ホンダ陣営内の優勝争いとレクサス同士のタイトル争い。思惑が交錯する予選後の各チームの声《GT500予選あと読み》
戦前の予想どおり、ホンダNSXが速さを見せることになったスーパーGT第7戦SUGOのGT500クラス予選。中高速コーナーが多く、高低差も大きいレイアウトのSUGOはミッドシップのNSXと相性が良く、レースでもドライならばこのまま優位な状況と見られる。ポールポジションのKEIHIN NSX-GTと2番手のRAYBRIG NSX-GTとのホンダ陣営内での一騎打ちの構図のようになってくるが、3番手以降も明日の決勝は見どころが多い。
NSX同士の優勝争いに次いで注目されるのが、チャンピオン争いだ。現在のポイントランキングトップ、WAKO’S 4CR LC500は65kgという最大ウエイトハンデ(WH)を搭載しながら予選Q1を突破し、8番手からレースを迎える。予選Q2を担当した大嶋和也がアタックを振り返る。
「予選Q1を通ることができたのは十分、良かったですけど、僕的にはあまり良くない予選でしたね。これまで履いたことのないタイヤでのアタックで乗ってみたら思いのほかオーバーステアが強い状態で、アタックの1周目で失敗してもう1周行きましたけど、いまいちまとめきれませんでした」と、悔しい表情を見せる大嶋。
ウエイトハンデを考えれば、順位としては十分以上の結果と言えるが、同じくチャンピオンシップを争うランキング2位のKeePer TOM’S LC500(WH55kg)が予選4番手を獲得しているだけに大嶋の悔しさも理解できる。一方、そのKeePerの平川亮は今回の予選結果に手応えを感じている。
「サーキット的にホンダが速いので、あのタイム差(ポールのKEIHIN NSX-GTと約1秒差)は仕方がないですね。前の36号車(au TOM’S LC500)はウエイトが軽いですし、今回はエンジン交換で(レース中に10秒ストップの)ペナルティを受けるので実質3番手になることを考えれば良い結果だと思います」と平川。
同じレクサス陣営で、そして同じブリヂストンユーザーでもあるWAKO’SとKeePer。実質、レクサス同士の一騎打ちの気配となってきたGT500のチャンピオン争いも、いよいよ佳境を迎えつつある。レースの鉄則でもある、追われる者の難しさは大嶋も感じ初めている。
「チャンピオンシップのことを考えることが多いので、それがプレッシャーと言えばそうなのかもしれませんね。レースでも絶対にミスはできないので、チャンピオンシップのことは当然考えます。追いかけている方が楽ですよね。一か八かのギャンブルが出来る方と、絶対に失敗できない方とは、どうしても立場が違う。まあ、それでも向こうもこちらの立場は嫌でしょうし、やっぱり10点のポイント差は大きいですし、有利だと思っています」と大嶋。
その10ポイント差の重みは、平川も十分に感じている。
「ポイント10点差は意外と大きい。それでも差は縮まってきていますし、今日の予選結果を見ても追いついている感触はあります。レースでのバトルでもそうですけど、タイトル争いは追いかける方が全然楽。最終戦に向けて、明日の決勝も差を縮められれば」と平川。
平川とニック・キャシディ、そしてKeePerのトムスはここ数年、チャンピオン争いを経験しているが、WAKO’Sのチーム・ルマンは久々のタイトル争いとなり、しかもランキングはトップ。両チームとも、心理面での戦いも、ここから最終戦まで続くことになる。
「明日はドライでも雨でもどちらでも戦えると思っていますけど、37号車の後ろに着いていければチャンピオンシップとしては十分だと思っています。僕らは無理に37号車の前に行く必要はないですけど、最低限、37号車の後ろに行かなきゃいけない。もちろん、チャンスがあったら飛び込んで行きますけどね。予選順位もポイント圏内ですし、レースで淡々と順位を上げて終えられれば。余計なドラマは必要ありません(苦笑)」と決勝に向けて話す大嶋。
一方、「明日はドライでも雨でもどちらでもいいですけど、対ホンダで考えると、ウエットの方がもしかしたら、といろいろな可能性が考えられますね」とは平川。
果たして今回のSUGOのレースで2台はどのようなレースを展開し、そして最終戦のもてぎを迎えることになるのか。
もちろん、明日の決勝に向けてはWAKO’S、KeePer意外にも上位進出が期待されるチームは多い。予選で不発に終わった理由とともに、紹介したい。
■まさかの予選Q1ノックアウトとなってしまったARTA、MOTUL GT-R、スーパーGT第7戦SUGO予選後の声
