【F1第3戦無線レビュー(2)】フェルスタッペンのマシン修復を知らなかったハミルトン「彼はスタートできないって言ってたよね」
2020年F1第3戦ハンガリーGPは、スタート直後から路面が乾いていくコンディションで、レース中は各チームで雨に関するやり取りが繰り広げられたが、結局は雨は降らなかった。一方でドライバーらはタイヤの摩耗にも苦戦。そんなF1第3戦の模様を無線とともに振り返る。
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フォーメーションラップ中に、ケビン・マグヌッセン(ハース)やダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)が主張していたように、グリッドからスタートした全車がインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤでスタートしたハンガリーGP決勝レースは、スタート直後から路面が急激に乾きだす。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がピットに「もう路面はドライだ」と言った3周目に、前を走るルイス・ハミルトン(メルセデス)とランス・ストロール(レーシングポイント)がピットインするが、チームは1周ステイアウトさせ、ストロールを逆転。フェルスタッペンは2番手に浮上する。
4周目までに全車ドライタイヤに交換を終了。ただし、そのコンパウンドはミディアムとソフトで別れ、ソフトを装着したシャルル・ルクレール(フェラーリ)がミディアム勢に対して苦戦を強いられ、9周目に無線で思わずこう吐き捨てる。
ルクレール:このソフトタイヤはゴミだよ
さらにその翌周にはメルセデスとハミルトンとの間で、こんなやりとりが。いかにメルセデスとハミルトンがフェルスタッペンを警戒しているかがわかる。
メルセデス:(2番手の)フェルスタッペンとのギャップは9.2秒。彼はいまタイヤをセーブして走っている
ハミルトン:えっ、君はフェルスタッペンはスタートできないって言ってたよね
メルセデス:彼らはマシンを修復させて、レースに参加している
今年のハンガリーGPは、曇り空でスタートしたレースだが、レース中に雨が降るという予報となっていたため、レース中は天気予報に関する情報が無線で頻繁にやりとりされていた。そして、その内容はチームよって、異なっていた点も興味深かかった。
12周目
メルセデス(→ボッタス):20分後に雨が来るから、このタイヤは使い切っていい
15周目
マクラーレン(→カルロス・サインツJr.):25分後に雨が来る
20周目
ルクレール:雨は降らないのか
23周目
フェラーリ(→ベッテル):10分後ににわか雨が来る
しかし、なかなか雨が降らない。すると、多くのドライバーが左フロントタイヤの摩耗に苦しみだす。
24周目
ハミルトン:もう左フロントタイヤが終わっている
25周目
ベッテル:左フロントタイヤが厳しい
27周目
ストロール:これは××××。厳しいよ
31周目
フェルスタッペン:左フロントが限界だ
しかし、雨が降らなければ、ここでピットインすると最後までタイヤが持たず、もう一度ピットインしなければならなくなるため、ピットは動かない。
32周目
ハミルトン:左フロントのラバーがもう限界だ
メルセデス:いや、ペースはいい。君はいま全体のファステストだ。もう少しがんばれ
トップはハミルトン。2番手はフェルスタッペン。ここで先に動いたのがフェルスタッペン。37周目、ピットアウトしたフェルスタッペンにエンジニアはこう伝える。
レッドブル・ホンダ:雨が降っても少しだけ。そのあとはチェッカーフラッグまでドライだからな
これを見て、37周目にハミルトンもピットイン。
メルセデス:左フロントタイヤをしっかりとマネージメントしてほしい。
ハミルトン:わかってる
残り30周を切って、ソフトタイヤを装着しているバルテリ・ボッタス(メルセデス)がハードタイヤのフェルスタッペンに猛追してくる。
46周目
フェルスタッペン:後ろにいるのはボッタス?
レッドブル・ホンダ:そうだ。彼は中古タイヤだ
すると今度はフェルスタッペンの前に周回遅れのマシンが現れてくる。
フェルスタッペン:前の奴らをどかしてくれ。こっちはいま2位争いをしているんだからね
レッドブル・ホンダ:わかってる
フェルスタッペン:ボッタスとの差はどれくらい?
レッドブル・ホンダ:真後ろにいる
しかし、ボッタスはフェルスタッペンを抜けない。するとメルセデスは49周目にボッタスをピットインさせ、新品のハードタイヤを装着させる。そして、フェルスタッペンを逆転するための指示をピットアウトしたボッタスに送る。
メルセデス:ターゲットペースは1分18秒5だ
それを聞いたボッタスは52周目にターゲットペースを上回る1分17秒913で走行。フェルスタッペンをーとの差を詰めていく。
メルセデスはトップを走るハミルトンにも中古のミディアムタイヤを装着させており、すでに20周を走行。
ハミルトン:このタイヤはグレートじゃない
一方、ボッタスのレースエンジニアは残り15周となったところで檄を飛ばす。
メルセデス:あと6周で追いつくぞ
するとフェルスタッペンのレースエンジニアも反応する。
レッドブル・ホンダ:ペース戻してくれ。
フェルスタッペン:やっている
残り10周を切ったところで、2番手のフェルスタッペンとの差がピットロス以上となっていることを確認したハミルトンのレースエンジニアがハミルトンにこう伝える。
メルセデス:いまフリーストップだ(ピットストップしても順位に影響がないこと)。ピットストップするかどうか、考えている
ハミルトン:じゃ、ソフト、使える?
一度はピットインの指示を出したが、インラップの途中でステイアウトの指示。
ハミルトン:どうした?
メルセデス:ちょっと待ってくれ。もう一度、確認する
その後、66周目にピットインしてソフトタイヤを履いたハミルトンは、ファステストラップを記録して優勝。フェルスタッペンとボッタスの2位争いは再びテール・トゥ・ノーズの戦いとなったが、フェルスタッペンが押さえて2位でチェッカーフラッグを受けた。
メルセデス:すごいぞ、ルイス。君はマスタークラス(特別階級)だ。ファステストラップ、そして優勝。カッコいいぞ。
ハミルトン:みんなの努力のおかげだよ。みんなを誇りに思っている。最高の気分だ。
フェルスタッペン:なんていう結果だ。今日は僕のメカニックたちに最大限の感謝の言葉を贈るよ。だって、彼らがいなかったら、今日という一日はなかった。彼らはレジェンドだよ。本当にありがとう。2位は今日の僕たちにとって、勝ちに等しいよ
その後方では、フォーメーションラップでピットインしたマグヌッセンが、終始ポイント圏内を走行し、9番手でフィニッシュした。
ハース:チェッカーフラッグ、チェッカーフラッグ。9位だ。すごいぞ。最高の走りだった。特に終盤の走りはすごかったよ。君は本当にすごい。
マグヌッセン:信じられない。信じられないよ。
ハース:君は真のレーシングドライバーだ。
マグヌッセン:まるで優勝したような気分だ。僕には、君たちが必要なんだ。みんなにキスしたいよ。
ハース:わかった、待ってるよ
今シーズン、チーム初入賞に、チーフレースエンジニアの小松礼雄もマグヌッセンに賛辞を贈った。
小松:すごいよ、ケビン。よく頑張った
マグヌッセン:ありがとう、アヤオ
ただし、ハースはチームがフォーメイションラップ中にタイヤ交換のためのピットインを指示したことが、ドライバー援助を制限する規則に違反すると判断されたため、マグヌッセンは10秒加算のペナルティが科せられ、1つポジションが降格されたが、10位に踏みとどまり、チームに貴重な1ポイントを持ち帰った。
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