10人でも「楽しもう」と言える強さ…広島DF佐々木翔が魅せた勝利への情熱
サッカーキング2022年9月6日(火)21時54分
清水戦後、勝利を喜ぶ佐々木 [写真]=J.LEAGUE
その名のごとく高く飛び上がり、力強いヘディングで相手のクロスを跳ね返した。10人になりながらも先制して迎えた90分、DF佐々木翔のパワフルなクリアには勝利への情熱が宿っていた。
サンフレッチェ広島は3日、明治安田生命J1リーグ第28節で清水エスパルスをホームに迎えた。この日はエディオンスタジアム広島の一部エリアで約2年半ぶりに声出し応援が解禁。両サポーターの熱い声援の中、リーグ戦4連勝の広島と5試合無敗の清水が激突した。
試合は好調同士らしい一進一退の展開が続いたが、広島は65分にDF塩谷司の一発退場で窮地に立たされる。だが、数的不利になりながら途中出場のMF川村拓夢が83分に少ないチャンスを先制点につなげると、アディショナルタイム5分には圧巻のロングシュートを決めて2得点。10人で2-0という劇的な展開で見事に勝ち切った。
まさに”ぶちあつ”な試合だった。ミヒャエル・スキッベ監督は試合後の会見で、特に数的不利になったあとの戦いを「情熱的」と表現した。そして、「10人になっても2-0で勝てたことはもちろん幸運だったと思っているが、それに値する興奮を呼び寄せる努力や情熱が自分たちにはあった」とチームを称えた。広島の今季のスローガンである”ぶちあつ”(広島弁で「とても熱い」)を体現する試合がまたひとつ増えた。
この試合を通じてGK大迫敬介の好セーブや川村の2ゴールなど熱のこもったシーンは多かった。その中でキャプテンの強い気持ちが垣間見えたのが冒頭に書いたシーンだ。
清水の猛攻が続く90分、相手の左サイドバック山原怜音が右足で広島ゴールへ向かうクロスを入れる。その直前、ペナルティエリア内では佐々木がしっかりとFWチアゴ・サンタナを捕らえ、飛んできたボールを躍動感あふれるヘディングで弾き返した。一瞬のことだったが、強い気持ちを表すようなパワフルなクリアだった。そこにキャプテンの勝利への情熱を見た。
普段から気迫あるディフェンスが持ち味なので、なんの変哲もないプレーだったかもしれない。ただ、このとき佐々木の頭には前回対戦の苦い記憶が浮かんでいたという。4月22日に行われたJ1第10節、清水とのアウェイゲームでは同じように山原のクロスから、チアゴ・サンタナにうまくマークを外されて先制点となるヘディングシュートを許していた。
数的不利ながら1点リードで迎えた試合終了間際、前回対戦の悔しさもよぎった。そんなシーンで佐々木の闘志が燃えないわけがない。「エスパルスとのアウェイ戦で、あのようなシーンから僕は失点しているし、被る部分もあった。試合終盤っていうのもあり、あのエリアは僕が必ず守らないといけないし、熱量を持って試合ができるのは僕の魅力だと思う」
残り25分(+アディショナルタイム8分)で10人での戦い。自陣に引いて守り切るという選択がまず浮かぶような苦しい展開だった。その状況で広島の選手たちはいかに勝利への情熱を燃やせたのだろうか。
「僕が口にしていたのは『楽しもう』ってことですかね」。キャプテンの佐々木は試合後に爽やかな表情でそう言い切った。
「10人になって状況的に厳しいのは間違いない。ただ、その状況でいい意味で楽しみながら、全員で盛り上げながら、いかにこの時間を過ごしていけるかっていうのが、必ず次につながるものだと思った。でも、僕がどうこう言うよりも、みんながわかっていた。みんなが引き分けでいいんだっていうような気持ちではなかった。そういった部分は、今シーズン、アグレッシブなサッカーを続けているので、10人の時でも勝ちを目指せる、チャンスをうかがえる集団になったと思う」
苦しいときでも「楽しむ」という言葉が出てくところに今季の広島の強さが表れている。スキッベ監督のもとで続けてきたアグレッシブなサッカーは着実にチームに浸透し、選手たちが信じて貫けるスタイルとなった。自分たちのサッカーに自信があったからこそ、「楽しむ」こと、10人でも勝利を目指すことができたのだ。
戻ってきたスタジアムの熱気もチームを後押しした。試合直前には台風の気配を感じさせる突発的な大雨に見舞われたが、約2年半ぶりに再開した声援が冷めることはなかった。佐々木は、背中を押してくれたサポーターたちへの感謝を口にした。
「(スコールがきた)複雑な環境の中、多くの方たちが集まってくれた。普通だったら(応援を)止めるのも当たり前の状況だったと思う。でも、待ちに待った声出しのときに、10人になって守備の時間が増えている中でも、最後まであれだけ(スタジアムに)残ってくれた。声出しエリアは力をくれて、そうじゃないエリアも拍手とかでパワーをくれたので、本当に結果を出せて良かった」
劇的勝利でリーグ戦5連勝を飾り、チームは暫定首位に立った。佐々木は今後も“情熱的”な試合を誓う。「こういう試合を続けていたら、皆さんもきっと楽しい時間を過ごせると思う。これからも多くの方に集まってもらいたいので、また魅力あるサッカーを見せたい」。広島には暑さ和らぐ秋の風が吹き始めたが、サンフレッチェの“ぶちあつ”な戦いはまだまだ続きそうだ。
