86/BRZ第8戦:谷口信輝が2年ぶりに優勝。ヨコハマ勢の速さ爆発でトップ4独占
GAZOO Racing 86/BRZレースの第8戦がスポーツランドSUGOを舞台に、9月30日〜10月1日に開催され、プロフェッショナルシリーズでは谷口信輝(KTMS 86)がひさびさの優勝を飾り、ニュータイヤを導入したヨコハマ勢はトップ4を独占。クラブマンシリーズでは橋本洋平(カーウォッチBS86 REVO)が今季初優勝を挙げている。
シリーズ第8戦が行われたSUGOのパドックにおける最大の話題は、「ヨコハマのニュータイヤがすごい」ことだった。久しくブリヂストン勢の天下が続き、今シーズンの途中からダンロップ、グッドイヤーもニュースペックのタイヤを投入。その結果、ダンロップ勢は前回の富士で服部尚貴(OTG DL 86)が、そして平中克幸(GY RACING 86)がその前の十勝2連戦を制覇し、ブリヂストン勢でポイントリーダーでもある佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86BS)にも迫る勢いを見せてきた。
その一方で、頑なにヨコハマで戦い続けてきた谷口信輝(KTMS 86)や織戸学(サミー☆K-one☆MAX86)は、入賞さえ許されずに煮え湯を飲まされていた。ところが、ヨコハマのニュータイヤ「ADVAN A08B」の装着が許されると、このふたりが大復活! 金曜日に行われた専有走行では谷口がトップで、これに織戸が続いたばかりか、ヨコハマにスイッチしたランキング2位の近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC86R)も3番手に。確かにパドックがざわめくはずだ。予選になると、ヨコハマ勢の勢いにさらに拍車がかかる。
セッションの前半はブリヂストン勢の阪口良平(大阪トヨタ86レーシングBS)が、1分39秒688でトップにつけるが、ヨコハマ勢は後半からのアタックに。すると谷口、近藤、青木孝行(ケーエムエス フェニックス86)の順で阪口を超え、5番手にもひさびさの登場となる、山下健太(CTP86マルカツレーシング)が続くことに。特に谷口のタイムは群を抜いており、1分38秒983はレコードタイムをも更新。ただ、織戸だけは「ミスった。気負いすぎ」と9番手に甘んじる。
「今回はヨコハマの新しいタイヤのデビュー戦なので、いい結果を出さないといけないじゃないですか? ポールが獲れたばかりか、昨日まで僕ら夢物語で『俺だけ8秒台に入れたい』って言っていたんですよ。そしたら本当に入って自分でもびっくり(笑)。良平のタイムは抜きたいと頑張って、ストレートに戻ってきたときに電光掲示板を見たら『82』ってパーンと来て。でも、俺の後ろに翼がいるから、1コーナー曲がりながら『抜かないで、抜かないで』って思って、もう1周回ってきて確認したら、『俺、一番だ〜』って、ようやく喜びが。ヨコハマさんが新しいのを出してくれて、本当に嬉しいし、これを結果がで恩返ししたいと思います」と谷口。
一方、4番手の阪口は「僕のなかでは、クラスポールって呼んでいます」と苦笑いするのみ。
クラブマンシリーズの予選では、神谷裕幸(N中部ミッドレス スノコ86)が今季4回目のポールポジションを獲得。「SUGOはまったく初めてで、走り始めたのも金曜日の朝から。予選も練習のつもりで走って、変に力が入っていなかったのが良かったのかも。次の鈴鹿では絶対に勝ちたいので、ここでは気負い過ぎずに行きたいと思います」と神谷。2番手には手塚祐弥(栃木スバルBS BRZ P.MU)がつけ、3番手は松井宏太(ネッツ青森アップルRC86YH)で、4番手は橋本洋平(カーウォッチBS86 REVO)。
なお、ランキング2位の小野田貴俊(ネッツ東埼玉ワコーズED86)は、マシン不調で9番手に留まり、同3位の菱井將文(CUSCO BS 86)は全日本ジムカーナ選手権と同日開催のため、欠場となっている。
