ル・マン24時間:澤圭太、3年目の挑戦はトラブルに泣くも「満足感は今までで一番」
WEC世界耐久選手権のLM-GTEアマクラスに参戦しているクリアウォーター・レーシングのレギュラードライバーとして、6月16〜17日に行われた『第86回ル・マン24時間レース』に挑んだ澤圭太。自身3度目のル・マンは、マシントラブルなどによってクラス8位と悔しい結果となるも、週末に感じた手応えや満足感は「今までで一番!」と語った。
2016年のル・マン初参戦時はスポット参戦ながらポールポジションを獲得し、決勝でも表彰台まであと一歩となるクラス4位となった澤擁するクリアウォーター・レーシング。
翌2017年はWECフル参戦チームとして出場するも、他車との接触が響き5位に終わった。ル・マン挑戦3年目となる今季はWEC開幕戦スパ・フランコルシャンでクラス3位、直前のテストでも3番手タイムを記録するなど、チームは良い流れに乗った状態でル・マンのレースウイークを迎えることとなった。
13日(水)から14日(木)にかけて行われた合計3回の公式予選では、澤が決勝用のセッティングを確認しつつ、エースドライバーのマット・グリフィンが予選アタックを敢行。13日に予選1回目はクラスはアタックタイミングが悪く10番手と振るわなかったものの、14日の2回目、3回目ではクラス8番手にポジションアップを果たす。
さらに上位からのスタートを目指しアタックを続けたグリフィンだったが、新しいリヤブレーキシステムが原因とみられるバランスの変化によって、インディアナポリスでコースアウトを喫してしまう。結局、その後タイムアップは果たせずチームは3年目のル・マンをクラス4列目の8番手からスタートすることとなった。
■予選時のアクシデントが決勝に影響
第86回大会の決勝は、直前に開催されていた全仏オープンを制したテニスプレイヤー、ラファエル・ナダルの国旗振動によって16日15時にスタートが切られた。クリアウォーター・レーシングの61号車フェラーリ488 GTEはグリフィンのドライブでクラス3番手に順位を上げ、ル・マンでの初表彰台獲得に向けて幸先の良い出だしを切っていく。
しかし、そのグリフィンの2スティント目から61号車フェラーリのペースが鈍りだす。原因は予選でダメージを受けて交換したフロントバンパーからフロントスプリッターが外れかかった状態になったことで間に空気が入り込み、前後ダウンフォースのバランスが崩れたほか、バイブレーションが発生するようになったためだ。
その後61号車フェラーリはグリフィンからオーナードライバーのウェン-サン・モク、さらに澤とバトンをつないでいくが、いずれもペースが伸び悩み徐々に順位を落とすこととなってしまう。
そのような状況のなか迎えた現地時間17日(日)2時過ぎ、澤は夜間のトリプルスティントを開始すべくコースに入っていく。しかし、スタートから13時間を迎える直前、LM-GTEプロクラスのマシンとの接触を避けるためミュルサンヌでラインを外しスピン。タイヤにフラットスポットを作ってしまった。
イレギュラーのピットインを余儀なくされた61号車フェラーリだったが、幸いにも車両にはダメージはなく澤はタイヤ交換のみで戦線に復帰。その後、約1時間の走行を担当している。
クラス6〜7番手を争うなかで迎えたレース終盤、レースディレクターから「フロントスプリッターを補修または交換するように」との指示が届く。チームはこれ以上のポジションダウンを避けるため30分近くを要す交換ではなく短時間で対応可能な補修で乗り切ることを決断した。
チェッカーまで残り2時間、チームは一度マシンをガレージに入れると、わずか4分でスプリッターの補修を完了させ澤をコースに送り出す。クリアウォーター・レーシングはこの時点でトップから3周遅れのクラス8番手となっていたが、澤はこれまでのラップタイムから1〜2秒速い3分54〜56秒台の好ペースで周回していく。
このペースは2番手争いをするスプリット・オブ・レースの54号車フェラーリ488 GTEを駆る元F1ドライバー、ジャンカルロ・フィジケラのペースを上回るものだった。
最終的に61号車フェラーリは332周を走破してクラス8位入賞を果たしWECシリーズランキングでは、ランキング1、2位を独占していたアストンマーチン勢の間に割って入るランキング2番手となっている。
■澤「ル・マンという舞台で最後まで攻め続けられた」
24時間レースを終え「3年目の挑戦となるル・マン24時間、(今年は)絶対に表彰台圏内でレースができるはず! と自信を持って挑んだレースウイークでしたが、結果的には厳しい現実を感じた週末でした」と振り返った澤。
「『悔しいっ!!』でも、『手応えや満足感も今までで一番!』というのが正直な印象です」
「ル・マンのレースウイークが始まると、終わりに向かって行く悲しさが毎年あるんです。今年はその感覚が過去最高で、特にレース最終盤になってクルマが完調な状態でドライブしたときには、身体は完全に疲労困憊なのにランナーズハイの状態で『ずっと走っていたい!』と思っていました」
澤は「“タラレバ”ですが」と前置きをしながら、今回のル・マンでは実質的に表彰台争いができていたはずだという。
「(最初から)クルマが完調で平均ラップが1秒早ければ、全体で5分以上はタイムを稼げたし、さらに5分の補修作業がなければ合計10分(2周半)以上は先でゴールできたはずです。つまり335〜334周しているトップ3台と彰台圏内でレースができた内容でした」
そんな決勝では「夜のスティントでスピンをしてしまう失態はありましたが、それよりも最後の1スティントを走った際に、自分が憧れていた元F1ドライバーで同じフェラーリを走らせるフィジケラと同等かそれ以上のペースで走れたこと。さらに過去3年にはなかった最後まで攻め続けて、マシンをル・マンという舞台で速く走らせることができた満足感のほうが大きかったです」と澤。
「今までのル・マンとは明らかに違う挑み方ができたと自信を持って言えますが、やはり沢山の方にご支援を頂いている以上、自己満足ではなく結果でお返ししないといけない。それを今までしてきたからこそ、今があるとも思いますので、今後も気を引き締めてシリーズ2位となったWECシリーズを戦っていきたいと思います」
澤とクリアウォーター・レーシングにとって2シーズン目となるWECの次戦、2018/19年第3戦シルバーストン6時間は8月17〜19日、イギリスのシルバーストンで行われる。
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