ヤマハ EWC最終戦 鈴鹿8時間耐久ロードレース レースレポート
Rd.05 7月30日 日本
RACE DATA
■開催日:2017年7月30日
■大会名称:世界耐久選手権鈴鹿8時間耐久レース
■開催地:日本/鈴鹿サーキット
■天候:曇り ■気温:29.2度
■観客数:74,000人
REPORT
GMT94が逆転で世界チャンピオンを獲得! YARTはランキング3位、YAMAHA FACTORY RACING TEAMが鈴鹿8耐3連覇!
世界耐久選手権の最終戦が7月30日に開催され、1ポイトン差でランキングトップを追う、GMT94 Yamaha Official EWC Teamが11位を獲得し、2014年以来3度目となるEWCのチャンピオンを獲得した。トップに27ポイント差ながら、表彰台の獲得、逆転でのチャンピオンを狙っていたYART Yamaha Official EWC Teamは、EWCのレギュラーチームでは最上位となる5位を獲得。トップ2チームには届かなかったものの、ファクトリーとしての力を見せ、ランキング3位でシーズンを終えた。
また、鈴鹿8耐が日本最大のモータースポーツイベントであることから、ヤマハは、全日本JSB1000に参戦中の中須賀克行、そしてPata Yamaha Official WorldSBK Teamから、スーパーバイク世界選手権に参戦中のアレックス・ローズ、マイケル・ファン・デル・マークを迎えたYAMAHA FACTORY RACING TEAMを結成して参戦。多くのライバルを抑え、鈴鹿8耐での3連覇を成し遂げた。
前日のTOP10 TRIALでポールポジションを獲得したのはYAMAHA FACTORY RACING TEAM。ファーストライダーを務めた中須賀は、スタートでやや出遅れるがオープニングラップでは3番手に順位を挽回。さらに2周目には2番手に浮上し、高橋巧(ホンダ)、レオン・ハスラム(カワサキ)と共にすぐさまトップ集団を形成する。このとき西コースでは雨が降っており、ドライ用のスリックタイヤで出走していたトップ3は我慢のライディングを強いられる。そしてこのなかでハスラムが徐々に遅れ、14周目からは高橋と中須賀のマッチレースとなった。
その後、何度か2人は順位を入れ替えるが、最終的に中須賀がトップでYZF-R1をローズに託す。そのローズはセーフティカーが介入したことなどで一時は順位を落とすが、すぐにトップの座を取り戻すと、徐々にジャック・ミラー(ホンダ)との差を広げていく。さらに第3走者となったマイケル・ファン・デル・マークは安定したライディングでトップをキープするが、徐々に中上貴晶(ホンダ)にその差を詰められてしまう。しかし、それを知ったファン・デル・マークはペースを上げると、再び中上との差を広げていく。その後、中上がヘアピンカーブで転倒すると、ファン・デル・マークは独走状態となった。
レース前半で大きなアドバンテージを築いたYAMAHA FACTORY RACING TEAMは、その後もまったく危なげないライディングを見せると、レース序盤での雨、さらには2回のセーフティーカーの介入がありながらも216周を走破して、2015年からの鈴鹿8耐3連覇を達成するとともに、通算7度目のチャンピオンとなった。そして中須賀は史上最多タイとなる3連覇記録達成となった。
また、15番グリッドから決勝を迎えた、「GMT94 Yamaha Official EWC Team」は、第1スティント中に雨が降る難しいコンディションをファーストライダーを務めたニッコロ・カネパが冷静に乗り切り、1時間を通過した時点で16番手につける。その後は、デビット・チェカ、マイク・ディ・メリオも含め、耐久チームらしい堅実な走りを続け着実にポジションを上げ6時間経過後には9番手まで置い上た。しかし、黄旗区間での追越しにより30秒のピット&ストップが課せられ順位を落としてしまう。
しかし、直接のライバルとなる「Suzuki Endurance Racing Team」も、序盤のトラブルがあったことから影響は少なく、残りを確実に走り11位でフィニッシュ。この瞬間、2004年、2014年に続き、3度目となる世界チャンピオンを決定した。
一方、2016-2017 FIM 世界耐久選手権EWCにレギュラー参戦し、今大会をファクトリーチームとして参戦した「YART Yamaha Official EWC Team」のブロック・パークス選手、マービン・フリッツ選手、野左根航汰選手は、序盤から安定した走りを披露し常に上位をキープ。終盤にマシントラブルに見舞われるが、これを迅速に克服して5位でチェッカーを受け、EWCではランキング3位でシーズンを終了した。
