速くて差がない超接近模様のスーパーGT500クラス。テスト初日の手応えと3メーカーの雰囲気
スーパーGTの2018年シーズン開幕を見据えた岡山公式テスト、初日はWAKO’S 4CR LC500がそれまでの1分18秒126のコースレコードタイムを上回る1分18秒017をマークしてトップを奪った。そのトップタイムとともに注目となったのが、1秒以内に13台という超接近戦となったタイム差だ。
残りの2台に関してはロングラン重視でアタックを行っていなかったようで、この2台がニュータイヤでアタックをしていれば、GT500クラスの全15台が1秒以内に入っていた可能性が高い。
トップタイムをマークしたWAKO’S LC500の大嶋和也は「最後のアタックでは少しミスもしているので、あとコンマ2秒は詰められたと思います。今日はずっとひとりで走行していたので(チームメイトでルーキーのフェリックス・ローゼンクビストがフォーミュラEの第6戦ウルグアイ戦出場のため)、いい機会なので普段やらないような、いろいろセットアップでも試すことができてポジティブな印象を受けることができた。最後は3周連続でアタックになりましたが、最初から決めていたわけではなく、時間があったからアタックし続けただけです」と話すように、言わば余裕のトップタイム。
もちろん、開幕戦に向けてのタイヤ評価がメインのこの事前テストだけに、各チームのメニューは大きく異なっており、初日のタイムだけで勢力図を語るのは時期尚早だ。だが、それでも今年のWAKO’S LC500陣営の手応えには、目を見張るものがある。
チームメイトのローゼンクビストの評価も極めて高い。脇阪寿一監督が話す。
「おそらく、スーパーGTのルーキーとして開幕前に走行機会が一番少ないドライバーなんじゃないかな。それくらい、フェリックスはテストに参加した日数が少ない(実質、2日半程度だという)。それでもその少ない時間の中でこちらの話をよく聞くし、理解も早くて賢い。人間性として素晴らしいし、コース上のパフォーマンスもまったく問題ない。スーパーなドライバーだよね」と、寿一監督も手放しで評価する。
「去年はチャンピオン獲得にあと一歩、足りなかった。今年はそこを埋めていくだけですが、そこをいろいろな方向からアプローチしています。去年は2位、3位が多くて優勝がなかった。そこのあと一歩を詰めることができれば、タイトルも見えてくると思います」と寿一監督。
今年はレクサス陣営内では6台中4台のチームが新コンビとなり、レクサス陣営内での戦いが注目を浴びる。2018年型のLC500は昨年以上に現場エンジニアたちはエンジンパフォーマンスを高く評価する声が多く、このテスト初日でも上位をレクサス陣営が固まって占めるタイミングが多く、まだまだ3メーカーの中で総合力が頭ひとつ抜き出ている印象があるが、その差は確実に接近していそうだ。
そのレクサス陣営としては、ホンダNSXの進化を恐れる声が多い。初日にトップタイムをマークした大嶋も、「今年のLC500も度ラバビリティが良くなって安定性がアップする方向で進化していますが、ライバルも速いですよね。GT-Rはまだよく分からないですけど、NSXは速い前回の鈴鹿でもそうでしたが、この岡山でも速い」と警戒する。
一方のNSX陣営は、実はあまり雰囲気がよくない。「クルマのセットアップの幅を広げる目的で2018年型のNSXの開発をしてきましたが、まだまだピーキーな面が出ていまして」と、ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーも眉間にしわを寄せる。
ニッサン陣営としても、MOTUL AUTECH GT-Rのニスモ鈴木豊監督が「去年の今頃は下の方の順位に固まっていましたが、それに比べれば、滞りなく開発が進められています」と話すように、9番手の順位以上に手応えを感じているようだ。
当然、昨年のチャンピオンであるLC500をキャッチアップするために、GT-RもNSXもさまざまな開発を施してパフォーマンス向上を狙ってきており、その効果が出ているはず。その進化幅が公式テスト初日ながら、13台が1秒差に入るという展開になった要因のひとつと考えられる。クラス1規定2年目を迎える2018年のスーパーGT500クラス。全車が揃った初めての公式テスト初日から、今年の戦いの激しさを予感させた。
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