【角田裕毅F1第3戦密着】改善されない低グリップ路面で奮闘「課題はあるが、それほど悪い予選ではなかった」
通常であれば、グランプリ2日目に入った土曜日のコースは、路面にラバーが乗り、前日よりもグリップが上がっていく傾向にある。しかし、昨年10月のポルトガルGP開催に向けて路面を再舗装したアルガルベ・サーキットは、新しいアスファルト特有の滑りやすい路面に変わり、それは半年経った今年も変わりなかった。そして、その路面と多くのドライバーが格闘していた。
優勝経験もあるダニエル・リカルド(マクラーレン)は「フラストレーションのたまる1日だった。どこで間違ったのかはまだよくわからない。ミディアムタイヤでは感触がよかったのに、ソフトタイヤに履き替えたら、うまくまとまらなかった」と予選16番手に終わり、まさかのQ1落ちとなったほどだった。
アルガルベ・サーキットを初めて走る角田裕毅も、独特の路面に手こずっていた。そこで、角田はチームとともに、予選でタイヤにしっかりと熱を入れてからタイムアタックするために、通常1周しか行わないアウトラップを2周することにした。
「(タイヤの温まりが悪かったので)意図的にやっていました」という角田は、ステアリング上に表示されるタイヤの温度を確認して、タイムアタックを開始した。
Q1の1セット目のアタックで1分20秒315をマークして8番手となるものの、その後、続々とライバル勢がそのタイムを更新して、一時16番手まで落ちてしまう。
タイヤを履き替えた2セット目のタイムアタックで、自己ベストをコンマ7秒詰めた角田は12番手で2戦ぶりにQ2に進出した。
新品タイヤで多くのマシンが次から次へとタイムアタックする予選では、通常であれば、Q1からQ2にかけて路面は大きく改善する。しかし、冒頭のようにアルガルベ・サーキットはそれがほとんどなかった。
Q2に進出した角田の1セット目のタイヤでのタイムは、1分19秒530とQ1よりコンマ1秒速くなったにとどまった。Q2の1回目のアタックを終えた段階で12番手となった角田は、Q3進出を賭けて最後のアタックに出る。
「ステアリングで(タイヤの)温度を確認したら、悪くなかった」という角田だが、アタックを開始すると、予想していたグリップ力をタイヤから得られない。
「ターン3では、ぜんぜんオーバースピードでもないのにハーフスピンしそうになるくらいスナップ(リヤのグリップがなくなること)が出たりして、大変でした」と、セクター1はQ1でベストタイムを刻んだときの区間自己ベストである22.861秒に及ばず、22.909秒で通過していく。
グリップ不足はセクター2に入っても改善されない。
「セクター2まで、正直、まったくグリップせず……」(角田)
セクター2もQ2の1回目のアタックでマークした区間自己ベストの30.457秒に届かず、30.595秒で通過。
「セクター3からグリップしだしたんですけど、時すでに遅しでした」という角田は、14番手に終わった。
それでも、角田はこの日、最後のアタックで1分19秒463をマークし、自己ベストを更新して予選を終えた。この予選ではQ1からQ2にかけて、合計4回アタックしたが、1回目が1分20秒315、2回目が1分19秒684、3回目が1分19秒530、そして4回目が1分19秒463と着実にタイムを刻んだ。
前戦エミリア・ロマーニャGPの予選でのクラッシュを受けて、角田はポルトガルGPに向けてこう目標を立てていた。
「アグレッシブにいというその姿勢は保ちつつ、タイミングだったりシチュエーションを見極めてやっていきたい。新しいサーキットなのでバーレーンやイモラとはシチュエーションが違うので、少しずつ予選までにはまとめ上げれたらいい」
予選を終えた角田に「過去2回の予選と比較して、自分の力は出せたと思うか」と尋ねると、角田はこう言い切った。
「今日はバーレーンよりもよかったと思うし、イモラより力を出し切った。もちろん、まだ課題点はありますが、そんなに悪い予選じゃなかった」
少なくとも、イモラと同じミスを角田はアルガルベ・サーキットで繰り返さなかった。それが、この日の最大の収穫だった。
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