ポルシェ963、カスタマー車両は2023年開幕に間に合わない可能性。1台のコストは“約4億円”と判明
ポルシェ・モータースポーツ・ノースアメリカ社長兼CEOのフォルカー・ホルツマイヤーは、JDCミラー・モータースポーツのポルシェ963のデビューレースについて「疑問符がつく」としており、カスタマーカーはシリーズ開幕戦に間に合わず、2023年シーズン途中に準備が整ってから展開される可能性が浮上している。
6月25日、JDCミラーは2023年からポルシェの新型LMDhプロトタイプ『963』のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権におけるカスタマーチームとして発表された。しかし、現在のサプライチェーンの遅延問題により、GTPクラスへのレースデビューは来シーズン後半にずれ込む可能性があるという。
ポルシェは4台のファクトリーカーに加え、IMSAに2台、WEC世界耐久選手権に2台のカスタマーカーを割り当てる方針を打ち出しており、このIMSAのうちの1台がJDCの車両となる。
「我々は、答えを見出さなければならない」とホルツマイヤーはカスタマー車両のデビュー時期について語った。
「車両は依然開発中であるし、我々は正直に言わねばならない。準備ができた段階でカスタマーカーを用意するということで、全員が合意しているんだ」
「どちらの当事者(ポルシェとカスタマー)にとっても意味がないので、(1月の開幕戦)デイトナで準備が整わないのであれば、それを無理には進めない。デイトナがだめなら、(3月の)セブリング(12時間)か、もっと後のレースになるだろう」
「だが、これは今後数週間から数カ月をかけて、エンジニアリングとホモロゲーションを確定することによって定められるべきものだ」
「ホモロゲーションが遅れれば、サプライチェーンに負担がかかる。我々はその答えを見出さなければならないし、現段階で(カスタマー)車両の最初のレースがいつになるのかは言えない」
開幕戦のロレックス24アット・デイトナ(デイトナ24時間レース)でデビューする可能性について問われたホルツマイヤーは、「デイトナは疑問だ」と答えている。
「我々の目標はもちろんデイトナにカスタマーカーを持ち込むことだが、プレッシャーによってエンジニアリングに関するトピックが解決するわけではない。うまくいくタイミングを見計らい、パーツを集め、正しく作り上げていくしかないんだ」
「もしLMDhのファクトリーチームのリードエンジニアがここに座っていたとしたら、『私は1台のクルマ(ファクトリー車両)を速くするために、可能な限りのリソースを集めている』と言うだろうね。2台目はすでに頭痛の種だし、同じレベルでオペレートするためにより多くのリソースが必要となるカスタマーカーでは、もっと頭痛の種が増えるのだ」
「だからこそ、その種の(カスタマーカーの参戦開始時期に関する)決断が重要であり、そうやってチーム全体のセットアップをしていく必要があるのだ」
「ファクトリー側の仕事量に影響されることなくカスタマーカーをサポートするため、我々はまったく新しいサポートチームを立ち上げる」
「リソースを偏らせないためには、ある時点で割り切る必要がある。そうして、ちゃんと準備ができた。だから、良いクオリティ(のサポート)を提供できるものと安心しているのだ」
「だがもちろん、マシンが増えれば増えるほど、組織(ポルシェ)へのストレスは大きなものとなる」
デイトナでのデビューはまだ不透明ではあるものの、JDCミラーの共同オーナーであるジョン・チャーチは、状況が明らかになるにつれて見極めていく、と語った。
チャーチは、IMSAに対して(現在使用している)キャデラックDPi-V.RでのGTPクラスへの特例参戦を要請することは「現実的ではない」として、否定的な見解を示している。
「我々はこの場で進化しながら、おそらく計画や思考プロセスを調整していくと思う」とチャーチ。
「フォルカーに期待しているし、その動向を注視していく。それ(デビューが遅れる)は可能性としては間違いなくあり、もしそうなるなら我々は2023年を開発の年として見なければならない」
「人生みたいなものだ。それらの課題に一歩踏み出し、それを理解し、解決策を考えていく必要があるんだ」
なお、ホルツマイヤーがこの車両のコストが290万ドル(約3億9211万円)であることを認めている。これには以前のRSスパイダーLMP2プログラムと同レベルのカスタマーサポートが含まれている。
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