トップ奪取が確実に見えた瞬間の悪夢。au坪井翔「ちょっと今は気持ち的には......厳しい」【第2戦富士GT500決勝】
スーパーGT第2戦富士、予選4番手からスタートで一気に2番手まで順位を上げ、7周目のセーフティカー後のリスタートではトップの8号車ARTA NSX-GTをオーバーテイクしてトップを奪ったau TOM’S GRスープラの坪井翔。開幕戦に続いて今回の第2戦でも主役級のパフォーマンスをレース序盤から見せたが、その後のFCY(フルコースイエロー)でギャップが縮まり、最後に担当した第3スティントではまさかのトラブルでレースを終えることになってしまった。
レースも残り11周となった99周目、FCY明けのリスタートで2番手の坪井がステアリングを握るau TOM’S GRスープラに異変が発生した。
「FCY再開後、何かが壊れました。原因はわかりません。(アクセルを)踏み出して、加速してターボが入るか入らないかくらいのところで駆動がなくなりました」と、その瞬間を振り返る坪井。トラブルの原因はまだ特定できていないが、症状的にはプロペラシャフトが破損したものと推測されている。
その時点での坪井はトップの8号車ARTAを追い、約2秒差まで詰めたところでFCYが入ったが、8号車は黄旗区間での追い越しの審議中でペナルティが出ることが確実な状況だった。坪井とauは首位奪還が目前に迫っていた。
「もう、間違いなく勝てたレースで、8号車(ARTA NSX-GT)にペナルティが出るのはわかっていました」
レース序盤にトップを奪ったように、このレースでのau TOM’S GRスープラは30kgのサクセスウエイト(旧称:ウエイトハンデ)を搭載しているとは思えない速さを見せていた。最終スティントでステアリングを握っていた坪井も、クルマのパフォーマンスに自信を持っていた。
「トラブルが起きるまではコース上で一番速かったと思いますし、クルマのセットアップもタイヤもすべてが噛み合っていた。あとはゴールまでクルマを運んで勝つだけという、優勝できるレースだと思っていましたが……非常にもったいないレースだったと思います」
坪井にとっては、序盤にFCYで後ろとのギャップが縮まってしまい、第3スティントではFCY中にトップの8号車とのギャップが広がっていくという状況もあった。FCYは今回が初めてのレースでの導入で、GRスープラとNSXで制限速度の80kgの設定が実際は若干違ったとの声も聞こえる。その真相は不明だが、いずれにしても、坪井にとっては今回のFCYはネガティブな方向に働いてしまった。
「FCYが入る度にNSXに差を詰められたり、広げられてしまったり、FCYのお陰で台無しにされていたような展開だったのでちょっと腹立たしい気持ちがあります。8号車を自力で抜くのは結構、大変だったと思うのですけど、36号車の方が圧倒的にペースが速い状況でした。8号車の前に出れていたら、ぶっちぎれていたと思います」と、レース後に素直な感情を話す坪井。
「僕ができる仕事は全部できたし、普通にドライバーとしては100点以上の点数を上げられるようなレース内容だったと思う」と、自分のパフォーマンスには自信を深めたものの、「FCYで台無しになった感じですし、トラブルばかりは僕にはどうにもできない。勝てるレースを落とすとシーズンは当然きつくなるので……ちょっと今は、気持ち的には……厳しいですね」と、坪井は絞り出すように言葉を残した。
優勝を目前にしながら、0ポイントの13位完走扱いに終わってしまった第2戦のau TOM’S GRスープラと坪井翔。速さは十分にあっただけに、次の第3戦鈴鹿でどこまで失ったポイントを取り戻すことができるか。独走気配のENEOS X PRIME GR Supraをこのまま逃すわけにはいかない。
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