悔しさをバネに自ら決めたセレッソ入団…17歳の逸材レフティー・西川潤が歩む未来
サッカーキング2019年3月29日(金)7時0分
[写真]=Getty Images
日韓ワールドカップイヤーの2002年に生まれた逸材レフティーだ。3月5日、セレッソ大阪はFW西川潤(桐光学園高)の2020年からの加入内定を発表。早くも特別強化指定選手としてトップチームに登録された西川は、3月13日に行われたYBCルヴァンカップ第2節・ヴィッセル神戸戦の56分に交代出場し、公式戦デビューを飾った。
一際大きな期待とともに、Jリーガーとしてのスタートを切った彼だが、2018年はどん底に突き落とされるような形で終わっている。横浜F・マリノスジュニアユース、U-15日本代表のエースだった西川は2017年春に「高体連の泥臭さだったり、戦う姿勢だったりというのは自分に足りないところだった」という理由で神奈川の名門・桐光学園へ進学。入学当初から、かつて中村俊輔(現ジュビロ磐田)も背負った『10番』を与えられた。
“5人抜きドリブル”で全国区へ
1年目は全国舞台に出場することができなかったが、明らかに凄みを増した高校2年時に大ブレイク。180cmの長身とスピード、テクニックに力強さも加えたレフティーは、インターハイの6試合で計6得点を叩き出し、桐光学園を初の準優勝に導いた。特に富山第一との準々決勝では圧巻の“5人抜きドリブル”からゴールを決めるなどハットトリックを達成。「今までで一番気持ち良いゴールでしたし、一番思い通りにいったゴールでした」という1プレーによってその名を全国の高校サッカーファンに知らしめた。
高校生相手の1対1の勝負ではほとんど止められず、自らボールを奪い切って独走するシーンも。Jクラブの争奪戦も過熱し、昨年の9月上旬には早くも正式オファーが届いていたほどだった。そして、U-16日本代表の10番を背負って出場したAFC U-16選手権マレーシア2018では、チームのU-17ワールドカップ出場権獲得、アジア制覇に貢献。タジキスタンとの決勝戦で決勝ゴールを決めた西川は大会MVPにも選出された。
悔し涙を流した大晦日の敗戦
1学年上のJ内定選手たち以上の注目を集めて迎えた第97回全国高校サッカー選手権大会。西川は、現日本代表のエースFW大迫勇也が鹿児島城西時代に記録した1大会の得点記録・10得点(首都圏開催移行後)の更新、日本一を目標に掲げて大会に臨んだ。だが、1回戦最注目カードとなった大津戦で0-5と大敗。湘南ベルマーレ内定のDF福島隼斗やU-18日本代表DF吉村仁志を個人技でぶち抜いてみせるなど会場を沸かせた西川だったが、得意の左足シュートをことごとく福島に止められて無得点のまま選手権を去ることになった。
夢が打ち砕かれた日の夜について西川は「すぐには前を向けないです。ホテルに一泊して。チームメートと過ごす時間があったけれど、すぐに切り替えることができなかった。自分が描いていた通りの結果にはならなかったので凄く責任を感じました」と振り返る。結果を残し続けてきた2018年の大晦日は悔し涙を流す日に。それでも、2週間後からドイツ・レヴァークーゼンで約10日間の練習参加を行い、「日本とは比べ物にならないくらい強かった」相手に日々全力で戦い、心を整理して帰国した。
進化のために決めた高校生Jリーガーの道
彼が優れている点は「しっかり足元を見ることも大事かなと思っている」という謙虚さと、成長への強い欲求の両方を持ち合わせていることだ。桐光学園の鈴木勝大監督も認めていたが、チーム内では抜きん出た力を持ちながら、トレーニング、試合で誰よりも一生懸命。桐光学園で自分に足りなかった部分を積み上げてきた西川は、悔しすぎる敗戦や先を行く同世代(久保建英や斉藤光毅)への反骨心を力に、また人一倍努力を重ねてレベルアップをしようとしている。
