個々の長所が勝負のカギ…韓国戦のキーマンは“スピードスター”伊東純也
サッカーキング2021年3月25日(木)14時0分
「E-1で負けたことは印象に残っていますし、リベンジしたい気持ちはあります。やっぱり韓国は球際で激しく来る。そこで負けないのはもちろんだけど、個々が自分の長所をしっかり出せば勝てる。そこが大事だと思います」
森保ジャパン屈指のスピードスター・伊東純也がこう述懐する通り、日韓戦には苦い思い出がある。
自身のA代表デビューの大会となった2017年12月のEAFF E-1サッカー選手権。初戦・北朝鮮戦に途中出場して初キャップを飾り、続く中国戦でスタメンの座を奪取。評価をグングン上げていた矢先に直面したのが、韓国という高い壁だった。日本は小林悠の開始早々のゴールで先制したが、そこから立て続けに失点を食らう。終わってみれば1-4の完敗。伊東自身も東京・味の素スタジアムの寒さがひと際、身に染みたに違いない。
「ずっと相手ペースで攻撃されて、ロングボールが多くなるという、韓国の得意な形になってしまったと思います」と本人は悔しさをにじませた。この時に痛感した「相手ペースに持ち込ませてはいけない」という教訓が今に生きているからこそ、彼は「長所を出せば勝てる」と発言したのだろう。自身2度目となる日韓戦では自分たちがアクションを起こし、相手を凌駕する戦いが必要になる。
そこで伊東に託されるのは、まず右サイドで機動力と推進力を発揮し、脅威を与えること。今回、相手左サイドバック(SB)に誰が入るかは未知数ではあるが、これまでも日韓戦ではパク・チュホやキム・ジンスら打開力ある面々に主導権を握られ、苦しんできた。
伊東は出場していないが、2019年のE-1でもキム・ジンスからのクロスをファン・インボムに決められ0-1で苦杯。森保一監督の解任論も浮上した。この二の舞を避けるためにも、やはりサイドを制圧することは勝利への必須条件になる。伊東にかかる期待は非常に大きいのだ。
現在の彼はそこだけにとどまらない。ベルギー3シーズン目の今季はすでに10得点8アシストを記録。ゴールに直結する仕事ができるようになっている。
「今のチームではサイドに張るというよりは、SBが高い位置を取って自分は中の方にいるので、ドリブルで行くよりもコンビネーションだったり、逆サイドのクロスに入ったりすることが多くなった。ゴールに近いところでプレーすることで得点も増えたと思います」
そういう形を日本代表でも増やしていけば、伊東自身がゴールを量産することも十分可能だ。今回は右SBを山根視来が務めると見られるだけに、攻撃的な彼が高い位置を取って、伊東が中に絞り、前線に突き進んでいく形も出しやすい。
さらに言うと、左サイドに南野拓実や古橋享梧といった推進力あるタイプが陣取れば、ヘンクの時のようにゴール前へ飛び出し、フィニッシュに関わる場面も増える。日常的にクラブでやっていることをストレートに還元できれば、“勝利請負人”として光る働きを見せられるのではないか。
それだけのポテンシャルが今の伊東にはある。シント・トロイデンの立石敬之CEOが今季開幕前に「ベルギーでプレーする日本人選手で最も評価が高いのが彼。このまま行けば、一段階上のステップへ行くこともあり得る」と語ったが、今季のコンスタントな活躍ぶりで評価はさらに上がったはず。今もなお、日に日に存在価値を高めており、今夏の移籍市場が楽しみになる一方だ。
コロナ禍で欧州クラブの経営状態が芳しくなく、移籍に対して慎重になりがちではあるが、「10得点10アシスト」という目標に間もなく到達しそうな28歳の韋駄天が今夏、ビッグクラブへ移籍する可能性は少なくない。それに見合った能力があることを日韓戦で示し、大激戦区の日本代表右サイドで絶対的地位を確保すれば、未来は明るいはずだ。
「もちろんより高いレベルでやりたいとは思っていますけど、目の前のところで結果を出していくしかない。そこでしっかりできれば上も見えてくる。今回の代表には新しい選手も入りましたし、負けないように頑張りたい」と口下手な男の発言は普段通りだが、ピッチ上での彼は誰にも負けないほど雄弁だ。爆発的スピードとゴール前での決定力を最大限生かして、結果を残すこと。日本を勝利へと導くこと。それが背番号14に託された至上命題だ。
ホームでの日韓戦で最後に勝利したのは、2011年8月の札幌ドームでの一戦。10年前は香川真司の2発と本田圭佑の1発で3-0と圧勝している。この時の香川や本田のように結果を残せば、伊東純也の名は確実に歴史に残る。これまで以上に貪欲に泥臭く、ゴールに突き進んでもらいたい。
