トップ争いで圧巻の大外刈り。松下信治&B-Maxがから大逆転のスーパーフォーミュラ初優勝 【第3戦鈴鹿決勝レポート】
2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦決勝(31周)が4月24日に鈴鹿サーキットで決勝が行われ、ウエットレースのなか予選9番手からスタートした松下信治(B-Max Racing Team)が逆転優勝。スーパーフォーミュラ参戦3年目にして初優勝を飾った。ポールシッターの野尻智紀(TEAM MUGEN)は終盤までトップを守る展開だったが、残り4周で牧野をかわして2番手に上がった松下に急接近され、1コーナーで大外刈りを決めてトップを奪った松下がそのまま優勝を奪う展開となった。2位の野尻は終盤の後退で連勝を逃したもののランキングトップをキープ。3位には牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入り今季初表彰台を獲得した。
朝から降り続けている雨は午後になってもやむ気配はなく、14時30分にウェットコンディションのままフォーメーションラップが切られた鈴鹿サーキット。1コーナー側からグリッドを映すモニターでも明らかなほどコースのイン側には水たまりが見えるなか、ホールショットを奪ったのはポールシッターでアウト側スタートの野尻。
フロントロウの山下健太(KONDO RACING)が野尻に続き、3番手には5番手スタートの牧野が着ける。4番手スタートの宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)はホイールスピンが多く後退。そのすぐ後ろにいた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)が宮田と、やや加速の鈍ったサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)をかわして4番手に、その背後にはスタート直後ですでに4ポジションアップに成功した松下がつけていた。
スタートから数周は、各車がウォータースクリーンの中で接近戦を展開。オープニングラップでは、松下対フェネストラズ、坪井対松下のバトルが白熱する。ただし、それぞれ決定打を打つことができず、ポジションは変わらず。4周目には、8番手までジャンプアップしていた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)と、大湯を挟むように7番手、9番手につけたKCMGの国本雄資、小林可夢偉が接近戦を展開。3周目のシケインでは大湯と小林が交錯する場面もあったが、3台の争いはしばらく続いていった。
トップの野尻はクリアな視界も味方につけ、ひとり1分55秒台を連発して後続を突き放していった。2周目ですでに3.3秒、5周目には10秒以上の大量マージンを築いていた。このころになると、雨脚も変化していたのか後続では1分58秒台から、2分台までタイムを落とすマシンが続出する。
2番手の山下も後ろの牧野に対して1〜2秒遅いラップタイムしか出せず、2台の差は一気に縮まり、7周目の逆バンクで逆転。山下はなかなかペースを取り戻せず、8周目には松下に交わされ4番手へ。たまらず11周を終えるところでタイヤ交換に向かったが、ピット作業で右フロントタイヤのナットが落ちてしまいタイムロス。大きく順位を落とすことになった。同時に坪井、大嶋和也(docomo business ROOKIE)もタイヤ交換を行ったが、P.MU/CERUMO・INGINGもタイヤ交換でミスがあり、大嶋がピット作業でひとつ順位を上げている。
KCMGと大湯による7番手争いは、9周目に小林が大湯をとらえ、上位の2台がピットに入ったたことでチームメイト同士の5番手争いへと変わっていった。15周目のスプーンカーブで小林が国本に急接近すると、バックストレッチでは国本がディフェンスのためにオーバーテイクシステム(OTS)を作動。それを見た小林もOTSに手をかけ、シケインではハードブレーキングで国本に襲い掛かった。止まり切れなかった小林に対し、国本はクロスラインをとってポジションキープ。しかしそのまま16周目に入ると、国本は1〜2コーナーにかけてややワイドに膨らんでしまう。このチャンスを見逃さなかった小林が国本をとらえきり、5番手に浮上した。
レースが中盤に入るころから、だんだんと雨脚が弱まってきたのか、ホームストレート上では水が残っているイン側のラインをとってタイヤをクールダウンさせるドライバーが現れ始める。そして、KCMG同士のバトルがヒートアップしていた16周目には、その前方、3位争いも松下が牧野に対して0.6秒差まで急接近。ともにタイヤをいたわりながらの接近戦は数周続いたが、バトルを展開しながらもじわじわとトップ野尻との差も削り、一時は13秒近く開いていた野尻と牧野の差は、21周目には5秒を切るほどまで近づいていた。この時、牧野と松下の差は0.4秒。
松下は22周目のシケインでフルブレーキングから牧野のインに飛び込んでくるが、牧野は最終コーナーで冷静にラインを閉める。しかし、アウト側から仕掛けるそぶりを見せた松下に誘われるように、わずかにアウト側へとマシンを振ると、すかさず松下はイン側へ。コントロールラインを通過した時点ではふたりの差は0.078秒だが、牧野は1コーナーを守り切りそのまま松下との差を1秒弱まで広げていった。
ふたりの2番手争いのバトルはここで終了かと思われたが、27周目に再び松下が牧野に接近。22周目と同じシケインでフルブレーキングで並びかけると、今度は最終コーナーでもラインを制し、牧野をとらえることに成功。2番手まで上がってくる。この時、松下と野尻との差は3.1秒まで縮まっていた。
残りは4周。ここで松下が一気にプッシュする。野尻が1分58秒台で周回する中、28周目には1分56秒9をたたき出して一気にテールに近づくと、30周目の1コーナーで松下は圧巻の大外刈りを披露。ここまでトップを快走していた野尻を一気に抜き去り、ついに首位に躍り出た。
残り2周も松下は勢いを止めず、気づけば野尻に対して5秒の差をつけトップチェッカー。スーパーフォーミュラフル参戦3年目で念願の初優勝を挙げ、ランキングでも3位に急浮上した。B-Max Racing Teamとしても国内トップフォーミュラでの優勝は初めて。終盤に逆転を許した野尻は、それでも開幕から3戦連続の表彰台獲得でランキングトップをキープ。3位には牧野が入った。
ランキング2位で第3戦を迎えた平川亮(carenex TEAM IMPUL)は予選の低迷でまさかの12番手スタートながら、粘りの走りで7位フィニッシュ。ランキング2位を死守している。
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