「原因が解明できない」新車のトラブルに悩むSTI、エンジンに爆弾を抱えたままニュル24時間本番へ
2008年の初出場に始まり、翌09年からSTI(スバルテクニカインターナショナル)の独自プロジェクトとしてスタートした“STI NBR CHALLENGE(ニュルブルクリンク・チャレンジ)は、今年14年目を迎えた。
すでに練習走行が開始されている第51回大会のADACトタルエナジーズ24時間レースへは、2.4リットル直噴ターボエンジンを積む新型スバルWRX S4ベースの『スバルWRX NBR CHALLENGE 2023』を投入し、SP4Tクラスでの新たな挑戦となるこのプロジェクトを率いる辰巳英治総監督に、決勝を迎えるにあたり今大会の展望と目標を聞いた。
——このニュルブルクリンク24時間レースの本番を迎えるにあたり、事前にNLSニュルブルクリンク耐久シリーズ第3戦と予選レースに参戦されていますが、新型WRX S4の感触はいかがでしょうか?
辰巳総監督「NLSでは新エンジンの冷却システムにトラブルが起きて、わずか2ラップでレースを終えることになってしまい、思い切り走ることができませんでした。ファクトリーにマシンを戻してしてすぐに冷却装置を分解し、原因追及に努めましたが、その冷却トラブルの原因がまったく解明できないのですが、エンジンやマシンにはまったく問題がないだけに困っていますね」
「予選レースでも同様に突如冷却装置のトラブルに見舞われましたが、リタイアだけは何としてでも避けたかったこともあり、エンジン回転を下げて、とにかくチェッカーフラッグを受けられるように調整しながら走りました」
——具体的にどこから生じたトラブルか、発見できたのでしょうか?
辰巳総監督「新型エンジンから生じるトラブルだということは分かりました。昨年までのエンジン『EJ20』からと新型『FA24』とでは冷却システム自体が大きく変更されたこともあり、冷却システムに関していまも私たちは戦っている途中です」
「このニュル24時間本番を迎える前に、NLSと予選レースで新型マシンをニュルで走らせているのですが、『100%トラブルに対処できたか』というと、正直まだ少し不安要素はあります」
「場合によっては、多少我慢を強いられながら走る24時間になる可能性が出てきましたが、例えどんな困難なシチュエーションが訪れたとしても、その覚悟と準備を可能な限り整えて本番に臨むつもりです」
——マシンをニュルへ輸送する前には、日本国内でも数多くテストをこなされていたかと思いますが、その際にもこの冷却システムのトラブルは出ていたのでしょうか?
辰巳総監督「富士スピードウェイで数多くのテストを重ねました。新型マシンになることで、ある程度は想定内だとはいえ、日本国内のテストでも相当数のトラブルを抱えていました」
「それらを解決してニュルへの予行練習となったのですが、『まだ隠れたトラブルがあったのか』というのが正直な感想でした。新マシンになるということは、新たな挑戦のはじまりでもあり気分一新楽しみや、やりがいも大きい分トラブルも多いですね」
「一気に致命傷になるようなトラブルではないだけに、データ上ではまったく問題がなく、はっきりした原因究明が難しいのが厄介なところです」
■今年の目標は2015年に達成した総合18位以上
——その冷却システムのトラブルはどのような時に起きるのでしょうか?
辰巳総監督「連続して走行する場合に起きます。ただ、NLSへ参戦した際には、予選ではトラブルが発生せず、決勝で走り始めてすぐに起きてしまい、対策として(早めに)シフトアップをしてなんとか走り切りました」
「新マシンは昨年モデルよりも速くなっているだけに、もうちょっとテンポアップをして走りたいところですが、トラブルが起きることを危惧して慎重になっていることもあり、イマイチ攻めきれないというのが現状です」
——もしもいままでのトラブルは決勝で起きた場合の時には、どう対処して走るべきか、ということはドライバーらと共有されているのでしょうか?
辰巳総監督「予選レースやNLSの経験上でざっくりとした対策はドライバーと練ってはいるのですが、感触を確かめながら予選を走り、もうちょっと詰めた対策をドライバーらとミーティングで話し合う予定をしています」
——昨年までのSP3TクラスからSP4Tクラスへ変わったことにより、ライバルの車種も変わりましたね
辰巳総監督「同じクラスは我々を含めて3台のエントリーとなりますが、他の2台はポルシェ・ケイマン ターボです。参加台数が少ないクラスとあり、もしかするとこの場で急きょSP8Tクラスと統合される可能性もあるとオフィシャルから聞いています」
——今季の目標は?
辰巳総監督「クラス優勝ということももちろん大きな目標のひとつですが、それよりも総合でなるべく上位入賞をしてチェッカーフラッグを受けられるようにしたいというのが、最大の目標です」
「2015年の総合18位が過去最高の入賞順位ですので、それを上回る成績を出せるようにチーム一丸となって全力で戦っていくことが今年の最大の目標となります。果たしてエンジンがどれだけ持つのか、それも新型マシンでの新たな挑戦のひとつでもあります」
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