【J再開コラム】常に自分自身に問う。「たのしめてるか。」|遠藤さちえ(湘南広報)
サッカーキング2020年6月24日(水)12時0分
[写真]=J.LEAGUE
ピッチからスタンドを見上げると、目に映るほとんどの人が泣いていた。
2018年10月27日、JリーグYBCルヴァンカップ優勝。ベルマーレが24年ぶりにJ1でタイトルを獲得したそのとき、スタンドのサポーターは喜びを爆発させるというよりは、顔をくしゃくしゃにして涙していた。この光景は、もしかしたらベルマーレならではなのかもしれないと思った。
1999年、ベルマーレはクラブ存続危機を経験した。窮地を救ってくれたのはホームタウンであり、サポーターだった。そこからの20年は安定とは程遠く、毎年どころか毎月綱渡りのような状態で、ヒリヒリするような日々の連続だった。チームの戦いに目を向けても、2009年に11年ぶりのJ1昇格を果たした後、3回の降格と3回の昇格を繰り返すなど、ジェットコースターのようだった。
そのすべてを、サポーターとともに乗り越えてきた。たくさん心配を掛け、ともに悩んだ。大きな喜びもあったし、深い悲しみもあった。けれど足を止めずにチャレンジを続けてきた。だからあの優勝の涙は、走馬灯のように思い出される過去を含め、いつしかベルマーレが“我がこと”となったからこそ流されたものだったのだと思う。
華やかな優勝セレモニーの最中、同僚が「こんな日が来るなんてね」と感慨深げに言った。その言葉に頷きながら、「でも、こんな日が絶対に来ると思ってたよ」と口にしていた。
本当にずっと、必ず、こんな日が来ると思っていた――。
たとえ苦しくとも、クラブの中はいつも明るく賑やかだ。お金がなければ工夫をし、人が足りなければ「仲間になってください」と地域の人を巻き込んだ。負けが続いたとしても、選手たちはファイティングポーズをとり続けた。「いつか必ず」と思えたのは、いつも希望を感じられていたからかもしれない。何度転んでも、何度でも立ち上がる。そして、立ち上がろうとする時の応援は温かく、凄まじい。だから歯を食いしばってでも、何度でも立ち上がることができたのだ。
19歳で押しかけ入社(今振り返っても本当に押し掛けでした)をした私は、外国籍選手のお世話担当、マネージャー、広報、営業……とさまざまな職種をこのクラブで経験してきたが、何年経ってもまだまだ毎日が新鮮で、いまだに驚くことが多い。特に選手には、日々驚かされる。喜怒哀楽の濃い人生を本気で生きる彼らには、年齢に関係なく多くのことを教えてもらっている。「私が感動しているだけじゃもったいない」という思いが、広報担当としての「伝えたい」という気持ちの原動力でもある。
間もなくJリーグが再開する。
試合ができない期間は、自分たちの存在意義とは何なのかを考える時間でもあった。スポーツが人々の生活に「なくてはならないもの」になるためには、もっとスポーツの価値を高めなければならない。思えば、クラブ存続危機の時代は眠れぬほどに苦しかったが、失いそうになって初めて、一番大切なものは何であるかが分かった。今回も、難しい局面であるからこそ、大切なことに気づけるチャンスになるかもしれない。
ベルマーレのユニフォームのエンブレムの下には「たのしめてるか。」という文字が入っている。クラブスローガンであり、行動指針でもあるこの言葉は、単に「enjoy」という意味ではない。「我を忘れるほど、夢中になる」という意味が込められている。そして、それを常に自分自身に問い掛けるために「たのしめてるか。」と訊ねているのだ。
7月4日から再開する2020シーズンは、いまだかつて誰も経験したことのないシーズンとなる。試合ができる喜びを噛み締めながら、夢中になって、駆け抜けていきたい。“夢中”は最強だから。
文=遠藤さちえ(湘南ベルマーレ広報担当)
2018年10月27日、JリーグYBCルヴァンカップ優勝。ベルマーレが24年ぶりにJ1でタイトルを獲得したそのとき、スタンドのサポーターは喜びを爆発させるというよりは、顔をくしゃくしゃにして涙していた。この光景は、もしかしたらベルマーレならではなのかもしれないと思った。
1999年、ベルマーレはクラブ存続危機を経験した。窮地を救ってくれたのはホームタウンであり、サポーターだった。そこからの20年は安定とは程遠く、毎年どころか毎月綱渡りのような状態で、ヒリヒリするような日々の連続だった。チームの戦いに目を向けても、2009年に11年ぶりのJ1昇格を果たした後、3回の降格と3回の昇格を繰り返すなど、ジェットコースターのようだった。
そのすべてを、サポーターとともに乗り越えてきた。たくさん心配を掛け、ともに悩んだ。大きな喜びもあったし、深い悲しみもあった。けれど足を止めずにチャレンジを続けてきた。だからあの優勝の涙は、走馬灯のように思い出される過去を含め、いつしかベルマーレが“我がこと”となったからこそ流されたものだったのだと思う。
華やかな優勝セレモニーの最中、同僚が「こんな日が来るなんてね」と感慨深げに言った。その言葉に頷きながら、「でも、こんな日が絶対に来ると思ってたよ」と口にしていた。
本当にずっと、必ず、こんな日が来ると思っていた――。
