ヘディングのみのハットトリックは“珍事”? ブンデス開幕戦で四半世紀ぶりに実現、他国では?
サッカーキング2023年8月24日(木)8時0分
先週末に幕を開けたブンデスリーガの新シーズンでは、開幕節にいきなり偉業が生まれた。
バイエルンに加入したイングランド代表FWハリー・ケインがブンデスリーガのデビュー戦で1得点1アシストと活躍したほか、ボルシアMGの日本代表DF板倉滉がブンデスリーガ1部での初ゴールをマークするなど、それぞれのクラブで役者がきっちりと仕事を果たした。だが、そんな彼らよりも話題を集めた選手がいる。ウニオン・ベルリンのドイツ人FWケヴィン・ベーレンスだ。
20日に行われたマインツ戦に先発出場した32歳のアタッカーは、開始1分にグアドループ代表DFジェローム・ルシヨンのクロスを頭で合わせて先制ゴールを奪うと、8分後にもヘディングシュートで追加点。さらに後半25分にも再び頭でゴールネットを揺らし、見事にハットトリックを達成した。
ベーレンスは30歳だった2シーズン前からようやくブンデスリーガ1部でプレーできるようになった苦労人。彼がハットトリックを決めるのは、12年前の5部リーグ時代以来のこと。もちろん、ヘディング3発によるハットトリックは本人も認めるように初めてのことだった。
それもそのはずだ。というのも、ブンデスリーガで“ヘディング3発”のハットトリックが生まれるのは実に26年ぶりのこと。1997年12月6日にカールスルーエの元U-21ドイツ代表FWマルクス・シュロートがブレーメン戦で決めて以来という歴史的な快挙となったのである。
そんな四半世紀ぶりの“珍事”とも呼ぶことのできるヘディング3発のハットトリックだが、他のリーグではどうなっているのか見てみよう。
■プレミアリーグ
1992-93シーズンに発足されたイングランドのプレミアリーグは今季で32年目。その間に頭3発のハットトリックを達成した選手は2名しかいない。記念すべき最初の達成者はエヴァートンの英雄、元スコットランド代表FWのダンカン・ファーガソンだ。“ビッグ・ダンク”の愛称で親しまれた193㎝のストライカーは、1997年12月のボルトン戦でチームの全3ゴールを頭で叩き出した。
そのシーズン、ファーガソンはヘディングで9ゴールを決めており、プレミアリーグの1シーズンにおける最多記録を打ち立てたのだが、ハリー・ケインの“手”によって、いや“頭”によって26年ぶりに破られることに。トッテナムに所属していた昨シーズン、イングランド代表のゴールハンターは頭で10得点を決めてプレミアリーグの記録を塗り替えたのだ。
そのケインはプレミアリーグで8度もハットトリックを達成しているが、ヘディング3発は1度もない。そんな離れ業を達成したプレミアリーグ史上2人目の選手は、ベネズエラ代表の怪人、サロモン・ロンドンである。2015年からウェスト・ブロムウィッチで活躍したロンドンは、2016年12月のスウォンジー戦でヘディングシュートを3本も決めてみせたのだ。
プレミアリーグの歴史において2人しかいない“ヘディングマスター”だが、実はその2人は“共演”しているのだ。ロンドンは2021年の夏にエヴァートンに加入して翌年の12月まで同クラブに所属。その頃、ダンカン・ファーガソンは同クラブでアシスタントコーチを務めており、2022年には1試合だけ暫定監督も務めたのだ。なお、ファーガソンが指揮を執った試合でロンドンはベンチ入りするも、最後までピッチに立つことはなかった。
■セリエA
イタリアではウルグアイ代表FWエディンソン・カバーニがヘディング3発を決めている。稀代の点取り屋はセリエAで7度もハットトリックを達成しているが、その記念すべき1回目のハットトリックがヘディング3発だった。2010年夏にナポリに加入したカバーニは、加入1年目にセリエAで26ゴールと大爆発。2011年1月にはユヴェントスを相手にヘディングシュートを3本も決めてチームを3-0の勝利に導いた。しかも3点目は、膝下高さのボールに飛び込んで決めた勇敢なダイビングヘッドだった。
36歳になったカバーニは現在アルゼンチンのボカ・ジュニオルスに所属しており、デビュー戦からわずか2戦目にしてボカでの初ゴールを頭で決めた。ちなみに、ボカの永遠のライバルであるリーベル・プレートにはFWサロモン・ロンドンが所属している。
■チャンピオンズリーグ