さて注目のプロフェッショナルシリーズ決勝レースだが、ヨコハマのニュータイヤに一発の速さは確認されたが、果たしてコンスタントラップに関してはどうなのか。谷口は好スタートを切って1コーナーにトップのまま飛び込み、2番手には近藤をかわした青木が浮上。このふたりのバトルがさっそく繰り広げられる間に、谷口はオープニングラップだけで1秒2の差をつける。
ところが、これが広がっていくのかと思いきや、青木と近藤は争いながら谷口に近づく一方で、4番手につけていた阪口を早くも振り切っていく。3周目からは3台でのトップ争いは、完全なテール・トゥ・ノーズ状態に。
そこから先の周回は、まさにプロフェッショナルシリーズならではの緊張感がみなぎっていた。3人いずれもミスを犯さず、だから順位には変動はなし。「ゲートは開かなかったね。こじ開けたかったけど、失敗すると後ろから翼が来るし、3人で逃げてから……というのは予定どおりだったけど」と語るのは青木。
一方、なんとか4番手は保ちたい阪口ながら、山下に5周目のレインボーコーナーでかわされ、最後は「ヨコハマの追い上げ担当」を自称する織戸にも迫られたが、辛くも逃げ切り成功。もし、ここで織戸の逆転を許していたら、ヨコハマ勢はトップ5までを占めていたことになるから、阪口にしてみれば面目躍如といったところか。
逃げ切った谷口は、なんと2年ぶりの優勝。表彰台に立つのすら、昨年の第2戦岡山以来となるから、その喜びたるや想像に余りある。
「長いこと我慢を強いられていたので、本当に嬉しいです! このタイヤをヨコハマさんが作ってくれて、僕が一番を獲るのはマストな課題。ここで翼や青木に持っていかれるわけにはいかないと。彼らはタイトルを競っているから、あっちからすると僕の方が空気読んでいないかもしれないけど(笑)」と谷口。
「同じタイヤだから、青木と翼の具合を見て、とりあえずちぎることはできないなと思ったので、慌てずに13周抑え切ろうと。タイヤもマネージメントしながら、無理して『トンビに油揚げ』は困るので、入口をしっかり落として、青木のペースも落として」
「(コーナーへの)進入はとにかくスローインで、出口を速くすれば抜かれない。きっちり仕事をこなそうと、徹底していました」
クラブマンシリーズでは、オープニングラップのS字でアクシデントがあり、セーフティカーがいきなり入ったばかりか、上位陣には違反スタートに対するペナルティも。それがなんとフロントローに並んだ神谷と手塚に出された。
「自覚はあります(苦笑)。前のレースでシグナルのタイミングを見ていて、『今日はちょっと長いな』って思っていたのに、待ちきれませんでした。『鈴鹿で決めろ』と業務命令だったので。次は気持ちよく終わらせます」と神谷。
そんな波乱の展開のなか、期せずしてトップに立つことになったのは橋本だった。しかし、前を走っていたふたりの後退前後も、激しい庄司優磨(OTG AREA 86)のチャージを受けており、決して楽にトップに立てたわけではない。最終コーナーの速い庄司は、続くホームストレートでスリップストリームを使って橋本に迫り、1コーナーで何度も仕掛けていたからだ。しかし、そのつど橋本は冷静にガードを固めていた。
逆に庄司は、最終ラップの1コーナーで松井に抜かれ、再逆転を狙ったヘアピンで接触。その脇をすり抜けたのが長島大輝(埼玉自動車大学校生駒ED86)だった。松井が3位、庄司が4位でゴールするも、危険行為のペナルティとして庄司には60秒加算され、29位にまで降着。
「棚ぼたですけど、勝てて良かった。今シーズン、いろいろありましたけど、これでリセットです(笑)。庄司君とのバトルを制したのが、最大の勝因ですね。必死にブロックライン通って、なんとか逃げ切りました」と橋本。
一方、スーパーFJから転向の長島は、これが86/BRZレースで初の表彰台に。「今までうまく行かなかったけど、やっと表彰台に立てました」と橋本にも負けない喜びようだった。
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