赤旗後の“1時間44分”は「スポーツの公平性」のため。物議を醸すWEC第3戦の延長措置をFIAが説明
FIA国際自動車連盟は、5月11日に行われたWEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースの再開と延長の決定について説明を行い、「スポーツの公平性」を確保することが鍵だったと述べた。
ベルギーのスパ・フランコルシャンで開催された6時間の決勝レースでは、アール・バンバーの2号車キャデラックVシリーズ.Rとショーン・ゲラエルの46号車BMW M4 GT3がケメル・ストレートで大クラッシュし、残り1時間47分で赤旗中断となった。
事故現場のバリアとデブリフェンスの損傷が甚大であったため、事実上、レースの残り時間全体を修復に費やす必要が発生。このままレース終了かとも思われたが、当初のフィニッシュ予定時刻である19時の11分前になって、19時10分からレースを再開するとの決定がスチュワードにより下された。
この決定に物議がなかったわけではなく、フェラーリは赤旗の時点で2台のファクトリー499Pが首位と2番手を走行していたため、ワン・ツー・フィニッシュの可能性が否定されたと感じていることを表明した。
フェラーリ勢に代わり、赤旗直前にピットインした数少ないハイパーカー車両のうちの1台であったハーツ・チーム・JOTAの12号車ポルシェ963が再開後のレースではトップチェッカーを受け、12号車と同じ境遇だったポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェが2位に続いた。
この2台のポルシェは、フェラーリの最高位となった3位の50号車を1分以上引き離してゴールした。フェラーリをはじめ、ハイパーカークラスの多くの車両は赤旗再開からのセーフティカーランの後、コースがグリーンになるとすぐにピットインして燃料補給をする必要が生じていた。
ACOフランス西部自動車クラブとともにWECを共同運営するFIAはメディア向けの声明で、レース再開決定の規則的根拠としてWECのスポーティング規則第14.3.1を挙げた。
この赤旗中断に関わるレギュレーションの関連部分には、次のように書かれている。
「状況に応じて、スチュワードはレースの中止および/または設定されたレース時間を変更する決定を下す場合がある。これは、競技会附則1に規定される競技時間(※今回は6時間)を超えてはならない」
また、FIA 国際スポーティング・コードの11.9.3.oには、スチュワードには「安全のために競技長または主催者の要求があれば、公式プログラムを変更する権限がある」という規定もある。
FIAが提供した追加の説明では、当初の予定時刻にレースを終了するのは公平ではないと感じられた、と付け加えられている。
「レースセッションの競技時間は延長されなかったが、必要な修復を行ってコースが安全にレースできることを確認し、1時間44分というピリオドで再開された」と声明には記されている。
「1時間44分は、赤旗提示時点でのレース残り時間から3分(赤旗提示からグリッドに停止するまでの時間)を引いた時間に相当する」
「この解決策により、6時間のレースに向けて戦略を立てる競技者にとって、スポーツの公平性(sporting fairness)が確保された。レースセッションを短縮することは、結果として一部の競技者が利益を得る一方、他の競技者が損失を被ることを意味する」
声明は、赤旗中断中に損傷した80メートルのバリアと8メートルのデブリフェンスを交換する必要があったと付け加えている。
フェラーリAFコルセはレース延長の決定と暫定順位に対して抗議を行ったが、スチュワードの決定自体には抗議できないとして、棄却されている。
FIAの国際スポーティング・コードは抗議を申し立てることができる対象を定めており、そのほとんどは特定の規則違反に対しての申し立てに関連している。
なお、バンバーは赤旗の起因となったクラッシュを引き起こしたとして、次戦第4戦ル・マン24時間レースでの5グリッド降格ペナルティを言い渡されている。
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