進路について「現実的に自分の実力とか見て判断していきたい」と語っていた西川は、2月上旬に練習参加したセレッソ大阪への加入を決断。自分の成長する場をワールドカップでのプレー経験を持つ柿谷曜一朗や清武弘嗣も在籍する強豪クラブに決めた。
今年、西川は日本高校選抜、U-20日本代表に選出されており、5月に開幕するU-20ワールドカップメンバーに“飛び級”で招集される可能性が高い。加えて今秋にはU-17ワールドカップにもエースとして臨むことになっている。桐光学園での日本一への再挑戦を含めて多忙な高校生は、より進化するためにいち早く進路を決め、高校生Jリーガーとしてのスタートを切った。
香川、南野超えのデビューから世界へ
ヴィッセル神戸戦は、セレッソ大阪出身のMF香川真司やFW南野拓実を上回る17歳0か月でのデビューだった。「潤、潤、西川潤!」「潤、潤、西川潤!」のコールに後押しされる中で、持ち味であるスピードに乗ったドリブルや左足の柔らかいクロスを披露。カウンターから1人で持ち上がって左足を振り抜くシーンもあった。68分には敵陣右サイドでセカンドボールを拾うと、ワンツーでペナルティーエリアに侵入。GKのファインセーブに阻まれたものの、角度の無い位置から強烈な右足シュートを打ち込み、サポーターを大いに沸かせた。
セレッソ大阪のユニフォームを初めてまとった公式戦で堂々たるプレー。それでも慢心することは全くない。4月2週目頃まで、セレッソ大阪に帯同し続ける予定で、日々のトレーニングからプロ選手に負けないくらいの貪欲な姿勢で進化しようとするはずだ。桐光学園の鈴木監督や周囲はここから逆転して2020年の東京オリンピックに出場することを期待している(西川は2024年のパリ五輪の出場資格も持つ)。今年、選手権の敗戦以上に悔しい思いをする可能性もあるが、そのたびに成長への力に変えて上へ。目の前の目標を一つ一つクリアしながら、Jリーグや世界で活躍するプレーヤーになる。
取材・文=吉田太郎
一際大きな期待とともに、Jリーガーとしてのスタートを切った彼だが、2018年はどん底に突き落とされるような形で終わっている。横浜F・マリノスジュニアユース、U-15日本代表のエースだった西川は2017年春に「高体連の泥臭さだったり、戦う姿勢だったりというのは自分に足りないところだった」という理由で神奈川の名門・桐光学園へ進学。入学当初から、かつて中村俊輔(現ジュビロ磐田)も背負った『10番』を与えられた。
“5人抜きドリブル”で全国区へ
1年目は全国舞台に出場することができなかったが、明らかに凄みを増した高校2年時に大ブレイク。180cmの長身とスピード、テクニックに力強さも加えたレフティーは、インターハイの6試合で計6得点を叩き出し、桐光学園を初の準優勝に導いた。特に富山第一との準々決勝では圧巻の“5人抜きドリブル”からゴールを決めるなどハットトリックを達成。「今までで一番気持ち良いゴールでしたし、一番思い通りにいったゴールでした」という1プレーによってその名を全国の高校サッカーファンに知らしめた。
高校生相手の1対1の勝負ではほとんど止められず、自らボールを奪い切って独走するシーンも。Jクラブの争奪戦も過熱し、昨年の9月上旬には早くも正式オファーが届いていたほどだった。そして、U-16日本代表の10番を背負って出場したAFC U-16選手権マレーシア2018では、チームのU-17ワールドカップ出場権獲得、アジア制覇に貢献。タジキスタンとの決勝戦で決勝ゴールを決めた西川は大会MVPにも選出された。
悔し涙を流した大晦日の敗戦