COMMENT
決勝:優勝(216周:8:00’32.959)
中須賀克行選手談
「鈴鹿8耐の40回記念大会にふさわしい戦いができました。雨が降った第1スティントではスリックタイヤを装着した状態だったため、攻めたい気持ちを抑え、冷静にアレックスにマシンを引き渡すことを考えました。もしここでタイムが遅れたとしても、アレックスやマイケルが巻き返してくれると信じていたからです。今回の優勝で、個人的には日本人初の鈴鹿8耐3連覇を成し遂げることができました。記録を作るというのは本当に気持ちがいいものですが、全日本では前半戦でうまくいかず、オートポリスでようやく勝ってチームの士気が上がり、これが今回の優勝、そして3連覇につながったと思っています。もちろん鈴鹿8耐は一人で勝つことはできません。チームメイト、スタッフ、そして応援してくれたファンのみなさんの力があったからこそ。本当に感謝しています」
アレックス・ローズ選手談
「すばらしいレースイベントである鈴鹿8耐で再び勝つことができて、本当にうれしいです。最後のスティントはかなり緊張しました。中須賀サンとマイケルがいい仕事をしてくれて、優勝がすぐそこに見えていたためです。集中力を失いやすい難しい状況だったと思います。でも、チームがすばらしいマシンを作り上げてくれたおかげもあって、レースを楽しむことができました。また来年も鈴鹿8耐に参戦したいですね」
マイケル・ファン・デル・マーク選手談
「ヤマハのライダーとして鈴鹿8耐に勝つことができたことを、とてもうれしく思います。すごく特別なフィーリングです。今日のレースはいつもの鈴鹿8耐とは違って、ずいぶんと気温が低かったですね。だから僕はいい走りができたのかもしれません(笑)。中須賀サンもアレックスも、とてもいいペースで走ってくれました。僕たちはファンタスティックなチームだったと思います。ヤマハもチームもすばらしい仕事をして、YZF-R1を最高のマシンに仕上げてくれました。また来年もこのチームで鈴鹿8耐に戻りたいです」
吉川和多留監督談
「ヤマハにとって初の鈴鹿8耐3連覇であり、中須賀選手にとっては日本人ライダー初の鈴鹿8耐3連覇と記録が重なり、とてもうれしく思います。最終的には、スタッフそしてライダーが、冷静にやるべきことをしっかりとこなしたというのが大きな勝因であり、これは昨年とはまったく変わっていません。今回はレース中に雨が降り、セーフティーカーが介入するなどで昨年の周回数を上回ることはできませんでしたが、こうした難しい環境下でミスなく走りきることができたのは、昨年以上にチームがまとまっていた証拠でもあります。チームを支えてくださったみなさん、スタッフ、ライダー、そしてYAMAHA FACTORY RACING TEAMを応援してくださったすべての方々に今回の鈴鹿8耐3連覇を捧げるとともに感謝いたします。ありがとうございました」
YART Yamaha Official EWC Team(5位/年間ランキング3位)
決勝:5位(212周:8:01’56.136)
ブロック・パークス選手談
「5位という結果は、今回の自分たちのベストリザルトだと思います。大きなクラッシュやトラブルもなく、レースウィークを過ごすことができましたからね。決勝の最初のスティントは難しい状況だったけど、まずまずうまくこなすことができました。2度目のスティントではもっといい走りができたし、3度目は自分の強さを示すこともできたと思います。最後に走った航汰は、ポジションを守るために本当に全力を尽くしてくれました。すばらしい走りでしたね。マービンも航汰もシーズンを通して大きく成長したと思うし、僕も彼らの先生として自分の経験を伝えることができました。EWCのランキングは3位になれたけど、正直言ってチャンピオン以外は何位でも同じ。来年はタイトルをめざします」
マービン・フリッツ選手談
「5位はチームがベストを尽くしたすばらしい成果。ファクトリーチームに勝つのは本当に難しいですからね。終盤にちょっとトラブルが出ましたが、メカニックたちがすぐに修復してくれました。5位を守れたのは、メカニックたちの頑張りと最終スティントで航汰が全力を尽くしてくれたおかげ。僕にとっては初の鈴鹿8耐だったけど、自分としてはまずまずいい仕事ができたかな、と満足しています。決勝レースをミスなくこなすことができましたからね。こんなすばらしいレースに参戦する機会を与えてくれたヤマハには感謝しています。鈴鹿8耐に来る前、みんなに”すごいビッグレースだよ!”と聞いていましたが、表彰台からの眺めは本当に信じられないものでした。たくさんの人たちが拍手を送ってくれて、すごくうれしかったし、来年もまたここに来たいですね」
