【角田裕毅F1第17戦分析】戦略の上の落とし穴とローソンの牽制「あのまま行っていたらクラッシュしていた」
角田裕毅(アルファタウリ)にとって2度目の母国GPとなった2023年F1第17戦日本GP。木曜の時点から「予選はQ3、レースはポイント」が目標だと口にしていた角田は予選を9番手で終え、決勝でのポイント獲得も期待される状況で決勝日を迎えた。
しかし、決勝は不運と、「メリハリのないストラテジー」により、11位のリアム・ローソンに続く12位という結果に終わってしまう。チェッカー直後、日本の報道陣の前に姿を現した角田は肩を落とし、「(鈴鹿を訪れたファンの)みなさんの前で結果を残せなかったことが本当に残念です」と口を開いた。
最初のきっかけはスタート後、角田の眼前で展開された接触だった。5番手スタートのセルジオ・ペレス(レッドブル)は蹴り出しからコース右側に舵を切った。一方6番手スタートのカルロス・サインツ(フェラーリ)は左側にステアリングを切り、2台はタイヤとタイヤが接触しようかという状況に。そこからペレスは逆に左に舵を切るが、今度は7番手スタートのルイス・ハミルトン(メルセデス)と並ぶ。さらにルクレール、サインツ、ペレス、ハミルトンの4台が横一列に並ぶ中、ペレスのフロントウイングとハミルトンのマシンが接触する。
その2台の後ろにいた角田はこの接触のあおりをくらい、ターン1進入でフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、そしてローソンにインを刺され11番手に後退する。ただ、ローソンに対してS字までほぼ互角のサイド・バイ・サイドとなり、一旦は逆バンク立ち上がりで角田が先行。しかし、デグナーカーブひとつめでローソンがイン側となり、またも先行される。
3台の接戦が続く中、角田はオープニングラップのスプーンカーブ進入でアウト側となる中、ローソンがラインを広めにとったことで角田のスペースはなくなり、ここでコース外に追いやられるかたちに。その時は驚いたという角田は「彼はレース(の結果)というよりも、僕に負けなければいいみたいな感じなので」と口を開いた。
「ただ、あのまま行っていたらクラッシュしていたので、そこで引いたのは良かったと思います」
第1スティントのソフトタイヤ(ユーズド)についてはデグラデーション(性能劣化)も「悪くはない程度(角田)」であり、セーフティカー(SC)明けからもローソンの後ろながらもポイント圏内をキープしていた角田。ローソンより先にタイヤを変えたことで第2スティントでアンダーカットに成功し、ローソンの前でコースに復帰する。ただ第2スティントで角田はピットタイミングを先延ばしにし、再びピットに入ったのはローソンから5周後の31周目。一度アンダーカットしたローソンにアンダーカットされてしまう。
これで再びローソンの後塵を拝することとなった角田。さらにアルファタウリの2台はアルピーヌ2台にも先行され、揃ってポイント圏外に順位を下げてしまう。5周引っ張った第2スティントについて角田は「かなり引っ張りすぎたと思います。なんのメリハリのない、よくわからないストラテジーでした」と口にする。確かに、戦略を分けるにしても後ろのローソンではなく、先行する角田をステイさせる意図は不明確だ。
第3スティントのアウトラップ時点で6秒以上離れていたローソンと角田だったが、角田はハードタイヤでは毎ラップごとにローソンを大きく上回るペースで走行。しかし、2台がポジションを入れ替えるには至らず、またチームもペースの速い角田を抑える格好となったローソンに対し、「ポジションを譲れ」といった指示も出していない。決勝結果はローソンが11位、角田が12位、アルファタウリは揃ってポイント獲得できずに終わった。
「ここまで(ミディアムの)デグラデーションが大きくなるとは思っていなかったので、それが1番ですね」と角田。デグラデーションの厳しく、ペースの上がらないミディアムでの周回が長かったことは、「我々にとって一番の問題は、ミドルスティントで履いたミディアムコンパウンドでのペースだった。デグラデーションが高く、それによって我々のレースは大きなダメージを受けた」と、チーフエンジニアのジョナサン・エドルズがプレスリリースにて記しているとおり、実際に走るまでミディアムのペース、デグラデーション状況が予測できなかったが故の、戦略の上の落とし穴にはまった結果だろう。
「レース内容は楽しめませんでしたけど、とにかく鈴鹿は楽しめました。やはり特別でしたね。今回の予選、決勝では特に(ファンから)エネルギーを頂きました。あの歓声は2度と忘れることはないでしょうね」と角田は鈴鹿を訪れたファンからの声援に対する思いを口にした。その瞬間だけは、口調が柔らかくなったのは気のせいではないはずだ。
「予選はQ3、レースはポイント」が目標だと口にしていた角田の2度目の母国グランプリ。予選目標は叶い、決勝目標は叶わなかった。ただ、角田は3度目の日本GPを戦うことが決まっており、その2024年F1第4戦日本GPまでは7カ月もない。
今週末に届いた声援に応えるべく、角田がすでに7カ月後の、史上初の春開催のF1日本GPでリベンジに燃えていることは安易に予想できる。再び鈴鹿に帰ってきた際には「レース内容も楽しめる」ように、より強く進化した2024年のアルファタウリ、より速くなった新車とともにあることを願ってやまない。そのためにも、今季残る6レースでの走り、そして走りとともに蓄積されるチームの開発や戦略面での進化に注視していきたい。
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