WEC富士:トヨタ、TS050最後の母国戦でワン・ツー。ハートレー「このチームでの初勝利を飾れて最高の気分」
10月6日、WEC世界耐久選手権第2戦富士が富士スピードウェイで行われ、母国レースに臨んだTOYOTA GAZOO Racingはグリッド最上位からスタートした8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組)がポールポジションを飾った。僚友7号車トヨタTS050ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)も2位に入り、トヨタは2019/2020年シーズン開幕2連勝をワン・ツー・フィニッシュで達成している。
2012年の現行シリーズ発足とともにカレンダー入りを果たし、2019年大会で8度目の開催となった富士6時間レース。トヨタにとっては母国凱旋イベントの意味を持つ重要なラウンドだが、今季のWEC富士はこれに加え“ハイパーカー規定”導入前にTS050ハイブリッドで戦う最後の母国レースにもなった。
そんな2019年のWEC富士ではトヨタが参戦するLMP1クラスに初めて“サクセス・ハンディキャップ”が導入され、前戦シルバーストンで優勝した7号車にはLMP1ランキング最下位のマシン比で1周あたり最大1.4秒相当のハンデがのしかかることに。また、2位に入った8号車も1周約1秒のハンデを背負っての戦いを強いられた。
路面を濡らすほどではない細かな雨粒が落ちるなかでスタートを迎えたレースでは、このハンディキャップがトヨタを悩ませる。特に2番手からスタートした7号車は、オープニングラップでLMP1プライベーターの1号車レベリオンR13・ギブソンに先行を許し、これを逆転するも直線区間で再び前に出られてしまうシーンが幾度もみられた。
しかし、7号車をドライブする可夢偉は12周目、ヘアピンからダンロップコーナにかけての区間でトラフィックに引っかかった前走車をハイブリッドパワーを用いてオーバーテイクすると、その後は徐々にライバルを引き離していく。
8号車と7号車がワン・ツー体制を築くなかで迎えたレース折返し、スタートから断続的に降り続いていた雨の量が増え、路面は完全なウエットコンディションに変化する。このタイミングでトヨタは2台をピットに呼び戻し、タイヤをスリックからハイブリッド・インターミディエイト(溝のない雨用タイヤ)に交換。8号車はハートレーから一貴に、7号車はコンウェイからロペスにドライバーをスイッチしてコースに復帰させる。
雨が止んだ終盤は、8号車がピットレーンでの速度違反によるドライブスルーペナルティを受けたことで7号車とのギャップを約50秒から30秒に減らしたものの、その後は両車とも安定したペースで周回を続ける。最後は8号車に乗り込んだブエミが6時間レースのトップチェッカーを受け、可夢偉駆る7号車がチームメイトから33秒差の2位でフィニッシュした。
この結果、ブエミはWEC最多勝記録となる通算16勝目をマーク。一貴にとっては4度目の母国戦勝利、そしてハートレーはTOYOTA GAZOO Racingのドライバーとして初めて表彰台の頂点に立つこととなった。
また、チームは開幕から2戦連続でワン・ツー・フィニッシュを飾ったが、同時に次戦上海4時間レースではさらに重いハンデを背負うことにもなった。しかし、8号車と7号車が同ポイントで並んだため、第3戦ではまったく同じ量のハンデが課される予定だ。
■厳しいハンデに苦しめれた可夢偉、「僅差が予想される上海での戦いが待ち遠しい」
「母国レースである富士でワン・ツー勝利を飾ることができ、チーム全員がとても喜んでいます。チームにとって、富士は非常に大切なレースなのでワン・ツーでの勝利は大きな目標でした」と語るのはTOYOTA GAZOO Racing WECチームを率いる村田久武代表。
「これを成し遂げたチーム、富士スピードウェイに駆けつけてくれた多くの熱心なファンの皆さまのサポートに感謝します。TS050ハイブリッドにとっての最後の富士レースを楽しんで頂けたと思います」
「次の上海はさらに厳しいサクセス・ハンディキャップが課せられることになりますが、新たな挑戦を楽しみにしています」
母国凱旋レースで4度目の勝利を掴んだ一貴は「母国ファンの皆さまが見守るなか、ここ富士でまた勝てて最高です」とコメント。
「TS050ハイブリッドにとって最後の日本でのレースでワン・ツー・フィニッシュを果たせたというのは大きいです。TS050ハイブリッドとは多くの感動的な経験を積み重ねてきました。古くからの友人に、母国で最後の勝利をプレゼントできたような気持ちです」
「路面コンディションが二転三転する難しいレースでしたが、終始ペースを保ち、インターミディエイトタイヤでも速さを示せました。首位でレースをコントロールし、周回遅れの処理も上手くいき、本当に満足のいくレースでした
チームメイトのブエミは「決して楽ではなかったが、難コンディション下でコントロールしながらクリーンにレースを戦えた」とレースを振り返り、ハートレーは「TOYOTA GAZOO Racingでの初めての勝利を飾ることができ、本当に最高の気分だ。特にそれがチームの母国であれば尚更だよ」と語っている。
「我々の8号車はとてもクリーンにレースを戦い、一貴はインターミディエイトタイヤで素晴らしい走りを見せてくれた。今回は僕たちが7号車に対してサクセス・ハンディキャップでの優位性を持っていたのでこのような結果となったが、上海では同じハンディキャップとなるので、また僅差のレースになると思う」
2位表彰台を獲得した7号車の可夢偉は、この結果が最良の結果であるとし、「チームとして達成したかったワン・ツー・フィニッシュに満足しています」と語った。
「レース中はプッシュし続け、諦めずに走り切りできる限りのことをした結果は納得のいくレースだったので、チームとしてうれしく思います。レースが終わった今は、次戦上海での、僅差が予想される戦いが待ち遠しいです」
可夢偉と同様に、コンウェイも「レース中は終始8号車を追いかける形となり、できることはそれだけだったが、チームとしてワン・ツー・フィニッシュが目標だったので、達成できて満足だ」とコメント。
ふたりと7号車をシェアするロペスは「課せられたサクセス・ハンディキャップからすると、レースのペースはとても速かった。ミスなく、また、車両性能を最大限に生かし、やるべきことをやり遂げた」と語り、「TS050ハイブリッドでの日本で最後のレースが目標どおりの結果となり、うれしく、また格別な思いだ」と続けた。
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