たとえ苦しくとも、クラブの中はいつも明るく賑やかだ。お金がなければ工夫をし、人が足りなければ「仲間になってください」と地域の人を巻き込んだ。負けが続いたとしても、選手たちはファイティングポーズをとり続けた。「いつか必ず」と思えたのは、いつも希望を感じられていたからかもしれない。何度転んでも、何度でも立ち上がる。そして、立ち上がろうとする時の応援は温かく、凄まじい。だから歯を食いしばってでも、何度でも立ち上がることができたのだ。
19歳で押しかけ入社(今振り返っても本当に押し掛けでした)をした私は、外国籍選手のお世話担当、マネージャー、広報、営業……とさまざまな職種をこのクラブで経験してきたが、何年経ってもまだまだ毎日が新鮮で、いまだに驚くことが多い。特に選手には、日々驚かされる。喜怒哀楽の濃い人生を本気で生きる彼らには、年齢に関係なく多くのことを教えてもらっている。「私が感動しているだけじゃもったいない」という思いが、広報担当としての「伝えたい」という気持ちの原動力でもある。
間もなくJリーグが再開する。
試合ができない期間は、自分たちの存在意義とは何なのかを考える時間でもあった。スポーツが人々の生活に「なくてはならないもの」になるためには、もっとスポーツの価値を高めなければならない。思えば、クラブ存続危機の時代は眠れぬほどに苦しかったが、失いそうになって初めて、一番大切なものは何であるかが分かった。今回も、難しい局面であるからこそ、大切なことに気づけるチャンスになるかもしれない。
ベルマーレのユニフォームのエンブレムの下には「たのしめてるか。」という文字が入っている。クラブスローガンであり、行動指針でもあるこの言葉は、単に「enjoy」という意味ではない。「我を忘れるほど、夢中になる」という意味が込められている。そして、それを常に自分自身に問い掛けるために「たのしめてるか。」と訊ねているのだ。
7月4日から再開する2020シーズンは、いまだかつて誰も経験したことのないシーズンとなる。試合ができる喜びを噛み締めながら、夢中になって、駆け抜けていきたい。“夢中”は最強だから。
文=遠藤さちえ(湘南ベルマーレ広報担当)
(C) SOCCERKING All rights reserved.
「再開」をもっと詳しく
- 【J再開コラム】「サッカーのある生活、最高やんけ」。きっとあなたもそう思う。|岡島智哉(報知新聞社)
- 【J2再開注目選手①】「誰かのために」…こだわりの場所で戦い続けたい|佐野海舟(町田)
- 【THIS IS MY CLUB】JFLからJ1へ、“ミスター琉球“とクラブの幸せな関係|富所悠(琉球)
- 【THIS IS MY CLUB】結果を残して恩返しをしたい|富澤雅也(長崎)
- 【THIS IS MY CLUB】アビスパスタイルを貫く|長谷部茂利監督(福岡)
- プレーオフなしで激戦必至…昇格戦線のキーマンは!? みっしーが選ぶJ2注目選手5選
- 【THIS IS MY CLUB】4季目の\”誓い\”「徳島でJ1昇格を成し遂げたい」|リカルド・ロドリゲス監督(徳島)
「再開」のニュース
-
テクノエッジ、有料ファンコミュニティ「テクノエッジ アルファ」の会員募集を再開5月24日17時16分
-
オールデイダイニング「Table For Tomorrow」にて、6月限定、スカンジナビアフェアを開催!5月24日16時16分
-
ピッコマ、5/24独占配信中の『最強の王様、二度目の人生は何をする?』連載再開&シーズン6が開始。6/13までピッコマだけ!1日最大13話無料で読める「0」を170話以上適用の豪華イベントを実施5月24日10時46分
-
昨夏大雨被害のJR山陰線、6月に長門市—人丸間などで運転再開…バス輸送併用5月24日9時48分
-
聖奈 今週復帰!京都土日1鞍ずつ騎乗予定「問題ないです」5月24日5時2分
-
プリウス、来月から生産出荷再開 リコール対応で4月に停止5月23日16時48分
-
福島・浪江町で14年ぶり田植え 今後の出荷再開に期待5月23日16時36分
-
【瀧さわ家 多賀城店】夜の営業完全再開!絶品出汁料理と美味しいお酒で至福のひとときを堪能せよ!5月23日15時46分
-
被災の山陰線、6月22日に再開 山口県内の一部区間5月23日15時42分
-
【運転再開】平成筑豊鉄道でポイント故障 始発から一時運転見合わせの区間も5月23日9時26分
スポーツニュースランキング
-
1批判殺到!どこ投げてんだよ…! 大谷翔平、まさかの盗塁で“異変”が起きた…!? 相手捕手のリアクションがヤバすぎる 「古田さんも思わず苦笑」「さすがに無謀w」 ABEMA TIMES
-
2球宴3度出場の元MLB戦士が大谷翔平に“疑念” 水原容疑者の違法賭博騒動にまさかの意見「突然、物語が変わった」 ココカラネクスト
-
3金沢志奈が首位をキープ リゾートトラスト女子ゴルフ 共同通信
-
4井上尚弥に止まぬ特大評価 リング誌の“ウシク1位”にメキシコ名伯楽が異論「イノウエはあまり騒がない。それでも十分偉大」 ココカラネクスト
-
5「本気で言っているのか?」絶好調の今永昇太が米番組内で”新事実”を告白! 隠し持つ武器に米メディア衝撃「フェアな話ではない」 ココカラネクスト