2020年初勝利で安堵の一方「集団から抜け出せないことが課題」とホンダNSX開発陣営【第2戦富士決勝】
8月9日に富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第2戦決勝では、ホンダ陣営のKEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)が中盤から独走態勢に持ち込んで優勝。開幕戦で大きな課題となった決勝ペースを見事克服し、GRスープラ勢に一矢報いた形ともなった。
フロントエンジン化された2020年型NSX-GT初勝利の興奮醒めやらぬ決勝直後、開発を指揮するHRD Sakuraの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダー、そして車体開発担当の徃西友宏氏に話を聞いた。
佐伯氏はまず「社内でもいろいろな議論がありましたが、クラス1規則のNSXでの参戦を認めてもらったからには、早く優勝しなければという使命感が個人的もありました」と、秘めていたプロジェクトリーダーとしての心情を吐露した。
「ですので、ひとつクリアしたな、という安堵の気持ちです。HRDのメンバーだけでなく、チームも含めてみんなで力を合わせて速いNSXを作ろうと努力してきた結果が出たと感じています」
「今回はレースペースが課題でしたが、今日の結果を見ても(問題点を)全部潰せているわけではありません。ですので第1戦、第2戦の結果を持ち帰って精査して、あと2回ある富士のレースに向け、このクルマの方向性を見出していきたいと思っています」
優勝したKEIHIN NSX-GT、そしてスピンするまでトップを争ったARTA NSX-GTともに、「高値安定」のラップを刻んでいたが、優勝記者会見では塚越広大が自身の担当した後半スティント序盤について「GT300をオーバーテイクしたあとにペースが落ちることがあった」と語っていた。
これについて車体開発担当の徃西氏は「やはりラインを外したりするとタイヤかすが付いたりはして、グリップが通常どおりに回復するまでに時間が必要で、そこの部分では塚越選手には苦労をかけてしまっているかなと思います」と言う。
「帰ってきたタイヤなどのチェックをして、もう一回検証したいと思います」
レース前半に2台でレースを大きくリードできた状況について徃西氏は「もっと(他社と)接近戦になるかと思っていましたので、我々の想定よりもクルマが速かったということ。そこは良い面が見えました」と、前に他車がいない状態でのラップペースについては高評価を下す。
だが一方で、7番手スタートのRAYBRIG NSX-GTは中段グループに飲み込まれてしまい、苦しい展開を強いられてしまった。
「単独で走っていると速いのですが、ああいうシチュエーションで自ら順位を上げて行けないというところは、ある種想定どおりでした」と徃西氏。佐伯氏も「集団の中に入ったときに抜け出せない。ここが一番大きな課題と感じています」と総括する。
今回はGRスープラ勢も引き続き2〜4位を固めてる強さを見せており、次戦ではさっそくウエイトハンデが燃料リストリクター装着領域に達するチームもある。一方、ケーヒン以外のNSX-GT勢は比較的軽量なまま、2週間後の第3戦鈴鹿に臨むことになる。
「鈴鹿では(7月上旬に)タイヤメーカーテストもしているので、そのあたりをベースに強いセットアップが見つかればと考えています。エンジンも、鈴鹿は富士ほど車速が高いサーキットではないので、ドライバビリティの部分であったりとか、制御のセットアップをさらに詰めて、持ち込みたいと思っています」(佐伯氏)。
FR化後の初戦ではコースレコードを奪う一発の速さを見せつけ、今回はレースペースを改善と、恐るべき開発スピードを発揮するホンダ陣営。開幕戦で見られたGRスープラ1強の構図は崩れつつあるとも言えるだろう。あとは中段に埋れてもなお、そこから上位に進出する力を付けられるかどうか。鈴鹿ではむしろ“予選で沈んだNSX-GT”の決勝レースに、注目すべきかもしれない。
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