スーパー耐久開幕戦で国内初導入となったFCY。レースに及ぼす影響は?
スーパー耐久シリーズでは、今年から国内レースとしては初めて、フルコースイエロー(FCY)規定が導入された。鈴鹿サーキットで行われた開幕戦は、いきなりオープニングラップからの実施となり、5時間レースで合計6回も行われた。
FCYとは、すでにWEC世界耐久選手権やブランパンGTシリーズなど、海外の耐久レースで導入されている規定で、簡単に言えば、赤旗で中断するほどではない、かつセーフティカー(SC)ランを行うまでではないアクシデント発生時の減速指示のこと。
コース全域で、全車があらかじめ定められた速度まで落とした後、間隔を保って一列縦隊で走ることが義務づけられる、F1で見られるヴァーチャルセーフティカー(VSC)と、ほぼ共通の規定でもある。
まずアクシデントが発生した場所の手前のポストで黄旗が振られ、その後にレースコントロールからタイミングモニター上に「10秒後にFCYボードが提示されます」と表示される。
鈴鹿では各チームに無線機が配布され、同様の通知があったが、配布の有無はサーキットごとそれぞれなので、場合によっては場内放送で通知される可能性もありそうだ。解除に関しても、同様の流れで「10秒後にFCYボードが解除されます」と通知される。
即座にFCYボードが提示されない理由は、定められた速度にまで減速するのに時間がかかるためで、ピットからドライバーに無線で事前に伝え、減速準備をしてもらうための配慮である。
ちなみに鈴鹿の場合は50km/h(第2戦SUGOでも同じ速度になる予定)で、広いレーシングコースを競技車両がゆっくり走っている様子は、国内レースだけ見てきた目には実に新鮮味さえ覚えたほどだ。
速度維持には、ピットレーンリミッターが主に流用されていたが、中にはメーターを見つめつつ、アクセルの調整で対応していたチームもあったようだ。
FCYによるメリットは、レース結果への影響が少ないことである。たとえばSCランが行われた場合、もちろん減速は義務づけられているものの、SCが先頭となる隊列に追い着くまでは、明確な速度規制が設けられていない。
だから、それまでに築いていたマージンが失われることも少なくない。また、原則としてSCは総合トップの車両の前を走るため、混走のレースの場合、その位置関係によっては、あからさまにクラストップと1周遅れになる可能性もある。しかし、FCYであれば一定の間隔が保たれるため、そういった事象は極めて起こりにくい。
また、解除までの時間が短くて済むのも、メリットのひとつと言えるだろう。SCランであれば、処理が済んだとしても、コントロールラインを通過した直後であれば、スローペースでもう1周走らなくてはならないが、FCYなら処理直後に解除でき、実際に数秒だけだったケースもあった。解除が通知され、緑旗が提示されたポストから加速が可能である。
スーパー耐久においてSCラン中は、ピットレーンがオープンするまでピットストップは禁じられている。海外のレースではFCY中も禁止されているが、スーパー耐久では可能とされた。
開幕戦でも、そのタイミングを有効に活用できたチームが好成績をおさめている。
ただ、いつ解除されるかわからないため、「この周で入る」と決めたはいいが、解除でタイミングを逸し、恩恵を得られなかったチームも少なからず見受けられた。
海外のレースと異なるのは、きちんと速度を保っていたかという判定。WECなどは車両にGPSが搭載されているため、即座に判定されるようだが、スーパー耐久では搭載されないため、50km/hなりのセクタータイムをあらかじめ算出して判定していること。
今回はペナルティが発生しなかったものの、あからさまな場合はドライビングスルーなり、相応のピットストップが科せられるようだ。ちなみに、スーパー耐久は一定個所の速度抑制を命じる「ZONE 50」も今年から規定に加えていたが、開幕戦鈴鹿では実施しないことを当初からアナウンスしていた。
第2戦SUGOではこのFCYがレースにどのような影響をもたらすのか、また、今後スーパーGTなどでの導入があるのか気になるところだ。
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