでは、AIの敵車は結構あきらめが早くて、一旦オーバーテイクしてしまえばあまり気にしないで済んだが、GT7のAI敵車は結構賢くなっていて、スキを見せると抜き返してくるので手強い相手になっているのもいい感じだ。残念ながらタイミングが合わずオンラインでの対戦を経験することはできなかったが、それは今後のお楽しみと言うことにしておこう。AI相手でも十分レースを楽しみ十分悔しい思いができた。
感心したのは、クラッシュしたときの破損表現が強化された点である。家庭用ゲーム機におけるバーチャルレースの課題は、乱暴な運転をしてクルマを壊しても走り続けられるため、ラフプレーを含むいわゆる『ゲーム走り』が横行する点にある。
以前からグランツーリスモは、クルマを壊すような運転は良くないとさまざまな場面で警告を表示し破損表現もしてきたが、GT7では壊れた瞬間に破片が飛び散るなど、これまでよりクルマを壊したときの“精神的痛さ”の表現が強化されている。家庭用ドライビングシミュレーターにはとても大事なことだと思う。
結局、機材を借用してから1週間、とにかく先を急ぐ形で通算18時間弱にわたりGT7に没頭し、ソフト内走行距離は3127kmに及んでようやくメニューブックをすべてクリアしてエンディングにたどり着いた。しかし、このエンディングはGT7のチュートリアルに過ぎず、ここからGT7本来の世界が始まると位置づけられている。
実際、ポルシェ917だとかシャパラル2JだとかメルセデスCLK-LMだとか、乗りたいクルマにはまだたどりつけていない。GT7の旅は始まったばかりらしいのだ。モータースポーツを、そして自動車を愛する人々には絶対の自信を持ってお勧めしたい新作である。
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