1学年上のJ内定選手たち以上の注目を集めて迎えた第97回全国高校サッカー選手権大会。西川は、現日本代表のエースFW大迫勇也が鹿児島城西時代に記録した1大会の得点記録・10得点(首都圏開催移行後)の更新、日本一を目標に掲げて大会に臨んだ。だが、1回戦最注目カードとなった大津戦で0-5と大敗。湘南ベルマーレ内定のDF福島隼斗やU-18日本代表DF吉村仁志を個人技でぶち抜いてみせるなど会場を沸かせた西川だったが、得意の左足シュートをことごとく福島に止められて無得点のまま選手権を去ることになった。
夢が打ち砕かれた日の夜について西川は「すぐには前を向けないです。ホテルに一泊して。チームメートと過ごす時間があったけれど、すぐに切り替えることができなかった。自分が描いていた通りの結果にはならなかったので凄く責任を感じました」と振り返る。結果を残し続けてきた2018年の大晦日は悔し涙を流す日に。それでも、2週間後からドイツ・レヴァークーゼンで約10日間の練習参加を行い、「日本とは比べ物にならないくらい強かった」相手に日々全力で戦い、心を整理して帰国した。
進化のために決めた高校生Jリーガーの道
彼が優れている点は「しっかり足元を見ることも大事かなと思っている」という謙虚さと、成長への強い欲求の両方を持ち合わせていることだ。桐光学園の鈴木勝大監督も認めていたが、チーム内では抜きん出た力を持ちながら、トレーニング、試合で誰よりも一生懸命。桐光学園で自分に足りなかった部分を積み上げてきた西川は、悔しすぎる敗戦や先を行く同世代(久保建英や斉藤光毅)への反骨心を力に、また人一倍努力を重ねてレベルアップをしようとしている。
進路について「現実的に自分の実力とか見て判断していきたい」と語っていた西川は、2月上旬に練習参加したセレッソ大阪への加入を決断。自分の成長する場をワールドカップでのプレー経験を持つ柿谷曜一朗や清武弘嗣も在籍する強豪クラブに決めた。
今年、西川は日本高校選抜、U-20日本代表に選出されており、5月に開幕するU-20ワールドカップメンバーに“飛び級”で招集される可能性が高い。加えて今秋にはU-17ワールドカップにもエースとして臨むことになっている。桐光学園での日本一への再挑戦を含めて多忙な高校生は、より進化するためにいち早く進路を決め、高校生Jリーガーとしてのスタートを切った。
香川、南野超えのデビューから世界へ
ヴィッセル神戸戦は、セレッソ大阪出身のMF香川真司やFW南野拓実を上回る17歳0か月でのデビューだった。「潤、潤、西川潤!」「潤、潤、西川潤!」のコールに後押しされる中で、持ち味であるスピードに乗ったドリブルや左足の柔らかいクロスを披露。カウンターから1人で持ち上がって左足を振り抜くシーンもあった。68分には敵陣右サイドでセカンドボールを拾うと、ワンツーでペナルティーエリアに侵入。GKのファインセーブに阻まれたものの、角度の無い位置から強烈な右足シュートを打ち込み、サポーターを大いに沸かせた。
セレッソ大阪のユニフォームを初めてまとった公式戦で堂々たるプレー。それでも慢心することは全くない。4月2週目頃まで、セレッソ大阪に帯同し続ける予定で、日々のトレーニングからプロ選手に負けないくらいの貪欲な姿勢で進化しようとするはずだ。桐光学園の鈴木監督や周囲はここから逆転して2020年の東京オリンピックに出場することを期待している(西川は2024年のパリ五輪の出場資格も持つ)。今年、選手権の敗戦以上に悔しい思いをする可能性もあるが、そのたびに成長への力に変えて上へ。目の前の目標を一つ一つクリアしながら、Jリーグや世界で活躍するプレーヤーになる。
取材・文=吉田太郎
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