野左根航汰選手談
「今日はマービンとブロックがとても速く、自分もレースペースは問題ありませんでした。しかし、ウイークを通してもう少し速く走りたかったので、少しがっかりしていますが、これから改善していきたいと思います。この結果に貢献できたことはうれしいですし、このような機会を与えてくれたYARTと、ヤマハに感謝するとともに、一緒に戦ってくれたチームメイトにも感謝の気持ちでいっぱいです。そして、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの鈴鹿8耐3連覇、中須賀さんの日本人初となる鈴鹿8耐3連覇には脱帽です。本当におめでとうございます」
マンディ・カインツ監督談
「自分たちの持てる力を最大限に発揮したレースでした。レースをしている限り、表彰台を狙っていたのは当然ですが、今回のパッケージでは我々の前にいる4チームに勝つことは難しかったと思います。レース終盤でリヤまわりにトラブルが出てしまいましたが、レースに不運は付き物です。もっと大きな不運に見舞われたチームもたくさんある中、5位という結果には満足しなければいけません」
#94 GMT94 Yamaha Official EWC Team
決勝:11位(214周:8:02’24.705)
デビット・チェカ選手談
「ひとつのミスでタイトル争いをフイにする可能性があったため、難しいウィークエンドでした。各走行セッションでライバルより上の位置にいたため、プレッシャーはなかったのですが、”マシンに何かあったらどうしよう””誰かにぶつけられたらどうしよう”と不安だらけでした。その中で、このチームで自分にとっても3回目のタイトルを獲得できて本当にうれしく思います。精神的にもかなりタフなシーズンでしたが、チームやヤマハのおかげで成し遂げることができました。鈴鹿8耐ではYAMAHA FACTORY RACING TEAMが優勝し、僕たちはEWCのタイトルを獲得。まさにYZF-R1のポテンシャルを示すことができて誇りに思います」
ニッコロ・カネパ選手談
「信じられない気分! 鈴鹿8耐は世界的にも有名なレース。MotoGPやMoto2、スーパーバイクからたくさんのライダーたちが参戦するレースは、他にはありませんからね。たくさんのファンの前で表彰台に立ったことは、僕の忘れられない記憶になりました。僕たちは本当にすばらしいシーズンを送り、3戦で勝つことができましたが、難しい状況の時もありました。それでも鈴鹿8耐でチャンピオンを獲得できたのは、チーム全員が、諦めないことの大切さを知っていたからと思います。ヤマハと、ダンロップと、チームと、そしてチームメイトに心から感謝します。どれかひとつでも欠けていたらこのタイトルは得られませんでした」
マイク・ディ・メリオ選手談
「シーズンを通していい戦いができました。こんなチャンスを与えてくれたヤマハには感謝しています。レースで得た経験をチームメイトとシェアしながら共に進化していくなんて、MotoGPでもできないことですからね(笑)。今回の鈴鹿8耐ではちょっとしたトラブルも出てしまいましたが、自分としてはラップタイムを短縮できたし、何よりも目標通りライバルの前でフィニッシュしてチャンピオンを獲得できました。応援してくれたたくさんの日本のファンの前でタイトルを獲れたことを誇りに思います」
クリストフ・グィオ監督談
「何て言えばいいのでしょうか! 鈴鹿8耐は世界的にも偉大なレースのひとつでタイトルを決めることができて誇りに思います。EWCにレギュラー参戦するチームとしては、F.C.C.TSR Hondaが3位、YART Yamaha Official EWC Teamが5位に入り、我々は11位となかなかタフなレースでした。その中で我々は、ポイント争いをしていたSERTより確実に前にいるため、安全策をとりました。ライダーたちはF.C.C.やYARTと戦いたかったはずなので、フラストレーションの溜まるレースだったと思います。でも、みんながチームの戦略をよく理解してくれたおかげで、タイトルを獲得できました。彼らには心から感謝しています」
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