取材・文=湊昂大
サンフレッチェ広島は3日、明治安田生命J1リーグ第28節で清水エスパルスをホームに迎えた。この日はエディオンスタジアム広島の一部エリアで約2年半ぶりに声出し応援が解禁。両サポーターの熱い声援の中、リーグ戦4連勝の広島と5試合無敗の清水が激突した。
試合は好調同士らしい一進一退の展開が続いたが、広島は65分にDF塩谷司の一発退場で窮地に立たされる。だが、数的不利になりながら途中出場のMF川村拓夢が83分に少ないチャンスを先制点につなげると、アディショナルタイム5分には圧巻のロングシュートを決めて2得点。10人で2-0という劇的な展開で見事に勝ち切った。
まさに”ぶちあつ”な試合だった。ミヒャエル・スキッベ監督は試合後の会見で、特に数的不利になったあとの戦いを「情熱的」と表現した。そして、「10人になっても2-0で勝てたことはもちろん幸運だったと思っているが、それに値する興奮を呼び寄せる努力や情熱が自分たちにはあった」とチームを称えた。広島の今季のスローガンである”ぶちあつ”(広島弁で「とても熱い」)を体現する試合がまたひとつ増えた。
この試合を通じてGK大迫敬介の好セーブや川村の2ゴールなど熱のこもったシーンは多かった。その中でキャプテンの強い気持ちが垣間見えたのが冒頭に書いたシーンだ。
清水の猛攻が続く90分、相手の左サイドバック山原怜音が右足で広島ゴールへ向かうクロスを入れる。その直前、ペナルティエリア内では佐々木がしっかりとFWチアゴ・サンタナを捕らえ、飛んできたボールを躍動感あふれるヘディングで弾き返した。一瞬のことだったが、強い気持ちを表すようなパワフルなクリアだった。そこにキャプテンの勝利への情熱を見た。
普段から気迫あるディフェンスが持ち味なので、なんの変哲もないプレーだったかもしれない。ただ、このとき佐々木の頭には前回対戦の苦い記憶が浮かんでいたという。4月22日に行われたJ1第10節、清水とのアウェイゲームでは同じように山原のクロスから、チアゴ・サンタナにうまくマークを外されて先制点となるヘディングシュートを許していた。
数的不利ながら1点リードで迎えた試合終了間際、前回対戦の悔しさもよぎった。そんなシーンで佐々木の闘志が燃えないわけがない。「エスパルスとのアウェイ戦で、あのようなシーンから僕は失点しているし、被る部分もあった。試合終盤っていうのもあり、あのエリアは僕が必ず守らないといけないし、熱量を持って試合ができるのは僕の魅力だと思う」
残り25分(+アディショナルタイム8分)で10人での戦い。自陣に引いて守り切るという選択がまず浮かぶような苦しい展開だった。その状況で広島の選手たちはいかに勝利への情熱を燃やせたのだろうか。
「僕が口にしていたのは『楽しもう』ってことですかね」。キャプテンの佐々木は試合後に爽やかな表情でそう言い切った。
「10人になって状況的に厳しいのは間違いない。ただ、その状況でいい意味で楽しみながら、全員で盛り上げながら、いかにこの時間を過ごしていけるかっていうのが、必ず次につながるものだと思った。でも、僕がどうこう言うよりも、みんながわかっていた。みんなが引き分けでいいんだっていうような気持ちではなかった。そういった部分は、今シーズン、アグレッシブなサッカーを続けているので、10人の時でも勝ちを目指せる、チャンスをうかがえる集団になったと思う」
苦しいときでも「楽しむ」という言葉が出てくところに今季の広島の強さが表れている。スキッベ監督のもとで続けてきたアグレッシブなサッカーは着実にチームに浸透し、選手たちが信じて貫けるスタイルとなった。自分たちのサッカーに自信があったからこそ、「楽しむ」こと、10人でも勝利を目指すことができたのだ。
戻ってきたスタジアムの熱気もチームを後押しした。試合直前には台風の気配を感じさせる突発的な大雨に見舞われたが、約2年半ぶりに再開した声援が冷めることはなかった。佐々木は、背中を押してくれたサポーターたちへの感謝を口にした。
「(スコールがきた)複雑な環境の中、多くの方たちが集まってくれた。普通だったら(応援を)止めるのも当たり前の状況だったと思う。でも、待ちに待った声出しのときに、10人になって守備の時間が増えている中でも、最後まであれだけ(スタジアムに)残ってくれた。声出しエリアは力をくれて、そうじゃないエリアも拍手とかでパワーをくれたので、本当に結果を出せて良かった」
劇的勝利でリーグ戦5連勝を飾り、チームは暫定首位に立った。佐々木は今後も“情熱的”な試合を誓う。「こういう試合を続けていたら、皆さんもきっと楽しい時間を過ごせると思う。これからも多くの方に集まってもらいたいので、また魅力あるサッカーを見せたい」。広島には暑さ和らぐ秋の風が吹き始めたが、サンフレッチェの“ぶちあつ”な戦いはまだまだ続きそうだ。
取材・文=湊昂大
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