16戦ぶり勝利の湘南。残留に必要な3つの修正【J1リーグ2023】
2023明治安田生命J1リーグ第22節の全9試合が、8月5日と6日に各地で行われた。
同リーグ最下位の湘南ベルマーレは5日、本拠地レモンガススタジアム平塚でサンフレッチェ広島と対戦。後半2分、湘南のFW大橋祐紀がペナルティエリア手前から右足を振り抜き、先制ゴールをゲット。この虎の子の1点を守り抜いたホームチームが、最終スコア1-0で勝利した。
リーグ戦16試合ぶりの勝利と、長いトンネルから抜け出した湘南。試合終盤の広島の猛攻を凌ぎ、今季リーグ戦初の無失点勝利も達成したが、J1残留のために向き合わなければならない課題は残されている。
ここでは広島戦での事象をもとに、湘南が改善すべき3つのポイントを解説する。
修正すべきポイント1:敵陣でのプレス
基本布陣[3-1-4-2]の湘南は前節のアビスパ福岡戦と同じく、敵陣でボールを保持した際に片方のサイドへ極力人を寄せ、味方同士の距離を狭めたうえでパス回し。逆サイドのウイングバックがタッチライン際ではなく、ペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとるという約束事も、福岡戦と同様にチーム内に浸透していた。
あらかじめボールサイドに人を寄せ、狭く攻めていれば、仮にボールを失っても複数人で連動して守備を行いやすい。今節もボールを失うやいなや複数人で連動してプレスをかけ、広島のパスワークをサイドに追いやろうとする意図が窺えたが、この守備が緩慢になる場面があった。
その典型例は、前半8分の広島の攻撃シーン。ここでは湘南が敵陣左サイドでプレスをかけ、ボールを奪おうとしたが、基本布陣[3-4-1-2]の広島MF川村拓夢(2ボランチの一角)を捕捉する選手がおらず。川村から広島DF志知孝明へのパスが繋がってしまい、後者に左サイド(湘南の右サイド)から鋭いクロスを上げられてしまった。
ハイプレスの際にマンマークできていない相手プレイヤーがいれば、その選手を起点に逆サイドにボールを送られ、ピンチに陥ってしまう。昨2022シーズンの中盤戦以降の好調に繋がった、敵陣での味方同士の距離を狭くし、淀みない攻守を披露するというコンセプトには立ち返れているだけに、湘南としてはプレッシングの細部を突き詰めたいところだ。
修正すべきポイント2:ビルドアップ時のWBの立ち位置
GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)の際、ウイングバックがタッチライン際且つ味方センターバックとほぼ横並びの位置へ降りてきてしまい、相手のハイプレスの的となってしまう湘南の悪癖がまたも顕在化。前節はこの傾向が改善され、今節も両ウイングバックが極力高い位置をとろうとする意図は窺えたが、我慢しきれず降りてきてしまう場面があった。
この現象が起きたのは前半15分。ここでは湘南のDF杉岡大暉(左ウイングバック)が味方DF大野和成(センターバック)からの横パスを自陣後方のタッチライン際で受けてしまい、広島のハイプレスの餌食に。杉岡からFWディサロ燦シルヴァーノへのパスは広島の選手たちに読まれており、ボールを奪われてしまった。この後の広島の速攻は不発に終わったが、ピンチや失点に繋がってもおかしくなかった。
ウイングバックが自陣後方の大外のレーンでビルドアップに関わると、タッチラインがすぐ傍にあるため、基本的に左右どちらかにしかパスを出せない。ゆえに相手としてはパスコースを読みやすく、ここにプレスをかければボールを奪える確率が上がる。後先を考えた立ち位置が、湘南の両ウイングバックには求められるだろう。
修正すべきポイント3:ビルドアップ時のCBの体の向き
同じく前半15分の湘南のビルドアップにおける、ボールを保持したセンターバックの体の向きも修正ポイントのひとつだ。
ここでは湘南のセンターバック大野が自陣ペナルティエリア手前でボールを保持したが、即座に体を左に向けてしまったため、広島の選手たちにパスコースを読まれる形に。大野から杉岡への横パスが、広島のハイプレスのスイッチとなってしまった。
この場面では大野が対面の相手FW加藤陸次樹と正対し、左右どちらにもパスを出せる体の向きを整えていれば、広島陣営としてはプレッシングの的を絞りづらかっただろう。J1リーグ残留に向けて、こうした細部も突き詰めたいところだ。
湘南復帰の田中聡が挙げた課題
KVコルトレイク(ベルギー)への期限付き移籍を経て、今夏に湘南に復帰したMF田中聡。基本布陣[3-1-4-2]の中盤の底でプレーした今節も、相手のプレスを物ともしない強心臓は健在だった。
その安定感は、「五分五分のボールだとどっちにこぼれるかわからないんですけど、聡の場合はマイボールにできるので本当に頼もしいですし、助かっています」と大野が試合後に述べたほど(同クラブ公式ホームページより引用)。早速湘南に活力をもたらした田中は、広島戦終了後の質疑応答でビルドアップにおける自身の課題について語っている。
-アンカー(中盤の底の選手)として、奥野耕平選手はあまり動きすぎないことを意識しているという話を以前していたが、(田中選手が)意識していることは?
「耕平くんは真ん中で器用にプレーできる選手で、僕はボールに執着しちゃうタイプなので、それがいい時もあれば悪い時もあると思います。今は(ボールに)寄ったほうがいい場面とか、今は真ん中にいたほうがいいとか、そういうことを状況に応じて判断してプレーできたらと思います。そうすれば、自分が中継役になって、チームの攻撃の時間も増えると思うので、そこはもっとやっていきたいです」(同クラブ公式ホームページより引用。一部補正)
田中が相手の最前線と中盤の間、もしくは相手FWや中盤の選手の斜め後ろにタイミング良く顔を出し、自軍のビルドアップを手助けできるか。欧州での武者修行で培った、的確なポジショニングを実践したいところだ。
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