ヤンチャから大人へ…“日藤のズラタン” 三田野慧、変化のきっかけは「妹との別れ」
サッカーキング2017年7月30日(日)20時25分
普段から妹の遺骨が納まったペンダントを身に付けている三田野慧 [写真]=川端暁彦
7月30日、全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技2回戦が宮城県内各地で行われた。日大藤沢高校(神奈川2)は、この日から登場となるシード校・昌平高校(埼玉)と対戦。1点を先に奪われる苦しい流れの試合となったが、68分に途中出場のFW三田野慧の起死回生の同点ゴールで流れをつかむと、その直後にオウンゴールから逆転。前年度4強の優勝候補を下し、見事に3回戦進出を決めた。
立役者となった三田野は主将のDF安松元気から「ちょっと見たことがないくらいに変わっている。本当に個が強い」と評される“超個性派”キャラクター。我の強い選手に対する指導には定評のある佐藤輝勝監督も、「1、2年生のころの三田野は本当にヤンチャな子で、大変だったんですよ」と何かを思い出したような顔をしながら笑顔で振り返る。ただ、「今年になって本当に大人になってくれた。以前だったら、スタートのメンバーでないことを受け入れられなかったと思う。でも今は自分の役割を受け入れた上で、やってくれた」
変化のきっかけについて本人に話を向けると、一つの別れがあった事実を告げられた。昨年末、まだ11歳の若さだった妹の三田野純さんが突然の病気に倒れ、帰らぬ人となってしまったのだ。
「それからですね。『俺が頑張らなきゃ』と、スイッチが入った。妹もサッカーをやっていて、トレセンとかにも選ばれてて、『一緒に日本代表になろう』と言い合っていた。自分にとって妹は家族であると同時にサッカー友達。一緒にサッカーの話をしたり、ウイイレをやったり、そういう関係だった。だから家族とサッカー仲間を一緒になくしたというか、2倍悲しいような感覚だった」(三田野)
ちょうどこのころ、自身はサッカー部の中で沈んでいるタイミングだった。Bチームに落とされ、「大したケガでもないのに長く休んでいたりした」(三田野)という少し腐り気味の状態。だが、もうそんな甘えたことを言っているわけにはいかなくなった。葬儀の2日後には早くも合宿に参加。「そこから一気に切り替えた」。もう一度、大好きなサッカーへ、すべてをぶつけていく覚悟を固めた。
妹の遺骨が納まったペンダントを家族全員が普段から身に付けており、「いつも一緒」なのだと笑って言う。試合中は装身具に関する規制があるため、妹のことも知っていたというマネージャーに着けてもらっているそうで、ピッチ脇から試合を見守ってもらっていた。
こんなふうにちょっと重い話を聞いているはずだが、本人の語り口は至って明朗で、時には冗談も交えて暗いムードを一切作らせない。“お涙ちょうだい”ではなく、本人がどこまでも前向きで挑戦的なのも印象的で、何より魅力的だった。監督と仲間がそろって「ムードメーカー」と評していたのも納得である。この日もウォーミングアップから声を出し続け、ゴールが決まれば「マジで気持ち良かった」と絶叫してみせた。
「本気でプロになりたいと思ってるんで」。殊勲のストライカーはそう言って笑った。目指すのは「ホントにカッコイイ」と憧れるズラタン・イブラヒモヴィッチ。さまざまな感情も背負いつつ、しかしどこまでも明るく前向きに、情熱的に。「日藤のズラタン」はこれからもまた、大好きなサッカーを全力で表現する。
取材・文=川端暁彦
立役者となった三田野は主将のDF安松元気から「ちょっと見たことがないくらいに変わっている。本当に個が強い」と評される“超個性派”キャラクター。我の強い選手に対する指導には定評のある佐藤輝勝監督も、「1、2年生のころの三田野は本当にヤンチャな子で、大変だったんですよ」と何かを思い出したような顔をしながら笑顔で振り返る。ただ、「今年になって本当に大人になってくれた。以前だったら、スタートのメンバーでないことを受け入れられなかったと思う。でも今は自分の役割を受け入れた上で、やってくれた」
変化のきっかけについて本人に話を向けると、一つの別れがあった事実を告げられた。昨年末、まだ11歳の若さだった妹の三田野純さんが突然の病気に倒れ、帰らぬ人となってしまったのだ。
「それからですね。『俺が頑張らなきゃ』と、スイッチが入った。妹もサッカーをやっていて、トレセンとかにも選ばれてて、『一緒に日本代表になろう』と言い合っていた。自分にとって妹は家族であると同時にサッカー友達。一緒にサッカーの話をしたり、ウイイレをやったり、そういう関係だった。だから家族とサッカー仲間を一緒になくしたというか、2倍悲しいような感覚だった」(三田野)
ちょうどこのころ、自身はサッカー部の中で沈んでいるタイミングだった。Bチームに落とされ、「大したケガでもないのに長く休んでいたりした」(三田野)という少し腐り気味の状態。だが、もうそんな甘えたことを言っているわけにはいかなくなった。葬儀の2日後には早くも合宿に参加。「そこから一気に切り替えた」。もう一度、大好きなサッカーへ、すべてをぶつけていく覚悟を固めた。
妹の遺骨が納まったペンダントを家族全員が普段から身に付けており、「いつも一緒」なのだと笑って言う。試合中は装身具に関する規制があるため、妹のことも知っていたというマネージャーに着けてもらっているそうで、ピッチ脇から試合を見守ってもらっていた。
こんなふうにちょっと重い話を聞いているはずだが、本人の語り口は至って明朗で、時には冗談も交えて暗いムードを一切作らせない。“お涙ちょうだい”ではなく、本人がどこまでも前向きで挑戦的なのも印象的で、何より魅力的だった。監督と仲間がそろって「ムードメーカー」と評していたのも納得である。この日もウォーミングアップから声を出し続け、ゴールが決まれば「マジで気持ち良かった」と絶叫してみせた。
「本気でプロになりたいと思ってるんで」。殊勲のストライカーはそう言って笑った。目指すのは「ホントにカッコイイ」と憧れるズラタン・イブラヒモヴィッチ。さまざまな感情も背負いつつ、しかしどこまでも明るく前向きに、情熱的に。「日藤のズラタン」はこれからもまた、大好きなサッカーを全力で表現する。
取材・文=川端暁彦
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