WRC:トヨタ育成の勝田貴元をラリー・スウェーデンWRC2初優勝に導いた“鬼教官”とペースノート
2018年2月のWRC世界ラリー選手権第2戦スウェーデンでWRC2クラスに参戦し、初のWRC2クラス優勝を遂げたトヨタの若手育成ドライバー、勝田貴元。この結果の裏側にあった知られざる努力を、本人に聞いた。
──WRC2初優勝、おめでとうございます。それにしても、レース出身の貴元選手の初勝利がグラベルラリーならまだ分かるのですが、スノーラリーで実現するとは意外でした。
勝田:グラベルもスノーも速く走らせるための考え方は同じで、違いは路面のミューくらい。それに対してどうアジャストするかだけです。
基本的にはレースをやっていたときに学んだことで、データロガーを見て、どこが遅いからどう修正するといった作業の応用ですが、ラリーでは路面の急激な変化など何が起こるか分からない部分もあるので、マージンはとります。コーナーの入口からある程度横に向けていき、途中で何かあっても対処できるようにするなどですね。
──レース時代に学んだことがラリーでも生きていると。
勝田:はい。サーキットではコーナーでできるだけ早くアクセルを踏めるように走るのがセオリー。それをずっと学んできたので、ラリーでもアクセルを無理やり踏むのではなく、踏めるような状態にクルマを持っていくように走っています。それはレースでずっとやってきたこと。ラリーでは路面のミューが低いぶんだけ手前から向きを変えていき、アクセルを踏むタイミングを早めるような走り方をしています。
レース時代はTDP、トムスと、走る環境に恵まれ、トムスでは国内トップのエンジニアさんと仕事をさせてもらいましたし、先輩ドライバーや関谷(正徳)さんにはデータをどう読むかなど教えてもらいました。クルマに乗っていない時間にどれだけイメージを作れるかが重要で、それを実際に乗ったときに当て込んで試す。そこが、ラリーを専門でやってきたドライバーとの最も大きな違いだと思います。
──レースとラリーではアプローチが異なる部分もあるのでは?
勝田:テストなど、どのようなコースか理解できている道では、ターマックでもグラベルでも最初から速く走ることができました。『コーナーはこうで、路面のミューはこれくらい』とすぐに覚えてしまいますからね。
その路面ミューに合わせた、サーキット的なドライビングで走るとタイムは非常にいいのですが、実際のラリーではそのような走りはなかなかできない。理由のひとつはペースノート。自分には経験がまったくなかったので、最初は全然うまく作れなかった。
あとは、先を読む力ですね。たとえば、コーナーの先がこうなっていたらどう対処すべきかなど、とにかく引き出しが少なかった。それなのに攻めてしまい、小さなミスを犯したときに対処できず、クラッシュすることが多かったんです。
──まわりにはトミ・マキネン、コーチのヨーニ・アンプヤ、ミッコ・ヒルボネンなど最高の先生がそろっている。
勝田:トミとヨーニには「速さに関してはまったく問題ない。充分すぎるほどのスピードがあることは分かっているから、とにかくいまは経験を積め。ラリー本番でそのスピードはまだ無理だ」と常々言われていました。ペースノートと、経験値を高めていくことが何よりも重要なのだと。
それをアタマでは分かっていても、最初は我慢できなかったり、どう抑えればよいのかを分からなかったりで、多くの失敗をしました。
──“鬼教官”と怖れられているヨーニさんは非常に厳しくも、親身になって生徒を育てようとする熱血漢のイメージ。日本のレース界でたとえるなら、誰に近い存在ですか?
勝田:トムスの(山田)淳さん(エンジニア)ですね。怒られるかな? いや、喜んでくれると思いますけどね(笑)。あとは、カート時代に教えていただいた「ぶるーと」の高橋和則さんも同じようなタイプの方で、こう言っては何ですが、昔からこわい先生にばかりに師事してきました(笑)。
でも、みなさんのおかげで天狗になることなく、常に上を目指して改善を続けることができているのだと思います。
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勝田の初優勝を支えた「6段階から10段階へ基本スケールを変更した」というペースノートの進化や、「第三者の目線から自分を見ることができるようになった」という自身の変化など、本誌だけに語ったインタビュー記事全文は、現在発売中のauto sport No.1477をチェック!
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