「目の前で小切手をちらつかせる話ではない」レッドブルF1代表、エンジン部門設立や人材獲得の“おもしろさ”を語る
レッドブル・ホンダのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレイン部門(HPP)の忠実なスタッフたちはレッドブル・パワートレインズ(RBP)から“高額当選くじ”並みの高額サラリーを提示されても断った、というメルセデスF1のトト・ウォルフ代表の主張に反論した。
現在レッドブルは、本拠地のイギリス・ミルトンキーンズに自前のエンジン部門を設立する作業を進めている。これはホンダのパワーユニットプロジェクトを2022年から引き継ぐかたちで行われていて、F1の次世代エンジン規則に合わせた新しいパワーユニット(PU)も開発する予定になっている。
RBPはそのためのスタッフ雇用も開始し、メルセデスHPPの人材に狙いを定めて引き抜きを行った結果、リーダークラスを構成する基盤が整った。
だがウォルフは、スタッフの離脱は大きな問題ではないとしたうえで、「15人のスタッフと現時点で空っぽの建物では、3年後に新しいパワーユニットを開発して競争力を持つために十分とは言えない」と語った。
ホーナーは、自前のエンジン部門設立がレッドブルにとって壮大な事業であり、2004年にジャガーを買収した以降ではF1における最大規模の投資だと認めたが、プロジェクトは「いまイギリスで進行している、最も心躍るエンジニアリングビジネスだ」とも述べた。
だからこそ、新しいエンジン事業への参画を希望する人たちにとっては金額だけがインセンティブではない、というのがホーナーの主張だ。
ホーナーは『The Race』の取材に対して以下のように述べた。
「F1は人のスポーツだ。結局のところ、そこで働く人たちと同じレベルにまでしか良くはならない」
「我々は、素晴らしい設備をつくり、それ以上に素晴らしい人材を獲得して、このプロジェクトを構成していく。それがなによりおもしろい部分だし、人材を引き付ける要素なのだと思う」
「小切手を目の前でちらつかせるような話ではない。これは統合作業だ。単なるエンジンサプライヤーではなく、ひとつの大きなチームの一員になる機会なのだ」
「そのことに心から共感してもらえたからこそ、我々のところにこれだけの才能が集まったのだと考えている」
■ゼロから物事を始めるときは「できるだけ多くの才能を迎え入れるべき」
ホーナーは、F1の人材、もっとはっきり言えばメルセデスのスタッフに的を絞って新エンジン部門への加入を促したことで、レッドブルとしては「すぐに全力で作業に取り組める状態だ」と語った。
「彼らはIP(知的財産)を携えてくるわけではないが、HPPのベテランぞろいだ。長年のあいだにF1の標準となるようなエンジンをつくり出してきたのは彼らだ」とホーナーは指摘する。
「それは我々にとって素晴らしいことだ。まったくのゼロから、白紙の状態で始めるときには、こうしてできるだけ多くの才能を迎え入れるべきだ」
「私がシャシーの担当で入ったときとは別なチャレンジがある。そのときはジャガーのシャシーというベースがあり、弱点を見つけてそれに取り組む、というものだった。今回は完全な白紙から始まっている」
「これは、多くの側面において、より容易な作業だともいえる。自分たちの思いどおりにつくって、シャシーと完全に合体させるからだ」
「全体としての目的は、エンジンを開発してシャシーと合わせること。そこで両方を手がける相乗効果が表れるし、コスト削減も図れる。特に、今後パワートレインにもバジェットキャップ制度の影響が及ぶことは避けられないからだ」
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