文=元川悦子
森保ジャパン屈指のスピードスター・伊東純也がこう述懐する通り、日韓戦には苦い思い出がある。
自身のA代表デビューの大会となった2017年12月のEAFF E-1サッカー選手権。初戦・北朝鮮戦に途中出場して初キャップを飾り、続く中国戦でスタメンの座を奪取。評価をグングン上げていた矢先に直面したのが、韓国という高い壁だった。日本は小林悠の開始早々のゴールで先制したが、そこから立て続けに失点を食らう。終わってみれば1-4の完敗。伊東自身も東京・味の素スタジアムの寒さがひと際、身に染みたに違いない。
「ずっと相手ペースで攻撃されて、ロングボールが多くなるという、韓国の得意な形になってしまったと思います」と本人は悔しさをにじませた。この時に痛感した「相手ペースに持ち込ませてはいけない」という教訓が今に生きているからこそ、彼は「長所を出せば勝てる」と発言したのだろう。自身2度目となる日韓戦では自分たちがアクションを起こし、相手を凌駕する戦いが必要になる。
そこで伊東に託されるのは、まず右サイドで機動力と推進力を発揮し、脅威を与えること。今回、相手左サイドバック(SB)に誰が入るかは未知数ではあるが、これまでも日韓戦ではパク・チュホやキム・ジンスら打開力ある面々に主導権を握られ、苦しんできた。
伊東は出場していないが、2019年のE-1でもキム・ジンスからのクロスをファン・インボムに決められ0-1で苦杯。森保一監督の解任論も浮上した。この二の舞を避けるためにも、やはりサイドを制圧することは勝利への必須条件になる。伊東にかかる期待は非常に大きいのだ。
現在の彼はそこだけにとどまらない。ベルギー3シーズン目の今季はすでに10得点8アシストを記録。ゴールに直結する仕事ができるようになっている。
「今のチームではサイドに張るというよりは、SBが高い位置を取って自分は中の方にいるので、ドリブルで行くよりもコンビネーションだったり、逆サイドのクロスに入ったりすることが多くなった。ゴールに近いところでプレーすることで得点も増えたと思います」
そういう形を日本代表でも増やしていけば、伊東自身がゴールを量産することも十分可能だ。今回は右SBを山根視来が務めると見られるだけに、攻撃的な彼が高い位置を取って、伊東が中に絞り、前線に突き進んでいく形も出しやすい。
さらに言うと、左サイドに南野拓実や古橋享梧といった推進力あるタイプが陣取れば、ヘンクの時のようにゴール前へ飛び出し、フィニッシュに関わる場面も増える。日常的にクラブでやっていることをストレートに還元できれば、“勝利請負人”として光る働きを見せられるのではないか。
それだけのポテンシャルが今の伊東にはある。シント・トロイデンの立石敬之CEOが今季開幕前に「ベルギーでプレーする日本人選手で最も評価が高いのが彼。このまま行けば、一段階上のステップへ行くこともあり得る」と語ったが、今季のコンスタントな活躍ぶりで評価はさらに上がったはず。今もなお、日に日に存在価値を高めており、今夏の移籍市場が楽しみになる一方だ。
コロナ禍で欧州クラブの経営状態が芳しくなく、移籍に対して慎重になりがちではあるが、「10得点10アシスト」という目標に間もなく到達しそうな28歳の韋駄天が今夏、ビッグクラブへ移籍する可能性は少なくない。それに見合った能力があることを日韓戦で示し、大激戦区の日本代表右サイドで絶対的地位を確保すれば、未来は明るいはずだ。
「もちろんより高いレベルでやりたいとは思っていますけど、目の前のところで結果を出していくしかない。そこでしっかりできれば上も見えてくる。今回の代表には新しい選手も入りましたし、負けないように頑張りたい」と口下手な男の発言は普段通りだが、ピッチ上での彼は誰にも負けないほど雄弁だ。爆発的スピードとゴール前での決定力を最大限生かして、結果を残すこと。日本を勝利へと導くこと。それが背番号14に託された至上命題だ。
ホームでの日韓戦で最後に勝利したのは、2011年8月の札幌ドームでの一戦。10年前は香川真司の2発と本田圭佑の1発で3-0と圧勝している。この時の香川や本田のように結果を残せば、伊東純也の名は確実に歴史に残る。これまで以上に貪欲に泥臭く、ゴールに突き進んでもらいたい。
文=元川悦子
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