知ってるようで知らないマスターズ豆知識「まさかの全米アマ敗退がオーガスタの誕生へ」
オーガスタナショナルが正式オープンしたのは1933年1月のことだった(撮影:GettyImages)
いよいよ4月11日(木)からオーガスタナショナルGC(米国・ジョージア州)で、マスターズが始まる。2021年大会で日本人初優勝を果たした松山英樹の活躍も気になるところだが、マスターズといえばコースや歴史など、さまざまな逸話が存在する。ここでは知っているとテレビ観戦がさらに面白くなり、ゴルフ仲間にも自慢できるマスターズの歴史を振り返ってみよう。マスターズ競技委員を2度務めた川田太三氏に話を聞いた。
「ボビー・ジョーンズ(1902-71、本名ロバート・タイアー・ジョーンズ・ジュニア)が後にオーガスタナショナル・ゴルフクラブとなる新ゴルフ場の構想を抱いたのは1920年代の終わり。31年に工事を始め、仮オープンを経て正式オープンしたのは33年1月のことでした。当時、世界は大恐慌の真っただ中。あれほど景気の悪い時期に計画され、オープンにこぎつけたゴルフ場は後にも先にもないと思います」
「暗く沈んだ世の中で、ジョーンズは夢と希望の象徴的存在でした。ジョージア工科大で工学の学位を、ハーバード大で英文学の学位を取得。地元アトランタのエモリー大で法律を学び、異例のスピードで司法試験に合格した経歴を持ち、一方、30年までの8年間に出場した4大メジャー(当時は全米オープン、全英オープン、全米アマ、全英アマ)21試合で13勝という驚異的な記録を残しています」
「30年に史上初の年間グランドスラムを達成したときは記念切手が発行され、ニューヨークで行われた凱旋パレードでは大観衆が沿道を埋め尽くしました。しかしその7週間後、ジョーンズはアマチュア選手のまま28歳の若さで競技ゴルフから引退。弁護士として活動する傍ら、コース設計やゴルフギアの開発、執筆活動、さらには映画出演と、さまざまな分野で才能を発揮しました」
「競技生活も終盤に差し掛かった頃、ジョーンズはオーガスタに元・果樹園の理想的な土地を見つけていました。共同のコース設計者に選んだのは英国人のアリスター・マッケンジーです。29年にペブルビーチで行われた全米アマに出場した際に、開場間もないマッケンジー設計のサイプレス・ポイントをプレー。続いて、やはりこちらもマッケンジー設計の名コース、パサティエンポをプレーして旧知のマッケンジーと再会。両コースの素晴らしさを称え、さまざまなアイデアを語り合ったという話が残っています」
「27、28年の全米アマに連覇していたジョーンズはこの年も文句なしの大本命でしたが、大番狂わせで敗退していました。あのとき、もし優勝していたら、パサティエンポに寄り道することも、マッケンジーに声をかけることもなかったかもしれない。それを考えると、現在のオーガスタナショナルは存在しなかったかもしれません」
川田太三
かわた・たいぞう/ゴルフ場設計家、評論家。1944年生まれ、東京都出身。オハイオ州立大学留学。帰国後にゴルフを始め、日本アマ、日本オープンに出場。JGA委員、ナショナルチーム団長・監督、海外メジャー競技の競技委員などを歴任。マスターズ競技委員も2度務めた
◇ ◇ ◇
●同伴者と6時間近く一緒に過ごすゴルフでは、空気を読まないといけないシーンが多数存在する。アナタに非がなくても相手の地雷を踏んでしまう可能性も……。関連記事【同伴者のスカートの中が見えそう!「こんなとき、どうする?」】
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