小林可夢偉組トヨタ7号車、にわか雨に翻弄された開幕戦でポール・トゥ・ウイン/WEC第1戦シルバーストン決勝
WEC世界耐久選手権は9月1日、イギリス・シルバーストンで2019/2020年シーズン第1戦シルバーストン4時間の決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)がポール・トゥ・ウインを飾った。
2019年ル・マン24時間レースの終了から2カ月余り、ウインターシリーズとして行われる2度目のシーズンがシルバーストンで開幕した。決勝日の天候は晴れ。気温17度、路面温度は34度という、この時期のイギリスらしいコンディションのなかで4時間レースがスタートした。
レースはまず、ポールシッターのコンウェイ駆る7号車トヨタと、セバスチャン・ブエミがスタートドライバーを務める8号車トヨタTS050ハイブリッドの2台がリードを奪う。しかし、わずか5分後LMP2クラスの首位争いをしていたユナイテッド・オートスポーツの22号車オレカ07・ギブソンがコース上にストップしたことで、いきなりセーフティカーが出動した。
そこから10分後にリスタート。ここでもトヨタの2台がトップ2を維持し総合3、4番手につけるレベリオン・レーシング勢を徐々に引き離していく。ところがレース開始からちょうど30分後を迎えたところで、チームLNTの6号車ジネッタG60-LT-P1・AERからタイヤが外れ、この回収のためにフルコースイエロー(FCY)が導入される。
■ライバルに2度先行されたトヨタTS050ハイブリッド
この間に多くのマシンが1回目のピットインを行うが、トヨタ勢のピットインはFCY解除のタイミングと重なりタイムをロス。先に入っていた1号車R13と3号車R13のレベリオン勢に先行を許してしまう。
しかし、ペースに勝るのはハイブリッドカーのトヨタTS050ハイブリッドだ。ピット位置の関係で7号車トヨタを先行した8号車トヨタのブエミはFCYの解除から10分後、3号車R13を駆るロイック・デュバルと1号車R13のブルーノ・セナを立て続けにパスして首位に浮上する。7号車トヨタを繰るコンウェイもこれに続いてトヨタが再びワン・ツーとなった。
スタートから1時間30分過ぎ、コース上には雨が降りはじめ、あっという間に路面を濡らしていく。レベリオンを含む多くのチームがレインタイヤへの交換をしていくなか、トヨタの2台はステイアウトを選択する。しかし、雨がすぐに止むと読んだ陣営の予想は外れ、路面はフルウエットに。さらに、首位を走る8号車トヨタはワイパーが裏返しになってしまうアクシデントにも見舞われた。
降雨開始から12分後、ようやくトヨタ勢がピットに入りレインタイヤに交換した頃には、すでにタイヤ交換を済ませていた3号車R13がトップに浮上。ワン・ツーから一転、追う立場となったトヨタの2台は、ウエットコンディション下で7号車を駆る可夢偉が僚友ハートレーを交わして2番手に順位をあげる。
その後、レース折返しを迎える直前に、6号車ジネッタと交錯したAFコルセの71号車フェラーリ488 GTE Evoがクラッシュしたことで再びセーフティカーが導入された。この頃には天候は回復をみせ、路面にも乾いたライン現れたことから各車は続々とスリックタイヤに履き替えていく。
スタートから2時間20分過ぎ、レースは振り出しに戻されるかたちで2度目のリスタートを迎えた。直後、可夢偉の7号車トヨタが3号車R13を交わしてトップに躍り出る。8号車トヨタを駆るハートレーもこれに続く。
三度ワン・ツー態勢を築いたトヨタはその後、2度ポジションを入れ替え、レース開始から3時間前後のタイミングでピットイン。7号車は可夢偉からロペス、2番手の8号車は一貴にアンカーのバトンが託された。
最後の1時間では、トップでマシンを受け継いだロペスがアグレッシブなシーンをみせることもあったものの、僚友におよそ2〜6秒の差をつけて首位をキープしていく。そしてスタートから4時間後、一時は0.2秒まで差が詰まった8号車を抑え、最後まで順位を守ったアルゼンチンの英雄はトップでチェッカーを受け、7号車トヨタに“シーズン8”開幕ウイナーの座をもたらした。ブエミ、ハートレー、一貴とつないだ8号車トヨタはチームメイトと1.9秒差の2位となり、トヨタは開幕戦でワン・ツー・フィニッシュを飾っている。
一時はラップリーダーにもなった3号車R13はワンラップダウンの3位でフィニッシュ。4位には雨中のピットストップで止まりきれず、給油タワーに突っ込むなどのアクシデントもあった1号車R13が入った。チームLNTのジネッタG60-LT-P1・AERは5号車がクラス5位/順位10位、6号車はクラス6位/総合28位でデビュー戦を終えた。
■山下健太の初陣はクラス7位。GTE Amでは石川資章のMRレーシングがポディウムフィニッシュ!
LMP2クラスはレース終盤にトップに立った“ニューカマー”、クール・レーシングの42号車オレカ07・ギブソン(ニコラ・ラピエール/アントニオ・ボルガ/アレクサンドレ・コニー組)がWECデビュー戦で初優勝を飾った。
ファイナルラップでレーシングチーム・ネーデルランドの29号車オレカを交わしたシグナテック・アルピーヌ・エルフの36号車アルピーヌA470がクラス2位。ポールスタートから中盤までレースを支配した29号車は同3位となった。山下健太を起用したハイクラス・レーシングの33号車オレカはクラス7位だった。
LM-GTE ProクラスはポルシェGTチームの新型ポルシェ911 RSR、91号車と92号車がデビュー戦でワン・ツー・フィニッシュを達成。3位には母国イギリスでのレースとなったアストンマーティン・レーシングの97号車アストンマーティン・バンテージAMRが入り、ポールシッターのAFコルセ、51号車フェラーリ488 GTE Evoがクラス4位というリザルトになっている。
最多11台が争われたLM-GTE Amクラスでは石川資章、ケイ・コッツォリーノが乗り込むMRレーシングの70号車フェラーリ488 GTE Evoが土壇場で3位表彰台を獲得した。優勝はAFコルセの83号車フェラーリ488 GTE Evo(フランソワ・ペロード/エマニュエル・コラール/ニクラス・ニールセン組)。今季ラインアップを一新したアストンマーティン・レーシングの98号車バンテージAMRがホームレースで2位フィニッシュを飾った。
WEC“シーズン8”の次戦第2戦は10月4〜6日、富士スピードウェイで行われる富士6時間レースだ。
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