誰も引かない。誰も抜けない。玄人好みのGT300バトルを分けた2回目のSC時のピット攻防【GT300決勝あと読み】
4月11日、岡山国際サーキットで開催されたスーパーGT第1戦。GT300クラスでは、レース序盤はGAINER TANAX GT-Rと埼玉トヨペットGB GR Supra GTのトップ争いが展開され、レース後半はリアライズ日産自動車大学校 GT-Rを先頭に埼玉トヨペットGB GR Supra GT、LEON PYRAMID AMG、GAINER TANAX GT-Rという4台による息詰まる攻防が展開された。今後もシリーズを争うであろう4台のバトルは、派手なオーバーテイクシーンこそなかったが、玄人好みの戦いとなった。
今季もさまざまな車種バラエティを誇り、それにタイヤメーカーの争いが加わりまったく予想がつかなかったGT300。ノーウエイトで争われる第1戦は、やはり“強い者が前に”いく戦いとなっていった。ポールポジションからスタートした安田裕信のGAINER TANAX GT-Rの背後には、ピタリと川合孝汰の埼玉トヨペットGB GR Supra GTがつけ、やや間隔をあけて1周目のヘアピンで前に出たリアライズ日産自動車大学校 GT-Rの藤波清斗、そしてLEON PYRAMID AMGの菅波冬悟が続く。
今回の岡山では、ニッサンGT-RニスモGT3のストレートスピードがやはり大きな強みとなっていたのは間違いない。コーナリングに秀でるGT300規定車両や、バランスに優れるメルセデスAMG GT3はコーナーでは詰め寄るものの、やはりインに飛び込むまでには至らない。ジリジリとひりつくような、それでいてクリーンなバトルは、GT500が33周目に入ったときに起きた、RUNUP RIVAUX GT-Rの1コーナーイン側でのストップで大きく動いた。
2020年までもそうだったように、セーフティカー導入までにピットインを終わらせなければ、実質的に勝負権を失う。特にこのタイミングはルーティンのピットストップも近づいており、GT500もGT300も一斉に動いた。セーフティカー導入時のピットレーンの安全性確保のための規定が、逆にピットレーンに殺到する原因になったのはやや皮肉なところだが。
上位争いのうち、まず最初にピットインしたのは埼玉トヨペットGB GR Supra GT。「ダブルヘアピンの手前にいたときに情報が入りましたが、今回は『何かあったときには動こう』と考えていたので、すぐ指示を出しました(埼玉トヨペットGreen Brave 青柳浩監督)」とすぐさまピットインを行う。
ただ、絶好のタイミングかと思ったものの、その後のセーフティカーのボードが出るまでのタイミング、さらにピットレーンでの遅れが響いてしまう。「作業自体は90点」と迅速な作業で吉田広樹を送り出そうとするものの、進行方向隣のピットだったSUBARU BRZ R&D SPORTが、斜め停止でピットイン。一度車両を下げて出そうとしたものの、今度は後方から、7つ先のピットで、GT500クラスで2番手だったZENT CERUMO GR Supraがファーストレーンを走っており、ほんのわずかに待たなければならなかった。
一方、RUNUP RIVAUX GT-Rのスピンの映像を観てすぐにピットインの指示を出したものの、ストレート上を通過していたのはリアライズ日産自動車大学校 GT-R、LEON PYRAMID AMG、GAINER TANAX GT-Rだ。
■“1周遅れ組”のそれぞれの事情
LEON PYRAMID AMGは、隣のピットだったJLOC ランボルギーニ GT3が先にピットアウトしそうだったこともあり、通常どおりピットレーンと平行で停止。作業を行った。これがひとつポジションを上げた要因だ。
トップを走っていたGAINER TANAX GT-Rは、思わぬアクシデントがあった。映像を確認するとともに、「ボックス!」とピットインの無線を出したものの、無線の影響かドライバーにうまく伝わらず、安田が1コーナーで確認してから伝わったことから、やはり1周の遅れになってしまった。
GAINER TANAX GT-Rはその後トラフィックもあった上に斜め停止となったが、「斜め停止はなかなかうまく停止できないですよね。そこのズレでトラブルもありました」と福田洋介チーフエンジニア。「通常のピットインだったら勝てましたね……」と悔しがる。
そして3番手だったリアライズ日産自動車大学校 GT-Rは、ピットレーンの指示を出したものの、やはりストレートを通過していた。「ドライバーには怒られました(笑)」というのは米林慎一チーフエンジニア。
「その次の周まで(セーフティカー導入を)待ってくれるのかな……と思っていたら、待ってくれていたので、そこは良かったです」という。翌周ピットインしたが、リアライズ日産自動車大学校 GT-Rも斜め停止となった。
ただし、幸運だったのは「浅い角度の斜め」だったことだという。最終コーナー側の隣のピットはひとつ空き(ニスモ使用)で、さらにその隣にはMOTUL AUTECH GT-Rが停止していたが、ややずらしてくれたこと、さらに進行方向側のGT500クラスのリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが1周ピットインを待ってくれたことが大きく、浅い角度で停止できたことから、プッシュバックすることなくピットアウトできたのだという。プッシュバックはそれだけで2〜3秒はかかる。
「24号車には申し訳なかったですけどね」と米林チーフエンジニア。ロスはあったが、これでトップに浮上できたことで、後半のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラの走りが活きたかたちだ。
それぞれ、ほんのわずかなロスがあったが、コース上では抜くための決め手に欠き、不用意にオーバーテイクを仕掛ければ後方からやられる、誰も抜けない4台のトップ争いとなっていた。やはり「フルコースイエローなら……」という声ももちろん多く聞かれたが、わずかな差が分けた今回のレースは、非常に緊迫感がある、ハイレベルなGT300を象徴するレースだったとも言えるだろう。
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