【ライターコラムfrom山形】足りないものは「執着心」…J1昇格目指す山形、勝負の残り11試合へ
サッカーキング2017年9月8日(金)11時2分
J1昇格を目指す山形 [写真]=J.LEAGUE
セットプレーからの失点をどう防ぐか。今に始まったことではないが、明治安田生命J2リーグ残り11試合で13位からJ1昇格プレーオフ圏内を狙うモンテディオ山形にとっては特に、それが喫緊の課題であることを痛感したのが第31節ファジアーノ岡山戦だった。主導権を握り、終わってみれば岡山のシュートはなんと1本。しかしその1本が、ショートコーナーのトリックに見事に“引っかかった”形で受け手をフリーにして打たれたシュート。山形の守備陣は誰も触れず、決められてしまった。実は岡山には、前半戦アウェイの対戦でも開始早々のCKで同じようなサインプレーを仕掛けられ、そこから失点している。当然今回もあるぞと警戒していただけに、悔しさは倍加する。
「開幕からセットプレーの失点が多くて、マンツーマンを試したり、ゾーンにしてちょっと失点が減ったりしてと、いろいろ試してやってきている。でも、結局のところはそこじゃないんだよね」
木山隆之監督は今のチームに足りないものを「執着心」という言葉で表す。
「セットプレーの失点は“たまたま”だという人もいるけど、そうじゃない。執着心を持ってボールに頭を出していくとか、そこで弾けなくても次の所に体を張って行くとか、それがないと何をやってもダメ。それはたぶん(守備の)形作りとか相手への対策で解決できる問題ではなくて、執着心――。チームの精神力を上げていかないと」
山形はもともと、粘り強く、泥臭く勝っていくサッカーが身上だ。今年のチームもそこは継承しており、フィールドプレーの1対1やライン際のボールに食らいつくプレーは決して淡白ではない。セットプレーに関しても、誰一人として気を抜いているわけではないのだが、ハイボールやこぼれ球への意識強度はまだまだ指揮官の要求水準に達していない。そしてそれは、守備だけでなく攻撃についても当てはまる。
岡山戦の話に戻ると、この試合は終盤に山形が追いつき、1-1で終わった。現状の勝ち点と順位、そして試合自体は山形のものだったという内容を踏まえても、悔しさが勝るゲームだった。試合後、この日トップ下で存在感を見せた佐藤優平が、挨拶の整列が解けた後のピッチにしゃがみ込み、しばらくうつむいていた。その理由を聞くと「プレスキックが多かったので、自分のところで点にならなかったことが申し訳なかったなと」。プレスキッカーを任されている佐藤は、10本のCKを含めた数多くのセットプレーを得点につなげられず、勝ち切れなかったことを悔やんでいた。80分にあげた栗山直樹の同点ゴールは佐藤のクロスから生まれたものであり、そもそもそれもFKの流れからだった。しかし佐藤はそれよりも、あと1点につながらなかったキックの方に思いを巡らせていた。
ただ、この日の佐藤のキックはどれも決して悪くはなかった。いい所に入っている。惜しい。しかし、点にはならない。佐藤は「(セットプレーは)キッカーが8割。もう一回、自分にプレッシャーをかけてやっていきたい」と責任を口にしたが、監督の要求はむしろペナルティエリアの中だ。セットプレーに、もっと「執着心」を。守備同様、攻撃においても、だ。
「大事なことは、ゴールを取るとかゴールを取られないとか、そういうものに対する執着心。相手よりも先にボールに触る、弾いたあとにもう一つ押し込みに行く、そういう姿勢がもっとあっていい。貪欲さが足りないところは、攻撃も守備と重なる」
ここからは、一戦一戦を決勝戦のつもりで戦おう。そう肝に銘じて臨んだ9月の初戦はドロー。だが、追いついたことで6位東京ヴェルディとの勝ち点差は6のまま。傷口は最小限にとどめたと言えるだろう。残りはあと11試合。言葉だけでなく、本当に目の前の「決勝戦」に執着できるか。ボールに執着し、得点に執着し、ゴールを守ることに執着し、勝ちに執着しきれるか。言うほど簡単ではないのは分かっている。同じことを考えているチームが相手なのだから。それでもなお、11戦の決勝戦を本気で戦い抜く気持ちはあるか。指揮官はその覚悟を求めている。
文=頼野亜唯子
「開幕からセットプレーの失点が多くて、マンツーマンを試したり、ゾーンにしてちょっと失点が減ったりしてと、いろいろ試してやってきている。でも、結局のところはそこじゃないんだよね」
木山隆之監督は今のチームに足りないものを「執着心」という言葉で表す。
「セットプレーの失点は“たまたま”だという人もいるけど、そうじゃない。執着心を持ってボールに頭を出していくとか、そこで弾けなくても次の所に体を張って行くとか、それがないと何をやってもダメ。それはたぶん(守備の)形作りとか相手への対策で解決できる問題ではなくて、執着心――。チームの精神力を上げていかないと」
山形はもともと、粘り強く、泥臭く勝っていくサッカーが身上だ。今年のチームもそこは継承しており、フィールドプレーの1対1やライン際のボールに食らいつくプレーは決して淡白ではない。セットプレーに関しても、誰一人として気を抜いているわけではないのだが、ハイボールやこぼれ球への意識強度はまだまだ指揮官の要求水準に達していない。そしてそれは、守備だけでなく攻撃についても当てはまる。
岡山戦の話に戻ると、この試合は終盤に山形が追いつき、1-1で終わった。現状の勝ち点と順位、そして試合自体は山形のものだったという内容を踏まえても、悔しさが勝るゲームだった。試合後、この日トップ下で存在感を見せた佐藤優平が、挨拶の整列が解けた後のピッチにしゃがみ込み、しばらくうつむいていた。その理由を聞くと「プレスキックが多かったので、自分のところで点にならなかったことが申し訳なかったなと」。プレスキッカーを任されている佐藤は、10本のCKを含めた数多くのセットプレーを得点につなげられず、勝ち切れなかったことを悔やんでいた。80分にあげた栗山直樹の同点ゴールは佐藤のクロスから生まれたものであり、そもそもそれもFKの流れからだった。しかし佐藤はそれよりも、あと1点につながらなかったキックの方に思いを巡らせていた。
ただ、この日の佐藤のキックはどれも決して悪くはなかった。いい所に入っている。惜しい。しかし、点にはならない。佐藤は「(セットプレーは)キッカーが8割。もう一回、自分にプレッシャーをかけてやっていきたい」と責任を口にしたが、監督の要求はむしろペナルティエリアの中だ。セットプレーに、もっと「執着心」を。守備同様、攻撃においても、だ。
「大事なことは、ゴールを取るとかゴールを取られないとか、そういうものに対する執着心。相手よりも先にボールに触る、弾いたあとにもう一つ押し込みに行く、そういう姿勢がもっとあっていい。貪欲さが足りないところは、攻撃も守備と重なる」
ここからは、一戦一戦を決勝戦のつもりで戦おう。そう肝に銘じて臨んだ9月の初戦はドロー。だが、追いついたことで6位東京ヴェルディとの勝ち点差は6のまま。傷口は最小限にとどめたと言えるだろう。残りはあと11試合。言葉だけでなく、本当に目の前の「決勝戦」に執着できるか。ボールに執着し、得点に執着し、ゴールを守ることに執着し、勝ちに執着しきれるか。言うほど簡単ではないのは分かっている。同じことを考えているチームが相手なのだから。それでもなお、11戦の決勝戦を本気で戦い抜く気持ちはあるか。指揮官はその覚悟を求めている。
文=頼野亜唯子
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