予選5番手獲得ながら、悔しい表情を見せたのがWedsSport ADVAN LC500の坂東正敬監督。
「もうちょっと上に行けるかと思ったんですけどね。Q2で国本雄資がちょっと飛び出したのもあるんですけど、トップのタイムは見えませんでした。ただ、ヨコハマタイヤとSUGOはすごく相性がいいのですし、午前中もロングランで悪くなかった。明日は雨が降るならしっかり降ってくれた方がいいですね。オートポリスの時のような(降ったり止んだりの)雨はちょっと厳しいのかなと思います。ただ、どんな天候でもミスなく、まずは表彰台を獲得できるようにと思って作戦を練っています。レクサス勢が5勝していてウチはまだ勝っていないので、レクサス陣営内のミーティングの時などにプレッシャーをものすごく感じますが(苦笑)、自分たちができるレースをきちんとしていきたいと思います」(坂東監督)
ホンダ陣営で今回、KeePer、RAYBRIGとともに優勝候補に挙げられていたARTA NSXの伊沢拓也はまさかの予選Q1ノックダウン。
「アタック自体は特に大きなミスもありませんでしたが、朝からあまりクルマの調子は良くなくて、予選の時もグリップがない感触でした。予選で選んだタイヤが失敗だったのかなと思います」(伊沢)
ニッサンGT-R陣営としては、Q1突破はCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの1台のみという悔しい結果に。ランキング5位のMOTUL AUTECH GT-Rは予選10番手と苦しい立場になってしまった。Q1を担当した松田次生が予選を振り返る。
「38号車(ZENT CERUMO LC500)にウォームアップから引っかかってしまいました。ペースを上げてパッシングしたりしましたがどいてくれなくて、そこでアタック前にタイヤを結構使ってしまいました。アタックの時はセクター1はほぼ全体ベストに近いタイムで走れていたので、そのままアタックできれば予選Q2の1分9秒台というタイムは見えないですけど、悪くても2列目以内、3番手〜4番手には行けたと思っています。ペナルティは出ていないですけど、こんなにフラストレーションが溜まる予選もないです。明日はあまり雨が降りすぎるとハイドロが厳しくなるので、雨量が少ないといいですね。チャンピオンシップは厳しくなっているので、レースでは前に行くだけです」(次生)
予選6番手ながら、Q1では2番手タイムをマークして周囲を驚かせたModulo Epson NSX-GTの牧野任祐。
「セクター1でまだリヤタイヤが温まりきっていない感触があったので、Q1はもうちょっとタイムを上げられたかなと思いますけど、結果として2番手は良かったと思います。もちろん、予選Q2を担当したい気持ちはありますけど、今のチームの状況からまずはQ1をしっかりクリアすることが大事ですし、僕は自分の役割を最大限に果たすだけですので、そこはチームの指示に従います。今日はGT500の専有走行の時にクルマがいい感触になって、そこからセットアップを詰めて、そこから路面温度も上がって良くなりました。明日は雨の予想ですが、雨の時は何が正解なのかが分かりづらいので難しいですけど、自分にできることをしっかりしたいと思います」(牧野)
予選3番手を獲得ながら、今回、年間3基目のニューエンジン投入で決勝レースではペナルティを受けるau TOM’S LC500の伊藤大輔監督。
「今回、エンジンを乗せ換えました。予定では第5戦富士の500マイルでリタイアしていなければ前回のオートポリスで、と考えていましたが、富士でリタイアしたことでエンジンのマイレージが残っていたので、きちんと距離を使い切るという意味でもオートポリスはそのままのエンジンで走りました。明日はレース中に10秒ストップのペナルティを受けることになりますが、予選グリッドが前の方だとペナルティからコースに戻ったときのポジションもリカバリーしやすくなるので、今日は良い予選結果だったと思います。ただ、予選Q2で関口(雄飛)がセクター1でブレーキを余らせたかなと話していたので、2番手に行けたかもしれない。それでも全体的なポジションで見ればいい予選だったと思います」(伊藤大輔監督)
優勝争いにチャンピオンシップの戦い、そして予選で悔しい思いをした下位グリッドからの追い上げと、さまざまな要素が入り乱れるスーパーGT第7戦SUGOの決勝レース。雨の確率が高いなか、各チーム、各ドライバー、各メーカーの思惑があらゆる局面で交錯する展開になる。
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