チャンピオンズリーグの舞台でも頭3発のハットトリックが達成されている。しかも、同大会の歴史に残るドラマチックな試合で生まれているのだ。2001年3月、ベスト8進出をかけてデポルティーボとパリ・サンジェルマン(PSG)が2次グループステージで激突した。試合はアウェイのPSGが元ナイジェリア代表MFジェイジェイ・オコチャのゴールなどで、55分までで3点をリードする展開に。だが、そこから“スーペル・デポル”の猛反撃が始まる。
元ウルグアイ代表FWFWワルテル・パンディアーニがヘディングで1点を返すと、元スペイン代表FWディエゴ・トリスタンも頭で決めて1点差に詰め寄る。そして76分にパンディアーニがヘディングシュートを決めて同点に追いつくと、ウルグアイのストライカーは84分にも頭でネットを揺らして“頭でのハットトリック”を達成するとともに、大逆転劇を演じて見せたのだ。しかもパンディアーニはハーフタイムに投入され、後半だけで偉業を成し遂げたのである。
■ワールドカップ
FIFAワールドカップの歴史においても、2度にわたってヘディング3発のハットトリックが達成されている。1度目は1990年イタリア大会でのチェコスロバキア代表FWトマーシュ・スクラビーだ。同ストライカーは決勝トーナメント1回戦のコスタリカ代表戦でヘディングを3本も決めてチームをベスト8に導いた。ちなみにスクラビーは、イタリアのジェノア時代にアジア人初のセリエA選手となった三浦知良の記念すべきセリエA初ゴールをアシストした選手としても知られている。
2度目の快挙を成し遂げたのはワールドカップで4大会に出場し、歴代最多となる通算16ゴールを決めているドイツの英雄、FWミロスラフ・クローゼだ。クローゼは2002年日韓大会のグループリーグ初戦となったサウジアラビア代表戦でハットトリックをマーク。頭で3ゴールを叩き出して8-0の勝利に貢献した。
■番外編
少し変わったところでは、元ベルギー代表MFマルアン・フェライニもヘディング3発を決めている。エヴァートンやマンチェスター・ユナイテッドで活躍したフェライニは、2019年から中国の山東泰山でプレーしており、2020シーズンの中国スーパーリーグ開幕戦となった大連人職業との試合でプロキャリア初のハットトリックを頭だけで達成した。もしかすると、トレードマークだったアフロヘアを短くしたおかげかもしれない。
ちなみに、その試合で大連人職業の先制ゴールを決めたのは、流浪のヘディングマスター、サロモン・ロンドンだ。当然、彼のゴールもヘディングシュートだった。
(記事/Footmedia)
バイエルンに加入したイングランド代表FWハリー・ケインがブンデスリーガのデビュー戦で1得点1アシストと活躍したほか、ボルシアMGの日本代表DF板倉滉がブンデスリーガ1部での初ゴールをマークするなど、それぞれのクラブで役者がきっちりと仕事を果たした。だが、そんな彼らよりも話題を集めた選手がいる。ウニオン・ベルリンのドイツ人FWケヴィン・ベーレンスだ。
20日に行われたマインツ戦に先発出場した32歳のアタッカーは、開始1分にグアドループ代表DFジェローム・ルシヨンのクロスを頭で合わせて先制ゴールを奪うと、8分後にもヘディングシュートで追加点。さらに後半25分にも再び頭でゴールネットを揺らし、見事にハットトリックを達成した。
ベーレンスは30歳だった2シーズン前からようやくブンデスリーガ1部でプレーできるようになった苦労人。彼がハットトリックを決めるのは、12年前の5部リーグ時代以来のこと。もちろん、ヘディング3発によるハットトリックは本人も認めるように初めてのことだった。
それもそのはずだ。というのも、ブンデスリーガで“ヘディング3発”のハットトリックが生まれるのは実に26年ぶりのこと。1997年12月6日にカールスルーエの元U-21ドイツ代表FWマルクス・シュロートがブレーメン戦で決めて以来という歴史的な快挙となったのである。
そんな四半世紀ぶりの“珍事”とも呼ぶことのできるヘディング3発のハットトリックだが、他のリーグではどうなっているのか見てみよう。
■プレミアリーグ
1992-93シーズンに発足されたイングランドのプレミアリーグは今季で32年目。その間に頭3発のハットトリックを達成した選手は2名しかいない。記念すべき最初の達成者はエヴァートンの英雄、元スコットランド代表FWのダンカン・ファーガソンだ。“ビッグ・ダンク”の愛称で親しまれた193㎝のストライカーは、1997年12月のボルトン戦でチームの全3ゴールを頭で叩き出した。
そのシーズン、ファーガソンはヘディングで9ゴールを決めており、プレミアリーグの1シーズンにおける最多記録を打ち立てたのだが、ハリー・ケインの“手”によって、いや“頭”によって26年ぶりに破られることに。トッテナムに所属していた昨シーズン、イングランド代表のゴールハンターは頭で10得点を決めてプレミアリーグの記録を塗り替えたのだ。
