【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第8/9戦】速さはある。契約を確実に決めるにはミスをなくさなければならない
2022年、アルファタウリの角田裕毅は、F1での2シーズン目を戦っている。昨年に続き、エディ・エディントン氏が、グランプリウイークエンドを通して角田の動きをくまなくチェックし、豊富な経験をもとに、彼の成長ぶり、あるいはどこに課題があるのかを忌憚なく指摘する。今回は2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPと第9戦カナダGPについて語ってもらった。
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バクーからモントリオールという連戦スケジュールを組んだ人間は終身刑に処すべきだ。直行便がなく、へとへとでカナダに到着すると、スーツケースが届いておらず、係員は探してくれようともしない。天気はひどいし(6月半ばに凍えるような思いをするのであれば、イギリスにいればよかった)、時差は8時間だ。帰宅するころには体調が最悪だった。
昔、大きな仕事でアルゼンチンに行って帰ってきた時のことを思い出す。……分かっているって、それより角田の話だね。今回はステファノのせいで悪夢のような旅をしたから、しばらくは角田のキャリアや行く末について考える余裕がなかった。それでも私は立派な大人として、自分の仕事をやり遂げるつもりだ。角田がこの2戦をどう戦ったのかは、しっかり頭に入っているから大丈夫。
アゼルバイジャンでアルファタウリは強烈なオウンゴールを決めた。あの週末、角田はプラクティスでも予選でも好調だったというのにだ。Q2でマクラーレン2台を破ってQ3に進み、ピエール・ガスリーの後ろの列の8番グリッドを確保した。ところが決勝でDRSフラップが半分壊れて動かなくなってしまった。
あれでなぜブラック&オレンジフラッグが出たのかも謎だ。何かが脱落する危険はなかったから、チームが角田に「DRSを使うな」と指示すれば済んだはずだ。それに実際、あの時彼は誰かを捕まえつつあったわけではないため、使う場面はなかっただろう。
だが、今のF1のテーマは「当たり障りなく」だ。ドライバーがくしゃみをするぐらいの小さなことまで心配するぐらい安全性に気をつかう。アルファタウリのマシンの作りがお粗末だったことと、FIAがレースの安全な運営が妨げられることを極端に恐れたことから、素晴らしい結果を出せたかもしれなかった角田の週末が台無しになった。
その翌週、アルファタウリは今度はマシンのセットアップ上のミスをしでかした。FP3でガスリーが上位のタイムを出したにもかかわらず、決勝で2台が走っていたのは下位だった。それでもパワーユニット交換をして最後尾からスタートした角田の方は、10位争いに絡んでいけそうに見えた。
10位に入れたら手放しで褒めてやりたいところだったのに残念だ。なんと角田はピットアウトしてすぐにウォールに突っ込んでしまった。アレクサンダー・アルボンはすでに前に出ており、ガスリーのことは気にする必要がない状況だったにもかかわらずだ。
一体全体、彼は何を考えていたのか。経験不足のドライバーであれば仕方がないが、F1で2年目を迎えた者はあんなミスを犯すべきではない。かつてヤルノ・トゥルーリはデビューから10年目あたりで同じようなことをしていたし、ベテランにも起き得る事故なのかもしれない。だが、裕毅、君は二度とああいうミスをしてはならない。ドクター・マルコはあの類のミスを見逃してくれるような人間ではないのだ。
とはいえ、来年のシートに関して角田が心配する必要はないだろう。マルコが育ててきた若手のうちF2で2年目以降のドライバーたちはF1に昇格する可能性がなさそうだし、今年F2にデビューしたふたりはまだ経験不足だ。つまり2023年のアルファタウリのふたつ目のシートは、裕毅、君のものだと言っていい。ただし、ドライコンディションでピットアウトしてすぐにクラッシュするなんてことがあと一度でもあれば、どうなるか分からないが……。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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