ル・マン24時間でワン・ツー飾った一貴&可夢偉が凱旋。「初めてル・マン直後に風邪をひいた」
TOYOTA GAZOO Racingは6月21日、東京都内で第86回ル・マン24時間のメディア報告会を開催。総合優勝を飾った8号車トヨタTS050ハイブリッドの中嶋一貴、総合2位を獲得した7号車トヨタTS050ハイブリッドの小林可夢偉が登場し、24時間の激闘をふり返った。
6月16〜17日に行われた第86回ル・マン24時間に参戦し、通算20回目のル・マン挑戦で悲願の初優勝を遂げたトヨタ。日本メーカーがル・マンを制覇するのは1991年のマツダ以来、また日本車に日本人ドライバーが乗り込んでの勝利は史上初の快挙だ。
戦いを終えて、日本へ帰国した一貴は「相変わらず抜け殻のよう。本当にホッとしたという気持ちのほうが強い」と現在の心境を明かす。
「僕自身がWEC(世界耐久選手権)、ル・マンに挑戦するようになって今年で7回目。(これまで)たくさんのことがありましたし、悔しい気持ちや厳しい経験をたくさんしてきました。やっとそれを勝利という形で乗り越えられました」
「トヨタとしても初挑戦から30年以上経っていて、今年が20回目の挑戦でした。今までたくさんの人がル・マンのプロジェクトに関わってこられて、今のスタッフもそうですし、過去に関わっていた方たちとも喜びを分かち合って、本当に大きな目標を達成できたと実感しました」
一貴が乗り込む8号車トヨタに続く総合2位でチェッカーを受け、トヨタにル・マンでのワン・ツーフィニッシュをもたらした7号車トヨタの可夢偉は「レースを終えて日本に帰ってきたら風邪をひいた」とコメントした。
「シーズンを終えてプレッシャーから解放されると、だいたい風邪をひいたりするんですけど、初めてル・マンを終えてすぐに風邪をひきました。みなさんが体調を崩す時を想像してもらえば、相当なプレッシャーを抱えながら24時間を戦っていたことがわかると思います」
「レースは非常に長くて厳しいものでした。見ている側からは楽に見えたかもしれませんが、走っている身としてプレッシャーは大きかった。そんな状況のなかレースを戦うのは楽しい反面、楽しんでいいのかという考えが行ったり来たりしてましたね」
■完走へ向けたチームの意識変化。「縁石に乗るとすぐ怒られる」
2017年はマシントラブルなどでル・マン制覇を逃したトヨタ。2018年大会に向けては「ユニット(パワーユニット)のネジ1本から見直した」(小島正清GRモータースポーツ部部長)とマシンの信頼性に万全を期したほか、テストなどでさまざまなトラブルを想定した予行演習を重ねて、対策マニュアルを万全にして臨んだ。
また、可夢偉は今年チームが変化した点として「縁石に乗るとすぐ怒られた」ことを挙げた。
「練習走行から縁石に乗らない練習をしました。ル・マンは縁石を跨いだほうがタイムが出るサーキットなんですけど、すぐ怒られちゃう。そういった面で気を使いながら走りきりました」
「あと8号車とのタイム差は1度も教えてくれませんでした。(相手が)どこにいるかを教えてくれたのは、最後チェッカーを受けるために一貴と合わせる(ランデブー走行する)タイミングだけ。それ以外は一切教えてもらえなかったので、本当に自分との戦いでした」
これまではシリーズの天王山としてのポジションを占めてきたル・マン24時間だが2018-19年の“スーパーシーズン”としてはまだ2戦目。2019年6月のシリーズ最終戦には第87回ル・マン24時間も待ち構えている。
シーズン残り6戦、そして来年のル・マンに向けて、一貴が「1回勝ったからと言って、これがゴールではないです。個人的にはシーズンでチャンピオンを獲ることも大きな目標」と意気込みを語れば、可夢偉も「残りのレース、とにかく勝つことを考えている」と力強くコメントした。
「チャンピオンを獲るためには次のル・マンも勝たなくてはならないレースだと思います。チームメイト同士でガチンコ勝負をして、来年のル・マンでも勝ちを狙っていきたいです」(一貴)
「単純にレースに勝つことだけを考えて、残りのシーズンを戦います。チームもいろいろなプレッシャーから若干解放された部分もあると思うので、しっかりレースで勝つという、いつもどおりのスタンスで臨みます」(可夢偉)
今年みせた信頼性と速さを、残りの5戦、そして最終戦となる2019年6月のル・マンで発揮できるか。シリーズチャンピオン獲得とル・マン連覇に向けて、トヨタの挑戦第2幕がスタートする。
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