そのケインはプレミアリーグで8度もハットトリックを達成しているが、ヘディング3発は1度もない。そんな離れ業を達成したプレミアリーグ史上2人目の選手は、ベネズエラ代表の怪人、サロモン・ロンドンである。2015年からウェスト・ブロムウィッチで活躍したロンドンは、2016年12月のスウォンジー戦でヘディングシュートを3本も決めてみせたのだ。
プレミアリーグの歴史において2人しかいない“ヘディングマスター”だが、実はその2人は“共演”しているのだ。ロンドンは2021年の夏にエヴァートンに加入して翌年の12月まで同クラブに所属。その頃、ダンカン・ファーガソンは同クラブでアシスタントコーチを務めており、2022年には1試合だけ暫定監督も務めたのだ。なお、ファーガソンが指揮を執った試合でロンドンはベンチ入りするも、最後までピッチに立つことはなかった。
■セリエA
イタリアではウルグアイ代表FWエディンソン・カバーニがヘディング3発を決めている。稀代の点取り屋はセリエAで7度もハットトリックを達成しているが、その記念すべき1回目のハットトリックがヘディング3発だった。2010年夏にナポリに加入したカバーニは、加入1年目にセリエAで26ゴールと大爆発。2011年1月にはユヴェントスを相手にヘディングシュートを3本も決めてチームを3-0の勝利に導いた。しかも3点目は、膝下高さのボールに飛び込んで決めた勇敢なダイビングヘッドだった。
36歳になったカバーニは現在アルゼンチンのボカ・ジュニオルスに所属しており、デビュー戦からわずか2戦目にしてボカでの初ゴールを頭で決めた。ちなみに、ボカの永遠のライバルであるリーベル・プレートにはFWサロモン・ロンドンが所属している。
■チャンピオンズリーグ
チャンピオンズリーグの舞台でも頭3発のハットトリックが達成されている。しかも、同大会の歴史に残るドラマチックな試合で生まれているのだ。2001年3月、ベスト8進出をかけてデポルティーボとパリ・サンジェルマン(PSG)が2次グループステージで激突した。試合はアウェイのPSGが元ナイジェリア代表MFジェイジェイ・オコチャのゴールなどで、55分までで3点をリードする展開に。だが、そこから“スーペル・デポル”の猛反撃が始まる。
元ウルグアイ代表FWFWワルテル・パンディアーニがヘディングで1点を返すと、元スペイン代表FWディエゴ・トリスタンも頭で決めて1点差に詰め寄る。そして76分にパンディアーニがヘディングシュートを決めて同点に追いつくと、ウルグアイのストライカーは84分にも頭でネットを揺らして“頭でのハットトリック”を達成するとともに、大逆転劇を演じて見せたのだ。しかもパンディアーニはハーフタイムに投入され、後半だけで偉業を成し遂げたのである。
■ワールドカップ
FIFAワールドカップの歴史においても、2度にわたってヘディング3発のハットトリックが達成されている。1度目は1990年イタリア大会でのチェコスロバキア代表FWトマーシュ・スクラビーだ。同ストライカーは決勝トーナメント1回戦のコスタリカ代表戦でヘディングを3本も決めてチームをベスト8に導いた。ちなみにスクラビーは、イタリアのジェノア時代にアジア人初のセリエA選手となった三浦知良の記念すべきセリエA初ゴールをアシストした選手としても知られている。
2度目の快挙を成し遂げたのはワールドカップで4大会に出場し、歴代最多となる通算16ゴールを決めているドイツの英雄、FWミロスラフ・クローゼだ。クローゼは2002年日韓大会のグループリーグ初戦となったサウジアラビア代表戦でハットトリックをマーク。頭で3ゴールを叩き出して8-0の勝利に貢献した。
■番外編
少し変わったところでは、元ベルギー代表MFマルアン・フェライニもヘディング3発を決めている。エヴァートンやマンチェスター・ユナイテッドで活躍したフェライニは、2019年から中国の山東泰山でプレーしており、2020シーズンの中国スーパーリーグ開幕戦となった大連人職業との試合でプロキャリア初のハットトリックを頭だけで達成した。もしかすると、トレードマークだったアフロヘアを短くしたおかげかもしれない。
ちなみに、その試合で大連人職業の先制ゴールを決めたのは、流浪のヘディングマスター、サロモン・ロンドンだ。当然、彼のゴールもヘディングシュートだった。
(記事/Footmedia)
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