高速市街地コース、バクーで躍動したレッドブル・ホンダ。チームが望み続けた“助っ人ペレス”の存在
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGPの週末、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は2度の不運に見舞われた。
まず予選Q3終盤。角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)のクラッシュによる赤旗中断でアタック中止を余儀なくされ、フェラーリのシャルル・ルクレール、メルセデスのルイス・ハミルトンに次ぐ3番手に終わった。ルクレールを凌ぐペースで区間最速タイムを更新しており、ポールポジション獲得の可能性は充分にあった。
そしてレースでは、首位を快走していた終盤46周目に突然、左リヤタイヤのバーストに襲われリタイア(18位完走扱い)。この時点で、4秒後方にいた2番手のセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)が背後のハミルトンをしっかり抑えており優勝はほぼ間違いないところだった。
最終的にペレスが移籍後初優勝を果たしたことで、ホンダにとっては1992年のモナコ、カナダGP以来となる2連勝を遂げることができた。しかし上述の2度の不運がなければ今回の2連勝はポール・トゥ・ウイン、1-2フィニッシュ、そして最速ラップ獲得という、レッドブル・ホンダがこれまで達成したことのない完全勝利になっていたはずだった。
……とグチってみたくなるほどに、今週末のレッドブル・ホンダの相対的な戦闘力は、圧倒的とまでは言わないまでもライバルたちの上をいっていた。モナコに引き続き、フェラーリ勢の一発の速さはレッドブルにとって脅威となった。しかし、彼らのレースペースが苦しいことは初日には明らかになってもいた。
予選直前のFP3でバリアにぶつかり、ソフトタイヤでレースシミュレーションができなかったことを除けば、この週末のフェルスタッペンはほぼ満点の出来だった。それだけにリタイア、獲得ポイントゼロという結果には本人もやりきれないことだろう。ただし、同じゼロポイントのハミルトンと比べると、自らのミスが敗因だったハミルトンのほうが抱えた心理的ダメージは大きそうだ。
ペレスの優勝は、身もふたもない言い方をするなら『脇役の優勝』だ。しかし、それこそがまさにレッドブル・ホンダがこの2年間望み続け、一度も叶えられずにいたものだった。
ダニエル・リカルドがチームを去って以来、フェルスタッペンは多くの場合ひとりでメルセデスに対峙し続けた。そのあいだにチームメイトだったピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボンはときに光る走りを見せることはあったものの、フェルスタッペンの速さに肩を並べることはできなかった。とくに予選一発のパフォーマンス差が大きく、離れすぎたグリッドポジションではフェルスタッペンの援護射撃をするのは不可能だった。
チームが助っ人のペレスに期待したのはまさにそこだったが、レッドブルのマシンが持つ特殊な挙動にはベテランのペレスもさすがに手こずった。それでも第2戦エミリア・ロマーニャGPでフロントロウ獲得、第3戦ポルトガルGPでチームメイトに並ぶ2列目グリッド獲得と、決勝だけではなく予選でも着実に結果を出してきた。
今回のバクーでは、スタート後のポジションアップですぐにフェルスタッペンの背後につき、14周目にピットストップでハミルトンのオーバーカットに成功してからは、ホンダパワーユニットの進歩も相まって“フェルスタッペンのライバル”を抑え続けた。そして、リタイアしたフェルスタッペンに代わってチームに勝利をプレゼントした。
それでも、決勝でのペレスのマシンは油圧系トラブルを抱え、リタイア寸前の薄氷を踏む思いの勝利だったし、リスタートのターン1でハミルトンが犯したミスに助けられたこともたしかだ。
だが、それでも勝った事実を充分に評価すべきだろう。ひとりがダメになっても、もうひとりがいる。それを実践できるドライバーが、ようやくレッドブル・ホンダに戻ってきたということだ。
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