最強の布陣で鈴鹿8耐に臨むカワサキ、新エンジンのZX-10RRは「組み合わせもゼロからのスタートだった」
ファクトリー(ワークス)チームとなるKawasaki Racing Teamとして18年振りに鈴鹿8時間耐久ロードレースに臨むカワサキ。その伏線となったのが、2014年からTeam GREENとして参戦してきたことだ。
Team GREENは、2016年(柳川明、渡辺一樹、レオン・ハスラム)、2017年(渡辺一馬、ハスラム、アズラン・シャー・カマルザマン)と連続して2位に入り、後はスーパーバイク世界選手権(SBK)を席巻するジョナサン・レイ(以下、ジョニー)を招集すれば、勝てると踏んで2018年の鈴鹿8耐に臨んだ。
その予選では、ジョニーが驚異的な走りを見せポールポジションを獲得。このプレッシャーからかレースでも序盤はYAMAHA FACTORY RACING TEAMと互角以上のバトルを繰り広げたが、降雨とセーフティカーラン中の転倒で後退。勝つ体制はそろっていたが“運”がなかった。
勝つために足りないことを考えたとき、ワークスチームとして参戦しているヤマハとホンダに対抗するには、カワサキ・レーシング・チームの復活しかなかった。実質、2018年もワークスチームに変わりはなかったが、子会社のカワサキモータースジャパンが運営するKawasaki Team GREENと大元となる川崎重工業が運営するカワサキ・レーシング・チームでは、人の動きが変わってくる。
昨年と今年の違いをジョニー聞いてみると「一番の違いは、チーム名が変わったことだね」とひと言。
6月3〜4日に行われた鈴鹿8耐メーカー合同テストには、新たに耐久仕様となった2019年型Ninja ZX-10RRが用意された。5月29〜30日のイタリア・ミサノでのSBK合同テスト、そして6月7〜9日のSBK第6戦スペイン・ヘレスの合間を縫ってジョニーとハスラムは来日した。
「かなりハードスケジュールだから体力的に厳しいというのが本音だ。SBKのピレリタイヤから鈴鹿8耐のブリヂストンに乗り換えることも難しいが、2019年型Ninja ZX-10RRは、エンジンだけに関して言えば完全なブランニューだ。そのテストを行うことは重要なことだから、どんなにタイトなスケジュールであっても鈴鹿に駆けつけなければならなかったんだ」とジョニー。
「エンジンが新しいから組み合わせもゼロからのスタートだった。川崎重工業の技術者とKRT(カワサキ・レーシング・チーム)のスタッフも懸命に作業してくれている。チームの雰囲気もいいし、レオンとふたりでいい方向にバイクを作って行けているよ」
ジョニーが鈴鹿8耐前にテストを行うのは、今回が最初で最後。ハスラムをリードしながらランデブーで走行したり、時にはエンジニアと激しくぶつかっていたりする場面も見られた。
■ハスラムに絶大の信頼を持つレイ
一方、ハスラムは「エンジンは新しいが、ベースとなる車体はよくできているから、このまま鈴鹿8耐に向けてセッティングを詰めていけば十分戦えると思う」とコメント。6月下旬に予定されているテストには、ハスラムと3人目のライダーであるトプラック・ラズガットリオグルが参加予定だと言う。
ジョニー、ハスラムとともに2019年の鈴鹿8耐を戦うラズガットリオグルは、昨年、全日本ロードレース選手権の最終戦鈴鹿にカワサキ・チームグリーンからスポット参戦。木曜日に初めて鈴鹿を走るにも関わらず、2分06秒台をマークした。残念ながら金曜日に転倒負傷し、すぐに帰国してしまったが、その順応性の高さを見せつけた。
SBK第5戦イモラでは、ハスラム、ヤマハのマイケル・ファン・デル・マークとのバトルを制し、3位表彰台に上がっており、速さは折り紙付きだ。
ラズガットリオグルついてジョニーはこうコメントする。
「トプラックは、若いけれど、すごく速いライダー。3人ライダーがいるからレオンとトプラックで走った方が、いい可能性もあるし、僕たちをトプラックが引っ張ってくれるだろう(笑)」
6月下旬のテストでは、ハスラムが中心となってマシンセットを進め、鈴鹿8耐のレースウイークで初めて3人がそろうことになる。
「レオンが僕のボスだからね(笑)。本的に鈴鹿8耐のマシンは、いい意味で妥協して作って行くものだけれど、レオンとは好みも一緒だから信頼しているし、まったく心配していないよ。もちろんターゲットは勝つことだ。カワサキとともに表彰台に上がれるようにベストを尽くすよ」とジョニー。
ジョニーもハスラムもホンダ時代に鈴鹿8耐を勝った経験を持っている。カワサキに移籍しSBK最強のライダーとなったジョニー、ブリティッシュスーパーバイクで王座を獲り、再びSBKに参戦しているハスラム。幼馴染みのふたりが、SBKでもチームメイトとなり、今年も鈴鹿8耐を一緒に戦うことになった。
そこに新生トプラックが加わり、速さでも安定感でも強力な体制となった2019年のカワサキ・レーシング・チーム。間違いなくヤマハの連覇を阻止する最右翼と言えそうだ。
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